ガツンと行こう。
「よしよし、今回はうまく入る事が出来たな」
「そうですね!」
「前回街に入れなかったの忘れてないからな」
「(´・ω・`)」
まずは冒険者ギルドを探さないとな。
「人に聞くのもいいが、自分の足で探すのも面白そうだな……でもお前が血だらけで汚いんだよなぁ。道行く人たちがお前をギョっとした目で見ていくから、ぶっちゃけ一緒に居たくないんだけど……同行者と思われたくないし……」
「そ、そんな事言われましてもぉ~」
「お前魔法とか使えるんじゃなかったの?魔法でパパっと綺麗にすればいいじゃん」
「…………」
「おい」
「はいぃッ……」
「テメェまたか?」
「ご、ごめんさない……」
「……素直でよろしい。出来るならさっさとやってくれ」
「……え?お、怒らないんですか?」
「いちいち怒っていたらキリがないからな。でも、これからは出来る限り気を付けてくれ」
「ありがとうございます!」
「さっさとしろよ」
「す、すみません」
もっと早くに気付いて欲しかった。
これからは俺も早めに声をかけるようにしようかな。
……気が向いたらでいいか。
トカゲを見ていると、全体がキラキラッとしたかと思うと、あちこちに付いていた魔物の血が完全に消えていた。
元の綺麗な鎧に戻ったな。
「終わったか?じゃあ行くぞ」
「はい!」
俺たちは街中を歩く。
「美味しそうな食べ物とかいろいろありますね」
「屋台か……確かに美味そうだが、残念ながら俺たちには金が無いからな。食べるのは仕事をして稼いでからだ」
「人間の街は面倒ですね……欲しいものは奪ってしまえばいいのに」
こいつ偶に魔物っぽい思考を口に出すのやめてほしいんだけど……
まぁドラゴンだから仕方ないか。
「ドラゴンって野蛮なんだな。知性があるのに頭使わないのか?あぁ、ただの馬鹿か」
「沢山お仕事していっぱい稼ぎましょうね!!」
「まぁ俺たちなら食べるのには困らないくらいは稼げるだろう……多分」
今はそんなに深く考えなくても大丈夫だろう。
別に何かを急いでいる訳じゃないしな。
「……ご主人様、あれじゃないですか?冒険者ギルドって」
「あのデカい建物か?」
「はい。看板にそう書いてありますので」
コイツ字が読めるのかい。
なら俺がまだ字が読めない間はコイツに任せるか。
「じゃあ入るか」
「美味しいものが食べたいです!」
「気が早いっての」
俺たちはギルドに入る。
「ふーん、随分わかりやすい形してるんだな」
「あそこに行けばいいのでしょうか?」
「っぽいな。いってみよう」
俺たちは受付っぽい場所に行く。
「あのー、冒険者になりたんですけど」
「はい、登録ですね?字の読み書きなどは出来ますか?」
「お前出来るんだろ?」
「一応できますよ?」
「じゃあ頼むわ」
「わかりました」
俺はルナと受付の人とのやり取りを一歩下がって聞いておく。
「あの新人、一緒にいる女に代わりにやらせてるぜww」
「女の方は随分豪華な装備してるな、多分どっかの坊ちゃんが遊びで来たんだろww」
「冒険者は遊びじゃねぇって事を教えてやろうぜ」
「だな。その後はあの女で遊ぶか?」
「そりゃあいい!ハハハハハ!!」
ギルドの壁の方で話していた男たちの声が聞こえた。
というよりも、聞こえるように言ったのか。
「……ご主人様」
「わかってるよ。ちょうどいいから、アイツらで派手にやってくる」
「いいんですか?」
「最初はガツンとやっていいって、ここに来るときに先輩から教わったんだよ。まぁ心配すんな」
さて、まずは何から始めようか。
(そいっと)
俺は男たちが立っている床に氷を張る。
「うお!?」
「くっそ!何だよ!!」
「痛ってぇなクソッ!!」
三人の男が見事に滑った。
「フフッ」
俺は男たちに見えるようにワザとらしく笑う。
「テメェ!!笑いやがったなッ!!」
「こっちに来やがれ!!ぶっ殺してやる!!」
発言が怖い。
荒れてる奴が多いとは聞いてたけど、ここまで躊躇なく人に殺してやるって言えるのは日ごろからそういう発言をしている奴だけだ。
まぁ、お呼ばれしたわけだし行ってあげるか。
「おい、何か寒くねぇか?」
「あ?気のせいだろ?」
「いやでも……」
ギルドの中からそんな声が聞こえる。
まぁ、今能力使ってますし、室内だから冷気がね。
「ご指名ありがとうございます。本日は私の様な若造に、先輩方が貴重なお時間を割いて、冒険者とは何たるかをご教授していただけるとか……私はとても嬉しく思います。どうぞ、よろしくお願いいたします」
俺は大げさな仕草をしながら男たちにそう言って握手の手を出す。
男たちは、最初は呆気に取られていたが、それぞれ青を見合わせてニヤニヤしだす。
