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ランクアップ

 「ルナ、これはどうだ?」

 「……こっちは薬草ですね。もう一つの方は似ているだけの雑草です」

 「そうか」


 俺は薬草の葉っぱの大きさと同じ氷を作る。


 「お?これは薬草かな?」


 見つけたのは、先ほど作った葉っぱの形をした氷よりも少し大きめの草だ。


 「ルナ、これはどうだ?」

 「これは……薬草ですね」

 「そうか」


 氷の見本に修正が必要だな。

 俺は氷の見本の大きさを新しく見つけた薬草に合わせる。


 俺が今何をしているのかと言うと、薬草を一人で見分けられるようになりたいが、色互いはともかく、大きさが違う雑草の見分けが難しいので、大きさの見本を作ってそれに照らし合わせれば感覚で覚える必要もないよねっていう便利道具を作っていたのである。


 葉っぱ一枚分の大きさしかないから、持ち歩いていても場所をとらないしいいかなって思って作り始めたのだ。


 ちなみに、まだ生えたばかりのやつだと見分けつかなくない?と思うが、根本の所は最初から白い訳ではなく、薬草として成熟してから白くなる。

 雑草の方も同じ性質を持っているので、大きさで分かるという仕組みである。


 「フフ、完璧だな。ルナ!10束集まったぞ!」

 「お疲れ様ですご主人様!こっちは……いっぱい集まりました!」


 ルナの手を見てみると、数えるのも面倒くさい程大量の薬草が握られていた。


 「…………」


 人型になってもドラゴン並みの鼻のよさとか、ちょっとズルいと思うんだ。

 匂いで分かるとか、勝てるわけないじゃないか!

 別に競っていたわけじゃないけど……


 「……戻ろうか」

 「はい!」


 俺たちは街まで戻っていった。

 ルナは引きずっていった。


 冒険者ギルドに行って依頼の報告をする。


 「……ここまで早く戻ってくるとは思っていませんでした。……はい、では依頼達成です。条件を満たしたことにより、お二人のランクが上がりました。そして、こちらが報酬金になります」


 まだ午前中なのにもうランクが上がった。

 報酬金は銀貨1枚と銅貨数枚だった。


 「この後の依頼もやっていきたいんだけど、用意できそう?」

 「そうおっしゃるかと思いまして、既に準備は整っております。こちらが、Dランクへと上がるために必要な依頼となっております」


 そう言って20枚の依頼書を出してきた。


 「一気に増えたな」

 「これでも少ない方なのですよ?大体の方はEからDランクに上がるのに半年はかかります。それに、Dランクからは上がらない人は一生上がらない、という場合もございますので、これよりも依頼が増えます」

 「そうなのか」


 俺はルナと一緒に適当に依頼を見ていく。


 「あの……ほとんどがDランクの依頼なのはどうしてなのでしょうか?」

 「Dランク?俺たちはEランクだぞ?」

 「依頼書には、Dランクと書かれています」


 俺は受付さんの方を見る。


 「ご説明します。冒険者は、ご自分のランクの一つ上のランクの依頼まで受注することが出来ます。Dランクの依頼ばかりなのは、ギルドのランクアップの仕組みを利用して、もっとも効率の良いランク上げになっているからです」

 「……もしかして、点数みたいのがあるのかな?」

 「点数ですか?」

 「あぁ。ギルドにある依頼一つ一つに、達成したら貰える点数みたいのが決まっていて、それを一定数以上集めないと次のランクに上がることは出来ないみたいな……こう、基準みたいのがあるんじゃないかね?この仕組みだったら、高いランクの依頼を出す理由が納得できるものになると思うんだよなぁ。高いランクの依頼の方が、点数が高くて当然だろ?」

