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思ったよりも多かった。

 「これでいいんだね?」

 「あぁ、これでいい」

 「わかった」


 ギルドマスターに渡された紙に俺の新しい名前を書く(ルナが)。

 その紙と俺のギルドカードを持って受付さんが部屋を出ていく。

 少して受付さんが戻ってきて、俺にギルドカードを渡してきた。


 「こちらになります。ご確認ください」

 「あぁ……これでいいんだよな?俺字が読めないから確認してくれ」

 「わかりました……大丈夫ですよ、これで合ってます」

 「そうか……」


 あまり名前が変わったという実感はわかないが、これで俺はあのクソ共に付けられた名前を使わなくてよくなったのだ。

 思い出す必要さえ無くなった。


 「……次は体も捨てるか」

 「それは無理でしょう!?」

 「冗談だよ……多分な」

 「多分ッ!?」


 そういえば、結局あの魔物いくらになったんだろう?


 「まだ売却額出ないのか?俺が持ってきたあれ」

 「ん?何か素材を持ってきたのか?」

 「はい。ギン様……いえ、ソル様は魔物を当ギルドに売却しに来ました。ただいま査定中です」

 「……素材だろう?」

 「正確には……魔物を丸ごと持ってきました」

 「……何を持ってきた?」

 「デモンズエレファントです」

 「……嘘でしょ?」

 「そろそろ結果が出る頃かと。結果がでたらここえ持ってくるよう指示してありますので、ソル様はもう少々お待ち下さい」

 「わかった」


 金貨23枚は確実、実に素晴らしい。

 名前を変えたのでそこから5枚払わなければいけないが、それでも18枚あまる。

 これなら食費も賄えるだろう。


 少しすると、部屋の扉をノックする音が聞こえた。


 「どうやら結果が出たようですね。私が出てきます」


 そう言って受付さんが扉に向かった。

 少し何かを話してから、何かを受け取って扉を閉めた。


 「……ソル様、いいお知らせです。私の予想を遥かに上回った結果が出ました」

 「マジで?いくらになった?」

 「金貨40枚です」

 「……マジで?」

 「リンネ!?なぜそんな結果が出た!?」


 ギルドマスターは困惑しているようだ。


 「詳細を説明いたしますと……まず、デモンズエレファント一体分の相場は大体金貨23枚ほどです。しかし、今回ソル様はそれを一切解体せず、傷も最小限に抑えられた状態でしたので、下手に分解するよりも、その手のマニアに売却した方が絶対に利益が出るとの事なので、こちらの買い取り金額に大幅な変更が出たのです」

 「魔物の死体をそのまま買い取るマニアとかいんのかよ……」

 「標本ですけどね。あそこまで綺麗な状態で残っているAランクの魔物など、見たことも聞いたこともありません。今後、同じような状態の魔物を売却していただければ、更に値段が上がるかもしれませんね」

 「マジか……」

 「という訳で、こちらが今回の買い取り額になります。ご確認下さい」

 「あ、あぁ」


 俺は受付さんから巾着袋をもらう。

 開けてみると、中には大量の金貨が入っていた。


 「………40枚ピッタリか。確かに受け取った」


 俺はそれを持ってギルドマスターの前に行く。


 「な、何だい?」

 「ほれ」


 俺は金貨を5枚渡す。


 「……これは?」

 「名前変更の手数料。受付で金貨5枚かかるって教わったから、払っただけだ」

 「……律儀だね。黙って払わずに行っても良かったんだよ?いろいろあったし、仕事とはいえ、君には嫌な思いもさせてしまったからね。払わなかったら私が立て替えておこうと思ったんだけど」

 「そんな気遣い要らねぇよ。じゃ、ちゃんと払ったからな」

 「うん、確かに受け取ったよ」

 「……もう行っていいか?」

 「ああちょっと待って」


 帰ろうとしたら引き留められた。


 「なんだよ?」

 「ちょっと頼みたい事があってね。何、難しい事じゃないから安心してくれ」

 「……なんだよ」

 「君たちには冒険者ランクを上げてほしいんだ。君たちが冒険者になったのは昨日だろ?なのにAランクの魔物を倒しただけじゃなく、それを丸ごとギルドに持ってきた。これだけで君たちの実力は破格の物だと分かる。……それに君たちが冒険者に登録した時、私にも信じられない報告を受けてね。君たちの格がSランククラスである事が分かっている。しかもそれが間違いじゃない事が今日証明された」


