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跳んで跳んで跳んで

 「おい、お前はどうやって戦うんだ?」


 俺は走りながらルナに問う。


 「そうですね……では、これを使います」

 「……いや待て、どっから出したよ」


 ルナの手には一本の剣が握られていた。

 片手でも両手でも使えそうなサイズ……バスタードソードって言うんだったか?

 小さい頃はバスタードソードをバスターソードに勘違いしてたっけなぁ。

 いや、そんな事はどうでもいい、重要なことじゃない。


 「そんなのいつ手に入れた?」

 「これは私の尻尾の部分にあたります。人型になると、この様に何かしらの道具として使えます」

 「へぇ……とんでもねぇな」


 何だその便利機能……ドラゴンは皆こうなのか?

 やだぁ……


 「お前って剣なんて使えるのか?」

 「え?剣って適当に振っていればいいんですよね?私に挑んできた人族は皆ブンブン振り回していましたが……」

 「ちなみに、その挑んできた人族はどうなったんだ?」

 「殺して捨てましたよ?人って食べる所が少ないので、手間暇かけて食べる必要が無いんですよね。大して美味しくもありませんし……」


 報われねぇなぁ、その人族(複数)。

 剣はブンブン振り回してる様にしか見られてないし、殺された後はそこら辺にポイだもんなぁ。

 まあでも、ドラゴンから見たら人ってその程度なのかもなぁ。


 ま、そんな故人の話はどうでもいいとして、そろそろ到着しそうだな。


 「やっぱりデカいのは気のせいじゃなかったな」

 「馬と同じくらいの大きさの鳥ですね。五十匹くらいは居そうですね」

 「ちょっと馬車の人たちに声かけてくるわ」

 「わかりました」


 俺は少し離れたところから馬車に声をかける。


 「おーい!そこの馬車の人たち!助けはいるかー!!」


 すると、直ぐに返事が来た。


 「小僧ッ!ここはあぶねぇぞ!!さっさと逃げろぉ!!」


 馬車の周りで鳥たちと交戦中の人たちの一人が俺に向かってそう言ってきた。

 小僧って歳でもないんだけどなぁ。


 「助けはいるのか!?いらないのか!?タダじゃないが、助けて欲しいんなら助けられるぞ!!」

 「お前みたいな小僧じゃ「報酬はいくらでも用意します!!だから助けてください!!」…てめぇ!?勝手に何を」


 SOS入りましたぁ。


 「ルナ!!お前も来い!!戦闘だぞ!!」

 「ご主人様って戦闘の時が一番生き生きとしている気がします。絶対に戦闘狂の類ですよ……」

 「何言ってんのか聞こえないぞ!!さっさとしろー!!」


 さて、やりますかね。


 「それ!!」


 俺は鳥の群れに向かって氷の円盤を投擲する。

 飛んで行った氷の円盤に当たった魔物たちが次々と引き裂かれて落ちていく。


 「そい!!」


 俺は手を横に振る。

 すると、飛んで行った円盤が綺麗な曲線を描いて戻ってくる。

 そして、戻ってきた円盤に当たった鳥の魔物たちが次々と落ちていく。


 「おっと、ナイスキャッチ。じゃ、もう一回ね。ほれ!!」


 戻ってきた氷の円盤をまた同じように投げる。


 「あ、一匹来た」


 こちらに気付いた魔物が一直線に向かってくる。

 その鳥に対して、俺は氷の槍をまっすぐ飛ばす。

 あ、他の鳥が巻き込まれた。

 ダブルキルだ、ラッキー。


 ドゴォォン!!!


 「え?何?」


 俺は音の方を見る。

 すると、音が鳴ったであろう場所の地面が抉れていた。

 抉れた地面の端には……


 「やぁーッ!!……フフン、やっぱり振れば当たりますね」

 「お前かよ」


 うちのくそトカゲだった。

 振れば当たるってお前……いろいろと吹き飛んでるじゃんかよ。

 剣に当たってるんじゃなくて、お前の剣の衝撃波でぐちゃぐちゃになってるだけだよ……

 ……待てよ?


 「アイツに出来るんなら、俺にも出来るんじゃないか?俺の方が身体能力は上なんだし」


 俺は氷でそれっぽい大きさの剣を作る。


 「オラァ!!!」


 ……不発。

 何でだ?


