王宮
みなさまからの応援要望お叱りの声などいただけると嬉しいです
きらびやかで荘厳な王宮は、山奥の田舎から出てきたアスランでさえも一目見ただけでそれとわかるほどの存在感を放っていた。
(えっ!あれ入るの⁉というか入っていいの?なにこれ処刑とかされちゃうわけ?だめだめまいがしてきた)
「おいおい落ち着きなよアスランくん、何も取って食おうって話じゃないだろうに」
「じゃあ僕をどうするっていうんですか!突然王城に連れてこられれば誰だって生きた心地がしませんよ!」
アスランの絶叫にライオは戸惑いながらもポリポリと鼻をかきながら、
「うーむ、それは行ったほうが早いと思うな」
と話すのだった。
----------------------------------------------
絵画、茶器、石膏像や甲冑など意匠を凝らした調度品や装飾物の数々が、廊下には所狭しと並んでいる。
(美術品なんてさっぱり分からないけど、目の前にあるものがいいものだということはわかる)
「よし、ついたね」
廊下のつきあたりでライオが立ち止まるがその言葉にアスランは困惑する。
(そこはもう行き止まりじゃないか)
「ちゃんとついてきてね、これすぐしまっちゃうから」
ライオが手をかざすと、先刻の取調室のように壁一面に円環を基調とした幾何学模様が浮かび上がる。
すると、先ほどまで壁であったはずの場所には重厚な装飾の施された観音開きの扉が現れる。
すごいなとアスランは純粋に感心する。
-魔術-超常の力、神々の恩寵、地域によって様々な呼び方があるがそれらはほぼ王国全土に普及しており、人々の生活の根幹となっている。だが彼の地元ルリクタは王国内でも数少ない魔術を使わない土地であり、父が亡くなった際の遺言書に世界には魔術というものがあること、王都に出て見聞を広めるべきだということとそのための路銀を遺産として残しているということを知らせられただけであった。
その扉を開けるとそこには広大な応接室のような空間が広がっており、中央の椅子には先ほど廊下で見たような西洋甲冑が座していた。胸には色鮮やかな宝石がいくつもはめ込まれている。
(さすが王宮だけあって凝ったインテリアが多いな)
「ようこそアスランくん」
凛として芯の通った声が響く。
しかし、眼前には、いかめしい甲冑があるばかり。
一瞬何が起こっていいるかわからず、きょとんとするアスランだったが鎧が立ち上がったことによってようやくすべてを理解した。
「私はここの長ということになっているオルゲルト・ニルヴァーナクという。こんな格好ですまないがこれは私のトレードマークのようなものでね。ご勘弁願いたいものだが、なに立ち話もなんだろう?そこにかけるといい」
再度甲冑の隙間から、声が漏れる。同時にどこからともなく座り心地のよさそうな椅子がふわりと飛んでくる。
甲冑が立ち上がってきた時こそびっくりしかけたが、よくよく考えればここは王都なのだ。騎士の一人や二人はそう珍しいものではない。ましてや王宮に騎士のいないはずもない。
だが自分の中での騎士のイメージというのはもっと尊大で横柄な白服警官のような人物だとばかり思っていたが、そうでもないらしい。現に目の前の騎士は貴族でもないぽっと出の田舎者に対しても慇懃に接してくれている。上等な椅子は座ると甘いにおいが香り、アスランの見立て通り体全体が沈み込むほどフカフカで極上の座り心地だった。
「やんね、そうよねぇあの見た目で素晴らしくないわけないよねぇ、にへへもうずっとここにいたい」
はっと思わず我に返る。しまった、心の声が漏れてしまったか?と若干挙動不審ぎみになりながらあたりを見回すと、ライオがニコッと笑いながら
「だってさ、総隊長。本人は大丈夫そうだよ?」
「うむそれならば良いか」
と自分のあずかり知らぬところで何やら不穏な会話が聞こえる気がするが、いまはこの椅子にすべてをゆだねていたかった。
「よし、アスラン起きようか」
とライオが指を鳴らすと、今まで椅子にもたれかかっていた上半身がすぐに揺り起こされる。
名残はつきないが、冷静になるととてつもなく無礼なことをしていたという後悔が押し寄せてくる。
「すすみません、人様の前でとんだご無礼をば‼」
「いやかまわないさ、気に入ってくれてとてもよかった。」
「どうお詫びしたものか、あわわ」
「いいさ、ところで本題に入ってもいいかい?」
「はい!どうぞなんなりと」
よしじゃあ始めよう、とオルガは鷹揚にうなずく。
「単刀直入に言おう、我々の捜査に協力してほしい」
澄み切った声は黙を揺らした。
一話当たりの文字数が増やしたいですね。どれくらいがいいんでしょうか?