第6話 招集任務
今回は五芒星の組織形態に触れていき、徐々に仲間を増やしていく運びになります。戦闘シーンもないので、少し短い話になります。
ーーー警視庁 特殊犯罪対策室ーーー
「お二人ともご苦労様でした。」
微笑みながら時雨が2人に労いの言葉をかける。
「はい!」
弥生が答える。
「怪我をしてた女性も回復傾向にあるそうです。弥生さん、お手柄です。」
「ありがとうございます!」
「今までうちには怪我を治せる人がいませんでしたので、被害者の方を救う手立てがありませんでした。訓練次第では重傷患者の治療も望めそうですね!」
「いえいえ。私も必死だったので。」
照れながら謙遜する弥生。
「叉羅もよくやってくれましたね。」
「いつも通りやっただけです。」
「叉羅はいつも任務の後は寝てしまうのですか?」
「異能力を使った後は眠くなるんだよ。」
「寝顔可愛かったですよ?(笑)」
ニヤニヤしながら言う弥生をイラッとして睨む叉羅。
「そういえば、時雨さんも叉羅のように大人になったりするんですか?」
「ええ。私の場合は現場にはあまり出ないのでなかなかお見せする機会はないですが、ちなみに歳はお二人と同じですよ。」
(時雨さんもタメなんだ。たぶん時雨さんもイケメンになりそう。)
大人時雨を妄想する弥生。
「この五芒星にいるのは全員第1世代の遺伝子交配実験の被験体です。全員が幻獣細胞と異能力を持ってますよ。」
「どのくらいの人数がいるんですか?」
「構成員はあなた達2人を除いてあと10人いて、各地に散らばっています。あとは、東西南北の各支部の管理責任が4人。この責任者4人と私を含めた5人を指して五芒星と呼ぶようになりました。」
「そうだったんですか。意外と少ないんですね。」
「構成員だけでも、一般警察官の小隊編成以上の戦力がありますからね。被験体の人数もそう多くないんですよ。」
「なるほど。」
「ちなみにこの人と各地に散らばる責任者達の戦闘力は俺たちの比じゃないぞ。」
「えっ!?」
「まあ、一応責任者ですからね。」
(昨日の叉羅以上の戦闘力って・・・、本気になったら国が滅ぶのでは?)
「あっ。そうだ。叉羅。話したいことがあるので、東京本部に在籍する構成員の2人を呼んできてもらえますか?」
ピクッ。
叉羅が固まる。
「あいつらをですか?」
「はい!」
ニコニコしながら時雨が言う。
(叉羅。凄く嫌そうな顔してる。残りの2人ってどんな人なんだろう?)
はあー。
叉羅が大きくため息をつく。
「どっちからですか?」
「そうですねぇ。順番にNo.01から行きましょう。彼も今別任務で出かけてるので、合流して一緒に任務を片付けて来てくれます?」
「あいつですか・・・」
露骨に嫌そうな顔をする叉羅。
「時雨さん。No.01ってなんですか?」
「構成員には、全員番号があるんですよ。番号は入った順です。ちなみに叉羅はNo.00で弥生さんはNo.11ですよ。」
「知らなかったです。」
「まあ、普段は使わないですからあんまり気にしなくていいですよ。」
「ところで、叉羅。そのNo.01の人はどんな人なんですか?」
「暑苦しい。」
「ははは。そうかもしれませんね。」
時雨が笑っている。
「?」
首を傾げる弥生。
「では、2人とも。よろしくお願いします。」
「はい!」
「・・・」
返事をする弥生とメンドくさそうな叉羅。
「場所は追って通達します。以上。」
微笑む時雨を残し、部屋を後にする2人だった。
ーーー埼玉県 廃病院ーーー
p.m 6:00
夕日が沈む頃、叉羅と弥生は街外れの巨大な廃病院の前にいた。
「なんか不気味なとこですね。」
「数年前までは県内最大規模の病院だったらしいが、建物の老朽化に伴い、市街地に新設した病院へ移ったらしい。」
