第8話 潜入!海王学園
今回は高校の潜入捜査です。まだ出てきていないNo.02は出てくるのでしょうか?
神奈川県 横浜市 私立 海王学園高校
偏差値70以上で有名大学への合格者を多数輩出する県内屈指の超名門校である。
p.m. 12:30
キーンコーンカーンコーン
チャイムが昼休みを告げる。教室や廊下、購買などが授業から解放された生徒で賑わっている。
人気の少ない階段踊り場で話す叉羅と弥生。
「どうですか?」
「何がだ?」
「見つかりました?」
「お前はどうなんだ?」
「進展なしです。」
「そのうち向こうから仕掛けてくるだろ?」
「もう3日ですよ。その間も失踪する生徒が増えてるのに。なにもわからずなんて。」
「先に潜入してる奴がなんか掴んでるだろ?そっちが動くまで待ってた方がいい。」
「そんなもんですかねぇ?」
「まあ、情報収集は引き続き頼むぞ。天堂先生。」
含みのある感じで叉羅が言って、去っていく。
「やな感じです。」
膨れっ面で弥生は叉羅の後ろ姿を見ていた。
(潜入して3日間、手掛かりは掴めず。どうすれば。)
1人になった弥生は考えている。
ーーーー4日前ーーーー
「時雨!用事って何だ?」
「まあ、そう焦らないでください。あと1人いませんので、全員集まってからです。」
「あいつか。」
あからさまに炎真が嫌そうな顔をする。
「あいつって誰ですか?」
「No.02だ。東京本部はそれで全員揃う。」
「彼は今、別件で潜入捜査に行ってもらってます。合流して連れてきてもらっていいですか?」
いつもの笑顔で時雨が言う。
「絶対俺は行かねぇぞ!」
駄々をこねる炎真。
「どうしたんですか?」
「仲悪いんだよ。炎真とそいつは。犬猿の仲ってやつだ。」
「仕方ないですねぇ。叉羅。弥生さんと行ってきてくれますか?」
「はい!ちなみに潜入捜査ってなんのですか?」
弥生が時雨に尋ねる。
「神奈川県にある海王学園はご存知ですか?」
「!あの超名門お金持ち学校のですか?」
「そうです。先週からそこで生徒が数名失踪しているらしいので、残りの1人に潜入捜査に行ってもらってます。彼と合流して事件を解決してきて欲しいのです。」
「鬼の仕業じゃないのか?」
「今のところ手掛かりはないと報告を受けてます。炎真と叉羅が戦った動物型の鬼の件もありますし、人は多いほうが安心でしょう。炎真はこんな感じなので。」
時雨が困った顔で炎真を見る。
「けっ!」
炎真はそっぽを向く。
「あっ!でも、潜入捜査は昼間ですよね?叉羅はこの姿のままじゃ潜入できないんじゃ。」
確かに、赤ん坊のまま高校には潜入できないだろう。
「それはご安心を!叉羅。これを飲んでください。」
時雨は叉羅に栄養ドリンクのような瓶を渡す。
叉羅は何も言わずに瓶の液体を飲み干す。
すると、みるみる叉羅の身体が成長していく。
「なっ!?大きくなった!あれ?でも、いつもより少し幼いような?」
今の叉羅の身体つきは大人の時よりもやや線が細い感じで顔も若干幼く見えた。
「これはうちの技術部が開発した我々専用の成長ドリンク。名付けて、『スクスクミンα』です!このドリンクを飲めば身体を17歳の身体に成長させます!」
時雨がドヤ顔で言う。
「凄い!これも異能で開発したんですか?」
弥生が目を輝かせて聞く。
「そんなとこです。あっ!ちなみに効果はきっかり12時間ですので、お忘れなく。」
「叉羅は何の躊躇もなしに飲みましたけど、初めてではないのですか?」
「たまにな。いくつか種類がある。この薬は成長するのは身体だけで、夜みたいに力は使えないぞ。」
「なるほど。」
「では、明日の朝から行ってもらいます。手続きはこちらでしておきますのでお願いします。」
「はい!」
