第9話 No.02の男
今回で学園潜入編は完結です。では、どうぞ!
ーーー翌日 p.m.12:30ーーー
昼休み
昨日と同じ階段の踊り場にて
「昨日の少年の事少し調べました。私達より少し前に転校してきた子で二階堂ミズキという2年生の男の子でした。生徒失踪事件が起きているのも彼が転校してきた直後からみたいです。」
「ふーん。昨日のいじめられてた奴は?」
「橘サトシくん。3年生。いじめてた子は新井フミヤくん。こちらも3年生みたいです。気になるんですか?」
「少しな。」
ニヤニヤしながら見る弥生。
「なんだよ。」
「いいえー。別に〜。」
叉羅はムッとしている。
「この転校生の子はちょっと怪しい気が。」
「ちょっとは考えて行動しろよ?」
「どういう意味ですか?」
「まあいい。用心しとけよ。」
そう言って教室に戻って行く叉羅だった。
弥生も職員室に戻る事にする。
途中でミズキという生徒を見かけた。女生徒に数人に声をかけられていた。
通りすがりの女生徒に尋ねる。
「ねえ、あの子ってどんな子なの?」
「ミズキくんの事ですか?カッコいいですよね!背も高くてモデルさんみたいで!先週転校してきてすぐにあった学力試験でいきなり学年トップになったみたいで、運動もできるし、優しくて丁寧な感じだからあっという間に人気者ですよ!」
「そうなんだ。」
(評判はいいみたいね。)
「ねえねえ!先生もミズキくんみたいな子がタイプなの?」
「えっ!?わ、私は。」
「ミズキ君もかっこいいけど、私は叉羅君派かな!あんまり喋んないけど、ミステリアスな感じが超タイプ!」
「あはは。そうなんだー。」
ここでも叉羅人気を改めて実感する弥生だった。
(うーん。怪しいなー。)
ミズキに疑念を持ちつつ、弥生は職員室に戻った。
ーー同日放課後ーー
p.m.18:30
部活動も終わり生徒達が帰宅している姿を弥生と叉羅は眺めていた。
「結局手掛かりは未だに掴めずです。」
落ち込みながら弥生が言う。
「消息を絶った生徒は全員この時間らしい。少し様子を見るぞ。」
「はい。」
同時刻 体育館裏
不良グループに囲まれる少年。
「サトシ。金は持ってきたろうな?」
「もうやめてください。フミヤくん。」
「ああ?」
「昔はこんな事するような人じゃなかったじゃないか!」
「うるせぇ!口答えするな!」
バキッ
フミヤと呼ばれた少年がサトシを殴る。
「ぐっ。」
小さく呻き、顔を押さえるサトシ。
「もう昔の関係とは違うんだよ!お前は黙って金さえ持って来ればいいんだ!」
「そんな。」
フミヤはサトシになおも暴行を加える。取り巻き達も一緒にサトシを蹴る。
(僕に力があれば。)
殴られながらサトシは思っていた。
もう一度フミヤが拳を振り上げる。
ガッ
「!」
叉羅が何かの気配を感じ取る。
「どうしたんですか?」
「来たな。付いて来い。」
「え!?ちょっと!どこ行くんですかー?」
走り去る叉羅を慌てて追いかける弥生。
付いたのは体育館。照明も落とされていて薄暗く誰もいない。
「こんなとこに何の用ですか?」
息を切らしながら弥生が尋ねる。
「誰かいる。」
叉羅が奥を見つめている。
弥生も目を凝らして見ると、男子生徒が倒れている。
「あれは?橘君?」
弥生が慌てて駆け寄り、声をかける。
「橘君!大丈夫!?」
「うっ。せ・・・先生。」
「よかった。気がついたのね。一体どうしたの?」
「フミヤ君が・・」
「おい。上見てみろ。」
叉羅が言う。弥生も確認すると、そこには巨大な蜘蛛の巣と大きな繭が5つ、糸で胴体を固定され、動けなくなった不良グループの生徒達がいた。
「なに?これ?」
「失踪した生徒は5人。こいつらは今さっき連れて来られたようだな。」
冷静に分析する叉羅。
「正解です。」
奥から足音と声がした。
声の主は青い髪の少年だった。
「あなたは。ミズキ君ですね?」
「知っていましたか。さあ、その少年から離れてください。」
「橘君をどうするつもりですか?」
「あなたに関係ありません。」
そう言って近づいて来るミズキ。
「来ないで!それ以上近付くなら、こちらも武力を行使します!」
「何を言ってるんですか?」
ミズキが尋ねる。
「あなたが今回の失踪事件の犯人ですね?さあ、正体を現しなさい!」
全員の時間が止まる。
「は?」
呆然とするミズキ。
「え?」
状況が飲み込めない弥生。
「はあ。」
溜息をつく叉羅。
「私何か間違えてます?」
弥生が質問する。
その時、弥生の首元に噛み付こうとする影が。
「!」
ガッ
弥生が反応するより早く叉羅が影を蹴り飛ばした。
影の正体はサトシだった。
「ちょっ。叉羅!なんで橘君を蹴るんですか!?」
「まだわかんねえのか?」
「え?」
「こいつが今回の失踪事件の犯人だ。」
のそのそと起き上がるサトシ。
「あーあ。せっかくギフト持ちの人間を食えると思ったのに。」
こちらを見たサトシの顔は完全に正気を失っておぞましい笑みを浮かべている。
「!?」
「お前。鬼だな?」