「あちこち崩れたりしてますけど・・・」
「取り壊す予定だったらしいが、建物の崩壊屋根に正体不明の化け物の目撃談、工事に携わった者で行方不明者が多発したらしい。」
「それって、幽霊の仕業では・・・」
青ざめた表情で怖がる弥生。
「アホ。たぶん鬼の仕業だ。崩れてる部分も鬼が暴れた後だろう。」
「現地で落ち合う捜査官の方はどこでしょうか?」
「あいつの性格上、もう中にいるだろうな。」
「やっぱりはいるんですかー?」
テンションガタ落ちの弥生。
「行くぞ。」
なんの躊躇も無しに建物内に入って行く叉羅。
「ちょっと!置いてかないでください!」
叉羅にくっついて建物内に入って行く弥生。
薄暗い院内の廊下を歩く二人。
「急に何処かへ行ったりしないでくださいね。」
「いや、これじゃあ無理だろ。」
叉羅を前方できつく抱きかかえてキョロキョロしながら歩く弥生。
「お前、怖いのか?」
「逆に叉羅がなぜ怖くないのかわかりません。」
「俺は幽霊や妖怪は信じないからな。」
不気味な建物内の廊下を奥へと進む2人。
「今の所何の気配もないな。少し休むか。」
通路脇に置いてあるベンチに2人で座る。
「そういえば、叉羅が使っていた刀ってどこから出てくるんですか?」
「ここ。」
叉羅は左手の甲を出す。そこには小さな五芒星のタトゥーが刻まれている。
「手から出るんですか?」
「この五芒星マークは異空間にある個人の持ち物入れと繋がってる。そこから引き出す感じだ。昔あったろ?何とかポケットってやつ。」
(ドラ◯もん。)
弥生は某青ダヌキのロボアニメを思い出していた。
「現代科学がそこまで進歩してたなんて。」
「いや、これは科学というよりは異能の分野に入るらしい。異能も使い方次第ってことだ。」
「そうだったんですかぁ。」
「ちなみに、武器を召喚できるのは大人の時だけで、普段はI.D.の代わりになるくらいだ。お前もそのうち時雨から渡されると思う。」
「私も武器もらえますかね?」
ワクワクしながら弥生が言う。
「お前まず戦闘要員じゃないだろう。」
ショボンと落ち込む弥生。
カツン カツン
「!?」
シッと弥生を静かにさせる叉羅。
(足音?鬼か?それにしては・・・)
「・・・叉羅?この足音って。」
弥生が青ざめて近寄って来る。
「俺が行く。動くなよ。」
小声で叉羅が指示を出す。
カツン カツン
どんどん足音は近づいて来る。
廊下の曲がり角の向こうあたりから聞こえて来るようだ。
叉羅も曲がり角に近づき構える。すると角から影が見えた。
(あれ?影が小さい?)
弥生がそう思った瞬間、影がさらに向かって飛びかかって来る。
ガッ
叉羅は影と掴み合う形で応戦する。
「おい。俺だ。」
叉羅が影に向かって言う。
「あん?」
影が叉羅を見つめる。
「おー!なんだ!叉羅じゃねーか!」
小さな影は叉羅の知り合いのようだ。
「こんなとこで何してんだよ?まあいいや!会いたかったぜー!」
笑いながら叉羅の肩をバシバシ叩く。よく見てみると叉羅と同じくらいの子供のようだ。
「俺は会いたくない。」
面倒くさそうに答える叉羅。
弥生は会話する2人に近づき確認する。
叉羅と同じくらいの背格好に髪は黒髪で後ろで1つ縛り。目は叉羅よりもキツめな印象でかなり強気な物言いである。
見たところ男の子だというのが口調や仕草でハッキリわかった。
「あの〜。叉羅?こちらの子はどちら様でしょうか?」
「!?」ビクッ!
突然話しかけてきた弥生に驚き、後ろに跳ぶ男の子。
「な、な、なんだてめーはー!!!」
(えーーーーー!?)
突然怒鳴られ、弥生は心の中で驚き叫んでいた。
五芒星の組織形態とまだ登場していない個性的な仲間達を徐々に増やしていきたいです。
今回出てきた男の子に関しては次回詳しく書いていきます。