返事をする弥生と頷く叉羅。
翌日。
「潜入って、私は先生なんですね?せっかく若返る薬飲めると思ったのに。」
落ち込みながら弥生が言う。
「正確には教育実習生だ。その年で先生として成り立つわけないだろ?それに、生徒が短期間でこんなに早いペースで転校してくることもないからな。」
「確かに。それにしても、叉羅はブレザー似合いますね。」
10代の叉羅はやはり美少年だ。同じクラスにこんな子がいたら、さぞモテるだろう。
「茶化すんじゃない。定期的に報告はしろ。怪しい行動とるなよ?」
「わかってますよ。では、行きましょう!龍宮君!」
「はあ。」
叉羅はこいつ大丈夫か?の顔で大きくため息をついた。
そして、現在。
昼食を食べ終え、校内を見回る弥生。
「天堂先生!ここがわかんないんですけど!」
先程授業で教えた所を聞きに来る生徒。
「ああ。ここはね。」
それに応える弥生。弥生はドジっ娘だが勉強はできる。
実は某有名大学を首席で卒業するほどだったのである。
(今までで1番勉強したことが役に立ってるかも。五芒星に入ってから頭使うことって少なかったからなー。)
「ありがとうございます!」
「いえいえ。」
立ち去る生徒の背中を見ていると、遠くで女生徒たちの黄色い声援が聞こえる。
「キャー!龍宮くーん!」
「カッコイイー!!」
窓の外を見るとグランドでサッカーをしている叉羅の姿が、昼休みで他の生徒に誘われたのであろう。
(叉羅。運動もできるんですね。)
ぶっちゃけ言うと、叉羅はこの3日で校内でもファンクラブができるほどモテていた。
(さすが・・・)
感心して弥生も見ていると。
「いたっ!話してください!」
「いいから!ついてこい!」
男子生徒の声がする。
ふと見ると、数人のガタイのいい不良っぽい男子生徒に細身の男子生徒が引きずられている。
「ち、ちょっと待ちなさい!」
慌てて弥生が引き止める。
「何してるの?嫌がってるじゃない。」
弥生が注意すると、男子生徒は弥生を睨みつける。
「チッ。行くぞ。」
リーダー格の生徒が言うと不良達はゾロゾロと行ってしまう。
「あっ!コラ。」
弥生が声をかけるも、どんどん行ってしまう生徒たち。
「君。大丈夫?」
「あっ。大丈夫です。すいません。」
そう言った細身の生徒は走って行ってしまう。
「あっ。」
弥生が引き止めようとするが、走り去る生徒。
その時ふと視線を感じる。目をやると、青色の髪で真ん中分けの男子生徒が影から見ていた。長身でモデルのような美少年である。
弥生の視線に気づいた生徒はすぐに向こうへ歩いて行ってしまった。
(?)
弥生が不思議そうな顔をしていると昼休みの終了を告げる予鈴が鳴る。
「午後の授業の準備しなくちゃ。」
そう言いながら職員室に戻る弥生だった。
授業中
叉羅のクラスの教壇に立って授業をする弥生。
「ここがこうなって。」
授業は滞りなく進んでいるようだ。
「じゃあ、次の問題を。」
そう言って教壇から降りようとすると、ガッ
ズダン!
派手に転ぶ弥生。
相変わらずのドジっぷりである。
教室が笑いに包まれる。
「先生ドジだなー。」「勉強はできるのにねー。」
生徒が次々に言う。
「でも、そういう方が親しみが持てていいわー。」
「ドジっ娘萌え(笑)」
弥生も顔は美人なのだが、若さとドジっ娘という事で、そこそこ生徒から人気がある。
「ふっ。」
目の前にいた叉羅が鼻で笑う。
ムッとした弥生が思いつく。教壇に戻り黒板にそこそこ難しい問題を書き始める弥生。
「では、この問題を龍宮君。」
驚きもせず静かに席を立ち黒板の問題と向き合う叉羅。
カカッ
叉羅が黒板に答えを書く。
「できました。」
「せ、正解です。」
(勉強もできるのか!ムカツクー!)