 「なるほど!」


 俺は受付さんを見る。


 「……黙秘させていただきます」

 「あらら」


 ランクアップの仕組みは冒険者には公表してくれないらしい。

 あってると思うんだけどなぁ。


 「じゃ、これを全部達成すればいいんだな」

 「はい。それでランクが上がります」

 「じゃあ行くか」

 「はい!パパっと終わらせましょう!」


 俺たちは依頼書を持ってギルドを出た。


 「さてと……俺は依頼書が読めないからわからんが、どんな依頼なんだ?」

 「そうですね……全部討伐依頼です」

 「楽そう……かと思ったが、場所がバラバラだったりする?」

 「……ですね。結構あちこち行かないといけないかもです」

 「そうか……じゃあ休みながら気ままに行こうかね」

 「了解です!」


 俺たちは街を出た。

 20個の討伐依頼を達成するために……


 …………


 「ん?目的地が村なのか?」

 「はい。なんでも、山にグレートウルフの群れが住みついてしまって、村人が山に入ることが出来ないから退治してくれ、とのことです」

 「へぇ、そういう依頼もあるんだな」


 この依頼はEランクの物らしいので、結構あっさり終わりそうだ。

 ちなみに、ここに来るまでに3つほど依頼をクリアしている。


 村か……どんな場所なんだろうか。


 俺たちは目的地である村に着いた。


 「一応、村全体を柵で囲っているみたいだけど……」

 「意味あるんですかね?」

 「……さぁ?」


 あるにはあるが、低い。

 高さが。

 俺の腰ぐらいの高さしかない。

 まぁ高い壁って作るの大変だからね。

 村だとこれ位が限界なんだろう。


 俺たちは村の入り口を探す。

 入り口は直ぐに見つかった。

 入り口には二人の見張りの男が居た。


 「すみませ~ん、ギルドの依頼で来たんですけど~」

 「冒険者の方ですか!お待ちしていました!」

 「この依頼書に書いてある依頼主の人に会いたいんですけど」

 「は、はい!では自分が案内します!」


 俺は見張りの男について行く。


 「子ど達が走り回ってますね」

 「結構いっぱいいるな」

 「あの世代は他の世代のよりも子供の人数が多いんですよ。村の住人としては、嬉しい限りです」

 「へぇ~」


 案内の男が聞いてもいないのに教えてくれた。

 だが、そんな事よりも気になっていることがある。

 この案内の男、ルナの事をさっきからチラチラ見ているのだ。

 面白そうだから、後でこいつが見ている時にこれ見よがしにイチャイチャしてやろう。

 どんな顔をするのか楽しみである。


 「ここが村の集会場になります。おそらく村長はここに居るでしょう。少々お待ち下さい」


 男は中に入っていった。


 「……ご主人様」

 「なんだ?」

 「あの男、何か企んでいるのでしょうか?」

 「……ん?」

 「ここに来るまでに、何度もこちらを見ていました。隠していたつもりの様ですが、バレバレですね。警戒しておいた方がいいでしょうか?」

 「フフッ、あ、あぁ。そうだな。その方がいいだろう。どんな人間か分かったもんじゃないからな」


 あの男……気付かれてるだけじゃなく、理解もされてないのか……哀れなww

 こちらから何もしなくても勝手に自爆しそうである。


 村の集会場の前で待っていると、集会場の中から誰かが出てきた。


 「お待たせして申し訳ないの。儂がこの村の村長をやっている者じゃ。この様な村によくきて下さった」

 「気にしないでくれ。それで、この依頼を受けていたんだが、間違いないか?」

 「うむ、確かに儂が出した依頼じゃ。内容もこれで間違いない。せっかくじゃ、中に入ってくつろいで下され。こんな街から離れた村まで来てくださったんじゃ。旅の疲れもあるじゃろう」

 「いいのか?この件は早めに解決した方がいいんじゃないのか?」

 「確かに早いに越したことは無いが、疲れがたまった状態で山に入るのは、この村の住人として止めたいと思ってな。冒険者なら、疲労がいかに厄介な物かも理解できるじゃろ?」

 「なるほどね……それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかな」


 俺たちは村長に案内されて、くつろげそうな部屋に入る。


 「結構広いんだな」

 「うむ、村の集会にも使う部屋じゃからな。大勢が座ってくつろげるように作られておる」

 「へぇ」


 床も、畳とは違うが似たような感じで作られていて、身体が休まる感じだ。


 「あの、村長さんでいいですかね?」

 「構わんよ。どうかしたかね?」


 ルナが村長に話しかけた。


 「村長さんは、元冒険者ですか?」

 「ホッホ、良く気付いたの。もう昔の事じゃがな……どうしてわかった?」

 「魔法使いですよね?」

 「……なるほど、魔力かの?」

 「これでも魔力感知には自信がありますので!」


 ドラゴンチートだからな。


 「そんな事も分かるのか?俺はそもそも魔力が何なのかも分からないんだけど」


 どんなものなのかも分からない。

 俺にも魔力はあるらしいんだが……


 「なぬ?お主魔法使いではないのか?」

 「え?どちらかと言うと、戦士だけど……魔力とかよくわかんないし」

 「な、何と言う事じゃ……それほどの魔力を体に宿していながら、使い方も分からんのか?」

 「だって、誰かに教わったこともないし、使えなくて困った事もないし……コイツの見て便利そうだなってのは思ってたけど」

 「お嬢さんの方が戦士に見えるんじゃが……」

 「いうなれば、私は魔法戦士ですね!」


 お前戦闘で魔力使ったのあのデカい鳥との戦闘だけだろ。

 しかも魔法じゃ無くて魔力を使った衝撃波って自分で言ってたし。


 「ふむ……よければ、儂が教えてやろうかの?」

 「え?いいのか?」

 「よいよい。お主らはまだ若いのにしっかりしておる様じゃしな。儂の様な年寄りからすれば、お主らのような若者が居るだけでもうれしいんじゃよ」

 「お、おう。じゃあよろしく頼むわ」


 俺はルナの上でダラダラしながら来たし、ルナに関しては数週間平気で空を飛ぶような奴だから、疲れなんてたまっちゃいないが、おっさんを無視して山に行くのもあれなので休憩させてもらうと、魔力の使い方を教えてくれることになった。