 何だかめんどくさそうな予感。


 「やってみないか?ランク上げ。もちろん、こちらも全力でサポートさせてもらおう。具体的には、ランクアップに必要な依頼を君たちに優先的に事らから凱旋する」


 つまりいい依頼をこっちに回してくれるって事か。

 それは助かるが……今回の件で、真面目に依頼を受けるよりも、強い魔物を丸ごと持ってきて売った方が利益になる事が分かったしなぁ……


 「……やってもいいが、条件がある」

 「え……条件?いや、普通だったらこれだけで両手を上げて喜ぶ待遇なんだけどな……」

 「残念ながら、俺はランク上げに興味がない。それに、真面目に働くよりも、今日みたいに強い魔物を丸ごと持ってきた方が楽に稼げる事が分かった。あんたの提案に乗るメリットが俺には無いも同然だ。故に、その提案に乗ってほしければ、こちらが提示する条件を飲んでもらいたい。無理なら断る」

 「嘘でしょ!?……そ、その条件って何?」

 「食費だ」

 「は?」

 「俺たちに掛かる食費をギルドで負担してくれ」

 「……食費をこちらが負担すれば、君たちは働いてくれるんだね?」

 「あぁ、喜んで働こう」

 「わかった。それくらいならお安い御用だ」


 かかったなアホが!!

 お前はこいつに掛かる食費を甘く見ている。

 真面目に働いても賄えないレベルだぞ?お前たちがどう苦しむのか見ものだな?ハッハッハッ!!


 「でも、基本的に無料になるのはここの食堂だけだからね?流石に他の食事処で無料にしろって言うのはいろいろ大変だから……まぁ、場所によっては相談してくれれば何とかするけど」

 「それで十分だ。で?仕事を始めるのはいつからだ?」

 「今日1日はゆっくり休んでくれ。明日の朝とかにまたここを訪ねてくれよ。後、ここでの食事は今日の昼から君たちは無料になるから、そういう事でいいかな?」

 「ああ、了解した。良かったなルナ。ここでならお腹いっぱい食べられるぞ」

 「やりましたね!!ご主人様!!何も気にせず食べられるのは素晴らしい事です!!」

 「そうだな。本当にな……」


 ギルド以外は応相談って事は、ここの食事以外に食べたいものがあれば、相談すれば代わりに払ってくれるかもしれないって事だろ?

 素晴らしいな、純粋に食事を楽しめそうだ。


 「じゃ、明日またここに来るよ」

 「うん、よろしく頼むよ」

 「では私がお送りします」


 俺たちは部屋を出た。

 受付さんが先導してギルド内を歩いていく。


 「ここまででよろしいでしょうか?」

 「あぁ、ご苦労様」

 「本日はありがとうございました。では、私は通常業務に戻ります。受付に居ますので、何かございましたらお声かけ下さい」

 「ああ」


 俺たちはギルドを出た。


 「いきなり大量ですね」

 「あぁ、しかも食費に関しては気にしなくていいと来たもんだ。とてつもなく運がいい」

 「この後どうしましょうか?」

 「そうだな……俺が着る物が欲しい」

 「着る物ですか?そういえば、今ご主人様が来ている物って所々切れたりしてますね」

 「森の中でサバイバルするための服じゃないからな。そろそろ限界だろう」

 「……見たことのない素材ですね」

 「もう2度と手に入らないだろうな」

 「そうなんですか?」

 「あぁ……」


 もう日本には行けないからな。

 まぁ行ったところで手に入らないけどな。

 俺は追われている身だ。

 戻り方がわかっても戻る気はない。


 「街の商業区の方に行こう」

 「わかりました」


 俺たちは街中を移動する。


 商業区では、主に生活用品や武具などが売っている。

 周りを見るだけでも結構な数の工房などが並んでいる。


 「ご主人様はどんな衣服を探しているんですか?」

 「冒険者として活動するから、やっぱり機能面に優れている物かな……」

 「う~ん……あそこのお店なんていいんじゃないですかね?」

 「お前、店の良し悪しなんて分かるのか?」

 「いえ……ただ、あそこの店に置いてある武具に使われている素材が、良さげな物が多いので」

 「なるほどね……よさげな物って具体的にはどんな感じ?」

 「厄介な魔物の素材が材料になってたりしてます。匂いで何となくわかるので」

 「じゃあそこに行ってみよう。お前が居て良かったよ」

 「ホァッ!?」


 奇声を上げたトカゲを無視して、俺は店に入る。


 「……値段がわからん」


 字が読めないせいで、書いてあるそれが値札かどうかすら不明だ。

 まぁ見るだけならタダなので、いろいろ見てみる。


 「……ポケットが多めについている物が多いな。それも取り出しやすい位置を考えて取り付けられている」


 使用者の事を考えて作ったのか、この方が売れるからなのか分からないが、買う側としてはありがたい事だ。

 今の所入れる物はないが、冒険者として活動していく内に必要になってくるだろう。


 「ご、ご主人様、置いて行かないで下さいよ……」

 「道のど真ん中で奇声を上げるような奴の仲間とは思われたくなかったんでな」

 「辛辣!?」


 いつも通りだろ


 「で、どれが良さそうかね?素材的に見て。おそらく製作者は全部一緒だと思うから、品質は気にしないでいいと思う」

 「どうしてわかるんですか?」

 「細かいところが同じなんだよ。こういうのって製作者の癖が出やすいから、素材の接合部分とか見れば大体わかる。やり方が同じなんだよね。後は細かい部品の形とかね。いろいろやると、最終的に自分の使いやすい部品を使うようになるから、結構似たような形の物が多いんだよ」