悔しがる弥生にドヤ顔をして教壇を降りる叉羅。
女生徒から歓喜の声がとぶ。
「龍宮君やっぱかっこいいね!」「運動も勉強もできるとかヤバっ!」「でも、3組のミズキ君もいけてるよねー!」「わかるー!」「最近の転校生レベル高いよね!」
(私たち以外にも転校生が?)
気になりつつも授業を続ける弥生だった。
放課後
「天堂先生。実習はどうですか?」
「教頭先生。いい生徒さんばかりでとても助かってます。」
「いやー。優秀な実習生でこちらも助かりますよ。生徒からの評判も良いようですし、本採用はうちでお願いしますね。」
「ふふふ。ところで、最近行方不明の生徒さんが出てるとか。」
急に教頭の顔が曇る。
「ええ。先週からもう5人。我が校としましても早急に解決したいのですが。」
「生徒に共通点はないのですか?」
「ありません。学年や男女問わず、部活が終わって夜帰る際に消息を絶っている以外は。」
(夜。やっぱり鬼が関係してると考えてよさそう。)
「天堂先生も気をつけてください。若い女性も危険ですから。」
「ありがとうございます。用心します。」
そう言って職員室から出て行く弥生。
校内は下校時間になり、生徒もまばらになってきていた。廊下の先を見ると、昼休みに見かけた青髪の少年が立っていた。
(あれ?あの子は。)
スッ
少年が廊下の先を指差す。
(?)
弥生が不思議そうに見ていると、少年はすぐに歩いて行ってしまった。
弥生が追いかけて少年がいた辺りまで走る。
(向こうに何かあるのかしら?)
少年が指差した方には体育館があった。
体育館裏
ドサッ
「うぅっ。」
男子生徒がうめき声をあげる。
「もう金は出せない?どうゆうつもりだ。え?サトシ。」
「もう無理です。本当にお金はありません。」
ドガッ
不良の生徒がサトシと呼ばれた少年を蹴る。
「ゴホッ。ゴホッ。」
咳き込む少年。
「てめぇ。昼間の実習生にチクったりしてねえだろうな?」
「してません。」
「明日までに用意して来なかったらわかってんだろうな?」
「はい・・」
「コラーー!!何してるの!!」
遠くから弥生が叫んで走ってくる。
「またあいつか。約束忘れんなよ?」
そう吐き捨て、不良グループは去って行った。
「君!大丈夫?怪我してるじゃない。」
慌てて弥生が治癒を施す。
「大丈夫です。!?。先生。これってギフトですか?」
「じっとしてて。すぐ治すから。」
「いえ。もう大丈夫です。ありがとうございました。」
少年は立ち上がって行こうとする。
「君。いじめられてるの?」
不安そうに尋ねる弥生。
「本当に何でもないです。」
そう言って少年は立ち去って行った。
(大丈夫でしょうか?私が何とかできれば。)
「今のガキ共はタチ悪いな。」
「ひゃわぁぁぁ!」
突然出てきた叉羅に驚く弥生。
「急に出て来ないでください!」
「お前、あんまり首を突っ込むんじゃないぞ。」
「何でわかるんですか?」
「顔に書いてあるんだよ。」
「叉羅は冷たいです。」
「俺たちの目的は失踪した生徒を見つける事だ。いじめをなくすのは学校側のすること。それに、いじめられる奴にも原因はある。あいつが自分から変わらないと意味はない。」
「・・・」
「そんなことより、何かわかったか?」
「いえ。でも、不思議な少年は見かけました。」
「どんな奴だ?」
「たまに校内で見かけるのですが、よく目が合うんです。さっきのいじめの現場も彼に教えられました。」
「少し調べて見るか。」
「はい。」
弥生は先に校内に戻って行く。
叉羅は視線を感じ振り向く。
そこには弥生の話した青髪の少年が立っていた。
叉羅と目が合うと少年は口元に笑みを浮かべ去って行った。
「・・・・」
叉羅は去って行く少年の後ろ姿を見つめていた。
夕日の沈む校内は下校の時刻を伝える音楽と共にチャイムが鳴り響く。
No.02の正体はちょっと引っ張ります。会話が主な話になってしまいましたが、細かい描写はあまり書かずに進めてみました。
わかりにくいでしょうか?