「ああよろしくなぁ?なぁにそう時間はぐッ……あ、あああああああ!!!!!!!!」
「なんだッ!?どうしたんだよ!!」
「お、おい!手!!手がッ!!」
最初に声をかけてきた男が俺の握手に答えて、俺の手をつかんだ瞬間、男の手は完全に凍り付いた。
「クソガキ何しやがった!!!早く戻せっ!!!」
「痛てぇ……手が痛てぇよ、動かねぇ……うぅ」
「そんなに痛いのか?なら取ってやるよ。ほれ」
俺は痛みと手が動かなくなったショックでしゃがみ込んでいた男の凍った手を蹴とばす。
すると、凍った手はパキッと軽い音を立てて手首から外れた。
「アアアアアア!!!!!俺の手がぁぁぁぁあああ!!!!!!」
「お?こんなところにゴミが」
グシャッ、ジャリジャリ……
俺は床に落ちていた男の手を、男の目の前で踏んで粉々にした。
「やめろぉぉおおお!!!!やめてくれぇ!!!!!俺の手を戻してくれぇええええ!!!!」
「おっと悪い!あんたの手だったのか!!ゴミだと思って踏んづけちまったよ。そんなに大事な物なら、次からは床なんかに置かないようにな?じゃないと……踏まれちまうぜ?」
「化け物がァアアアア!!!!」
手が取れた男とは別の男が武器を抜いて斬りかかってきた。
「おせぇよ」
俺は振り下ろされてきた両手剣の側面に少しだけ触れて完全に凍らせる。
俺は詳しくないから分からないけど、物ってこんなに簡単に凍るものなのかな?
今の所、俺が触れて凍らなかった物って、今の所ないんだよね。
「うおっ!?」
男はいきなり冷たくなった剣を思わず手放す。
その剣は床に落下し……
ガシャーン……
そのまま粉々に砕け散った。
「……は?……お、俺の……剣……?」
男はその場にしゃがみ込み、砕けた剣の欠片を手元に集めながら、何かをブツブツ言っている。
剣がなくなった程度でそこまでなるかな?
何か大切な物だったのだろうか?
「あーあ。物は大切にしないとダメじゃないか。親に教わらなかったのか?大事な物なら、特にな」
後一人か。
「ヒッ!?ば、化け物……ッ」
コイツはどうして「ご主人様、こちらに来ていただけますか?」
「ん?あぁ、わかった」
俺は受付の方に向かう。
「その……少し寒いですご主人様」
「ん?」
周りを見ると、吐いた息が皆白くなっている。
「すまん気付かなかった。少ししたら戻ると思うから我慢してくれ」
空気の温度を上げるなんて俺には出来ないからね。
「まぁ私は大丈夫ですけど……」
そう言ってルナは受付の人を見る。
受付の人は震えていた。
「ルナ、この人は寒くて震えてるわけじゃないと思うぞ?」
表情が明らかに怖がってるし。
「そうなんですか?」
「そっとしてやれ。で?何で俺は呼ばれたんだ?」
「これに触ってほしいみたいですよ?これに触ると、その人の格が分かるみたいですよ?それを基準にギルドの中でいろいろやるみたいです」
「ふーん」
格ってなんだろうな?
カウンターに置いてある謎の四角い物体に触れればいいらしい。
「お前はやったのか?」
「私はまだです」
「ちょっと先にやってみてくれよ。別にいいんだろ?」
「も、問題、ありま、せん」
口がうまく回っていない。
「では、いきます」
ルナが四角い何かに触れる。
すると、四角いそれは強く光り始めた。
「こ、これは……!?」
受付の人から脅えが一瞬で消え、その顔は驚愕に包まれる。
「Aランククラス!?も、もしかしたらSランクにギリギリ届くかも……」
「もういいですか?」
「あ、はい!ありがとうございました。で、では……その……」
「俺が触ればいいんだな?」
俺も同じように触ってみる。
すると、ルナが触った時と同じくらいの強い光が放たれた。
「う、嘘……こんな人材が、一気に二人?故障……じゃない……どうしよう」
受付の人があわあわしだした。
今のやり取りを見ていたであろう奥にいた人が、突然こちらに向かってきた。
「全く……もたもたしてちゃダメでしょう?すみません、この子まだこの仕事を始めたばかりで。ここからは私が対応させて頂きます。ほら、あなたはこれを奥に持って行って」
「は、はい。すみません」
先ほどまでいた人は何かを持って奥に行ってしまった。
「何かおかしな事でも?」
「問題ありませんよ。ご迷惑をおかけしました」
聞いても特になにも教えてくれなかった。
それからはいろいろ書いたりして(ルナが)、無事に冒険者としての身分証を手に入れる事が出来た。
「やっぱりランク制なのか。テンプレだな」
「?……一番低いですね」
「なったばかりだしな。まぁ地道にやっていこう。特に目的もないし」
「美味しいものが食べたいです」
「目的あったな」
まだ昼目だし、簡単そうな仕事に挑戦してみてもいいかもな。