 「そうなんですね……」

 「まぁ、まだ全部詳しく見たわけじゃないからあれだけど……まぁ気にしなくても大丈夫だろう」


 本格的に字の勉強とか始めないとな。

 流石に字が読めないのはヤダ。

 値段なんて聞けばいいが、やっぱり困る。


 「動きやすい方がいいですか?」

 「そうだな。防御力はそんなに要らない。動きやすさ重視で頼む」

 「わかりました」


 ルナは店の中を歩き回っている。

 俺はそれについて回る。


 「ご主人様、これなんてどうでしょう?」


 そう言って見せてきたのは白っぽいコート。


 「どうって言われてもな……これはどういう物なんだ?」

 「これはですね、とある魔物の皮で出来ていまして、魔力を送ると一定時間物理的な衝撃を吸収してくれます。後熱さに強い性質を持っています」

 「へぇ~」

 「皮なので動きを阻害されにくいですし……細かい事を考えなくていい単純にいい物です。……多分」

 「そうか……値段は?」

 「金貨9枚とちょっと……といった感じです」


 買えるな……


 「でも……俺の今の服の上に着るのか?このカラーのコートを?」


 俺は両手を横に広げてみせる。


 「……合わないですね」

 「だろ?」


 すると、ルナは少し考え事を始めた。


 「…………予算はいくらですか?」

 「……コート合わせて金貨20枚まで」

 「私が一式そろえてみせましょう!!任せてください!!」

 「……任した」


 コイツのセンスが分からないので、少し不安を覚えるが、俺はコイツに任せる事にする。


 「では、少し失礼します」

 「……何で抱き着いてきた?」

 「サイズを測ってます」

 「……胴回りしか図ってないように思えるが?」

 「…………」

 「おい」

 「だ、大丈夫です!ちゃんと魔法で測ったので!!」

 「便利だな」


 万能かよお前の魔法。

 一度どこまで出来るのか聞いてみたいわ。


 「どうやって揃えるんだ?」

 「この店の中で揃えます」

 「そうか……分かった。それじゃあ俺は少しの間、別の店に行ってるよ。……任せたぞ」

 「了解です!!」


 俺は店を出る。

 そしてギルドに向かう。

 急ぎで。

 空中に氷の足場をちょこちょこ作りながら空を跳ぶ。


 「……っとっと。到着」


 直線で来れたので直ぐについた。

 俺はギルドに入った。


 そしてリンネと呼ばれる受付さんの元に行く。

 幸い、この時間は混んでいない様だ。


 「やぁ」

 「……お早いですね。今回はどのようなご用件でしょうか?」

 「ドラゴンの生態について知りたい」

 「……どのようなドラゴンでしょうか?ドラゴンにも様々な種類がございます。全て、というのであれば、お時間さえいただければお教えしますが」

 「……全て知っているという事に驚きだが、話が早くて助かるよ。どういうドラゴン……か。そうだな、基本的に巣を作らず、特定の地域に居るわけでもない、飛竜で……カラードラゴンと呼ばれる奴についてわかるか?」

 「もちろんでございます」

 「スゲェな、流石受付さんだわ」

 「恐縮です」


 この人ってやっぱりトンデモない人なんじゃないだろうか?

 どうして受付なんてやってるんだろう?


 「で、そのカラードラゴンの好きな物ってわかる?食い物以外で」

 「かなり限定されますね」

 「ムリか?」

 「問題ありません」


 おお!

 この人すげぇ……


 「ドラゴンの多くは、光物……宝石の類のモノをよく自分の巣に集めたりします。それはカラードラゴンでも同じです。しかし、カラードラゴンが集める物には条件があり、自分の色に出来る限り近い色の物にしか興味を示しません」

 「でも、特定の巣を持たないのに、集めてどうするんだ?」

 「身に着けるのです。ドラゴンは巨体ではありますが、とても器用です。自分の身体に巻き付けたり、鱗の間に挟んだり……あまり長持ちはしないようですが、気に入った物を身に着けたり持ち歩いたりするようです……ご希望に添えましたでしょうか?」

 「ありがとう。十分だ。助かったよ」

 「お力になれたようで何よりです」


 俺はギルドを出る。

 宝石……装飾品か。

 俺はまた商業区に向かう。


 俺だけ何か買うのもあれだし、せっかくだから、アイツにプレゼントでも買ってやろうかね。

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