 ……なんだこれ。


 まぁ教えてくれるならありがたく、という事で魔力の使い方を習おうと思った時、バタバタを誰かが慌てたように走ってきた。


 「じいちゃん大変だ!!沢山の山の魔物が下りてきたんだ!!」

 「なんじゃと!?」

 「しかもその後ろからオークの群れが!!」

 「な!?……そうか、魔物たちはオークから逃げて山を降りてきていたのか……魔物が増えていたのは気のせいではなかったか……ッ」


 どうやら大変な様子。


 「もう村の表で自警団の皆が戦ってんだ!!でも劣勢みたいで!!」

 「わかった。儂が行くと伝えておくれ」

 「わかった!」


 村の表ではもう戦闘は起こっているようだ。

 この様子だと、まだ村の中に入られてはいないようだが、時間の問題だろう。


 「あ~っと、爺さん、助けはいるか?」

 「……依頼とは関係ない事じゃぞ?」

 「じゃ、この件が片付いたら魔法とか教えてくれよ。それに、山の魔物が出てきたってことは、依頼の魔物だっているだろ?完全に無関係という訳じゃない」

 「……すまぬ、恩に着る」

 「気にするなよ。ルナ、出るぞ」

 「はい!」


 俺達は村の表に向かう。


 「結構派手にやってるな」

 「集会場の外に出たとたんに戦闘音が聞こえるほどでしたからね。ここから集会場はそこそこあるんですが……」

 「これは急いだほうが良さそうじゃなッ」

 「爺さんは大丈夫なのか?結構なスピードで走ってたけど」

 「これでも儂は、元Aランクの冒険者じゃ。これくらいどうってことないわい!!」

 「元気な爺さんだ」


 元Aランクとは驚いたな……引退してからここに住み始めたという事だろうか?

 ま、いまはそんなことは関係ないか。


 「ルナ、村人は傷つけないようにな」

 「お任せください!!」

 「バラバラに戦った方がいいだろう。俺はあっち行くから、反対側よろしく」


 俺はルナにそれだけ言って魔物の群れに向かって走っていく。


 「護衛対象が居る戦闘は初めてだが、どんなもんかね」

 「一人で突っ込んだら危ないぞ!!」


 村人から警告が飛んで来るが、無視。


 「おらよっと」


 俺は氷で剣を作ってそれを振り回す。


 「……やっぱ剣って難しいな」


 当たるけど、能力の補佐が無いと斬れない。

 剣の方はうまく作れているから、単純に俺の技量が足りていないんだろう。


 「せっかくカッコいいから使いこなしたいんだけどな……っと、それ」


 俺はまた剣を振る。


 「……地味だな、もっと派手にいこう」


 俺は跳び上がり、空中に氷の足場を作ってそれを蹴りながら魔物を切っていく。

 街に行く前に鳥の魔物にやった奴である。


 「空中で好き勝手動けるのはいいよな……目立つから敵の方から寄ってくる」


 こちらから行かなくていいので楽である。


 「ッ!?っと、あぶな」


 遠くの方から矢が飛んできた。

 もちろん村人たちの方からではない。

 魔物たちの方からだ。


 「……ゴブリンでも混じってんのかな?」


 弓を使うゴブリンは居る。

 でも命中精度が低く、たいした脅威にはならない。

 つまり……


 「今のはゴブリンじゃない」


 もしかしたらたまたまうまくいったのかもしれないが。


 ふとルナの方を見ると、魔物たちが結構あちこちに飛んで行っている。

 吹き飛ばされて宙を舞っているのだ。


 「俺もあれ位派手にやろうかな?」


 あんまりグチャグチャにすると片付けが大変だもんなぁ。


 「もうめんどくさいから、全部やっちゃおう」


 俺は地面を凍らせる。


 「えいッ」


 そして、地面から氷の棘を大量に生やした。


 ……あたりに血の匂いが充満する。

 生きている奴もいるが、串刺しになって動けなくなっている。


 「結局、これが一番楽なんだよね」


 念のため、村人が巻き込まれていないか確認する。

 ……大丈夫そうだ。


 反対側のルナも、もうすぐ終わりそうである。


 後は……


 「更に奥から来てるオークの群れか……」


 オークとは戦ったことがないが、どんなやつらだろうか?

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