「そうさ。この上にいる生徒達も僕が攫ったんだ。」
「どうして人間の姿をしている。鬼になった人間は元の姿に戻れないはずだ。」
「僕は力を手に入れたんだ!僕の思い通りにならない人間はみんな殺してやるのさ!」
完全に気が狂ったように叫ぶサトシ。
ふと弥生が気づく。
「えっ!?じゃあ、こっちのミズキ君は?」
「アホ。ミズキはこっち側の人間だ。」
「!」
ビックリしてミズキを見る。
「六芒星 構成員No.02 二階堂水騎です。よろしくお願いします。天堂弥生さん。」
「は、はい。よろしくおねがいします。」
恥ずかしさのあまり、顔が引きつる弥生。
「叉羅。ちゃんと話してなかったんですか?」
「ああ。忘れてた。」
あっけらかんとした感じで叉羅が答える。
(確信犯だ。)
心の中で弥生が思っていると、
メキッ
骨の軋む音と共にサトシの体が大きく変形していく。
ゴキッ、ゴキッ
「さ、叉羅?」
弥生が恐怖の表情で叉羅に訴えるように呟く。
サトシの体は巨大な蜘蛛の姿の鬼に変化する。
「く、蜘蛛ーー!!」
弥生が悲鳴をあげる。彼女は虫が苦手らしい。
「この前は動物で、今回は昆虫かよ。」
「初めて見る型ですね。」
「水騎。行けるか?」
「無論です。」
2人の体が大人の姿に変化する。
水騎は身長180センチほど、細身でモデル体型の美男子だ。クールな顔立ちである。
「武具換装『白龍』。」
「捕まっている生徒達は任せます!」
「任せろ。」
叉羅は飛び上がり蜘蛛の巣を斬ろうとする。
グニッ
伸縮性のある蜘蛛の巣は切れずに叉羅の刀を弾く。
「チッ。それなら。『白龍』解放!」
叉羅の刀が光り、切っ先に光があつまる。
「龍牙疾風斬!!」
刀の先から光の刃が飛ぶ。
ドオン!
衝撃と共に蜘蛛の巣が切れ、生徒達が床に落ちる。
結構な高さから落下するが、糸の膜が衝撃を吸収して、怪我はないようだ。
弥生が慌てて駆け寄り確かめると、まだ不良達は息がある。叉羅も繭を刀で切り開き、中の生徒を確認する。
「まだ息はあるな。かなり衰弱してはいるが。」
すると、不良のリーダー格の生徒が気がつく。
「うっ。」
「まだ動いちゃダメです。」
「あんたは。あいつは、サトシは?」
「・・・・」
弥生が目を伏せる。
「そんな。あいつを助けてくれ!」
その時叉羅がフミヤの首元を手刀で殴る。
気を失うフミヤ。
「叉羅!どうして?」
「俺たちの存在は一般人に知られてはならない。それに、知り合いが鬼になったなんて、知りたくもないだろう?」
「・・・」
俯く弥生。
「叉羅!手が空いたならこっちもお願いしますよ!」
水騎が蜘蛛型の鬼と交戦中だ。
「今行く。」
叉羅が鬼に向かって跳ぶ。
鬼の攻撃を弾く叉羅。
「脚が8本あるので厄介ですね。」
「水騎。フォロー頼めるか?」
「わかりました。」
すると、水騎の手から水泡が出てきて大きくなる。
「水?」
「私の異能は『水』。有する幻獣細胞は『青龍』です。」
水騎の持つ水泡が5メートルほどの大きさになったところで、水騎が鬼に向かって水泡を投げる。
「水泡陣!」
大きな水の塊が鬼を覆い尽くし、動きが鈍る。
「叉羅!お願いします!」
「任せろ!」
素早い斬撃で叉羅が鬼の脚を4本跳ね飛ばす。
「ギャアアアァァァ!!」
痛みで苦しむ鬼。
「水騎!最後は決めろ。」
「武具換装『青龍』!」
水騎の手から出てきたのは鎖鎌だった。
「『青龍』解放!」
すると、鎖の部分が水になり、それを鬼に向かって投げる水騎。
「解!」
水騎が叫ぶと鬼を覆っていた水の塊が消え、鎖状の水が鬼に巻き付いていく。
その鎖を思い切り引っ張る水騎。
「水流圧砕斬!!」
水の鎖が鬼の体に食い込んだ瞬間。鬼は輪切り状に切断された。
「高水圧の水はダイヤモンドも切断することができます。この鎖に捕まったら最後、バラバラになるまで締め付けられます。」
ドオン。
切り刻まれた鬼がその場に崩れる。
消滅する鬼を背にし、2人が弥生に向かって歩いてくる。
「水騎。時雨から召集かかったぞ。」
「私がですか?」
「いや、全員だ。」
「炎真もいるんですか?」
嫌そうな顔をする水騎。
「そう言うな。大事な話らしい。」
「はあ。仕方ない戻りましょう。」
溜息をつきながら水騎が言うと、2人は子供の姿に戻る。
「被害にあった生徒達はどうするんですか?」
弥生が尋ねる。
「時雨が手配して、後処理班が来る。」
「そうですか。2人は怪我はしてないですか?」
「大丈夫だ。けど、眠い。」
「私もです。」
「えっ!?」
すると、その場に倒れて寝てしまう2人。
「これ、毎回ですか?」
弥生の問いかけも虚しく、スヤスヤ眠る2人。
(次からは台車かベビーカー持ってこようかな。)
そう心に誓う弥生であった。
今回から水騎が仲間に加わりました。名前の表記がカタカナと漢字の場合があるのですが、一般の人もしくはどちらかわからない場合はカタカナ。仲間になった人は漢字と区別しています。わかりにくくてすいません。