 「ご主人様!!武器に魔力を纏わせるんですよ!!」

 「魔力って……なんだよぉ!!」


 俺は衝撃波を出すのを諦めて鳥を直接斬り殺した。

 うん、俺はこの方が早いわ。


 「ハッハッハ!!俺だって空を跳べるんだよ!!くたばれ鳥ども!!」


 俺は空中に氷の板を固定してその上を跳ぶ。

 飛んでるんじゃなくて跳んでいるのである。

 俺は能力で氷を浮かしたり出来るので、それの応用である。

 こんな事をするくらいなら、物量で押してしまった方が速いのだが……まぁロマン技である。

 俺がやりたいだけっていう。


 「…………なんだ、もう終わりか」


 気付けば、もう空を飛んでいる魔物は居なくなっていた。


 「こっちも終わりましたよー!!」


 ルナが走ってきた。


 「おう……くっさ!!お前臭いぞ!!返り血浴びすぎだろ!!もっと綺麗に戦えよ!!」

 「Σ(゜д゜lll)ガーン」


 神秘的なまでに白い鎧と白い剣が返り血でビチャビチャである。

 とりあえず汚いトカゲはほっといて。


 「あんたら、大丈夫か?」


 俺は襲われていた人たちに声をかける。


 「……すまねぇ、助かった。さっきは小僧とか言って悪かったな」

 「別に気にしてないからいいよ」

 「そうか……おい、お前らもなんか言えよ。特にナーヤはちゃんとお礼を言わないとダメだろ。お前が助けを求めたんだから」


 助けてくださいって言ってきた女の人か。


 「あ!す、すみません!!その、戦っている姿が余りにも神秘的だったものなので……」

 「それは分かる。宙を舞ってる感じだったな」

 「……俺か。言うほどでも無いだろ」

 「いえ!とってもお綺麗でした!!」


 ナーヤという女性が俺の手を握ってそう言ってきた。


 「お、おう。そういうアンタは土埃だらけで汚いな」

 「(゜д゜)」

 「こぞ……あんた、結構毒舌なんだな」

 「そうかな?出来るだけ気を付けるよ」


 こいつ今小僧って言いかけたな。

 しかしこの馬車、この人たち以外に人が居ないな。

 まぁ俺が気にする事じゃないか。


 「あんたらってこの先の街に向かってるのか?」


 俺は馬車の人たちに気になった事を聞いてみる。


 「そうだ。俺たちは冒険者として活動しているんだが、活動拠点を移そうって事になってな。まぁ引っ越しってやつだ。この馬車は、その荷物なんだよ」

 「へぇ~、荷物守りながらの移動は、やっぱり大変か?」

 「あぁ、こういうのは初めてだったんだが、予想以上につらいな。荷物を狙われる事も多くてな……」


 う~ん……適当に恩を売って、街に入るのを手伝ってもらおうと思ってたんだが、この人たちだとなんかやりにくいな。


 「なぁ、聞きたい事があるんだけどいいか?」

 「いいぞ?助けてもらった恩もあるしな」

 「そうか。じゃあ聞くけど、実は俺、凄い田舎から来たんだよ。だから街に入るのにはどうしたらいいのか教えて欲しいんだ」

 「てことは、街に入るのは初めてなのか……だとしたら、入るのには特に必要なものは無いぞ?街に居る間に、何かしらの身分を作っておかないといけないって事だ。身分証が無いと、仕事も出来ないしな。それと、街から出るのには税金がかかるから気を付けろよ」

 「身分証を手に入れるにはどうすればいいんだ?」

 「一番簡単なのは冒険者だな。冒険者になるのに必要な物も無いしな。次に簡単なのは商人ギルドだな。だが、こっちは身分証を作るのに金がかかるな。後は……街の住民になると、身分証が手に入る。だが、住人になるには、街で家を買えば役所から身分証を貰えるようになっている。他は……ああ!運び屋ギルドってのがある。だが、これは所属するのが大変だ。一定の教養が無いといけないし、身辺調査もある。しかも、それが全部通っても、ギルドのお偉いさんとの面接で、そいつの性格とか見られるらしい。志願しても、ギルドに所属出来るのはほんの一握りだ。給料はかなりいいらしいけどな」

 「へぇ~、そんなのもあるのかぁ……」


 運び屋ギルドかぁ、面白そうだな。

 でも、教養が必要なんだよなぁ……前回の街に行って分かったが、俺はこの世界の字が書けないんだよなぁ……言葉は解るのにおかしいよな。

 でも、難易度が高いって聞くと、挑戦したくなるよね。

 ちょっと勉強してみるか。


 「ん~、とりあえず冒険者になってみようかなぁ」


 一番条件がゆるいし。


 「お!冒険者か!じゃあ先輩からちょっとしたアドバイスだ!」

 「なんだお前」

 「うッ……まぁ聞けって、いいか?冒険者は結構荒れてる奴が多い」

 「だろうな」

 「だから、新人とかによく絡んだりする奴が居るんだよ。そういう奴らはぶっ飛ばして大丈夫だ」

 「物理的にぶっ飛ばしていいの?」

 「物理的にぶっ飛ばしていい」


 いいのかよ。


 「問題になったりしないのか?」

 「怪我人が出るのなんか日常茶飯事だ!」


 流石冒険者だな。

 街中でも冒険してる。


 「そうなのか」

 「そうだ!」

 「わかった、アドバイスありがとう」

 「いいって事よ!最初にガツンとやっとけば、後でからまれにくくなるからな!」

 「おう。じゃあ俺たちもう行くわ」

 「気ぃ付けて行けよな!」

 「あ、あの、また会いましょうね!」


 ナーヤさんだっけ?

 いきなり再起動したな。


 「次会うときは綺麗だといいな。それじゃあ」


 俺はトカゲの方に行く。


 「ほら行くぞ。いつまで地面に絵を描いて遊んでんだよ」

 「さっき戦った魔物の絵を描いているんです」

 「……ちゃんと特徴を捉えて描けてるのがなんか腹立つな」

 「そんなぁ!」

 「とにかく行くぞ。もう面倒くさいからささっと向かうぞ」


 俺は自分の足の裏に氷を張る。

 最初からこうしとけば良かったな。


 「ほら」

 「え?て、手をつなぐんですか!?」

 「イヤなら置いていくぞ」

 「行きます!つなぎます!!」


 俺はトカゲの手を握る。


 「そーれ」


 俺は足の裏に付けた氷を操り、地面をスライドしながら移動する。


 「あ、あの!私引きずられてます!しかも結構速いです!!」


 今時速60㎞だしな。

 やろうと思えばいくらでもスピードを上げられる。


 「最初は前に抱えて行こうと思ったんだが……」

 「ま、前……つまりお姫様抱っ」

 「汚いんだもん」

 「Σ(゜д゜lll)ガーン……まさかここでも汚れの影響が(´・ω・`)」

 「どんどん上げていくぞ」

 「え、ちょっと、この姿勢結構辛いんですが!」

 「しらん」

 「そんなぁ!!」


 そんなこんなしているうちに、ようやく街が近づいてきた。

 何だかとても長く感じたな……

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