攻防
「ぇ...」
その場から離れようとしながら少年が見たのは、白服の腕から放たれた紫電が渦を巻きながらこちらに迫ってくる様子だった。
金髪ではなくこちらに
あぁこれが死の間際というやつか、と少年は直感した。時間の流れがやたらと遅く感じる、極限のさなかで自らの感覚が研ぎ澄まされていくのがわかる。なんだ存外普通じゃないか、狩りの時とそう大差はない。身体中のありとあらゆる力を総動員しつつも意識だけが、ただただ昏いところへ沈んでいく感覚。このままでは避けられないという予測を脳が下すと同時に、体は次の行動を選択する。
(まにあえよっ)
前方へと倒れこみながら机の下へと滑り込む。
刹那、爆音と衝撃が少年を…と思いきや、しばらくしても予想していた衝撃や余波は感じられない。
何事かとさらに息をひそめていると、パンパンという手を打つ音が聞こえ
「おーい少年、もう出てきていいよ」
こちらをのぞき込む金髪の笑顔がそこにあった。
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「いやぁ助かったよ。財布忘れてどうしようかと思ってたんだ」
もぐもぐと口いっぱいに露店で買ったサンドイッチをほおばり金髪が満足そうに歩いていく。
「・・・それであなた何者なんですか、えーと」
「はいふぉ、はいふぉでひい」
「あー食べ終わってからで大丈夫です」
ところで自分はこれからどこへ連れていかれるのだろう。
そもそもこの人物は、信用に値するのだろうか父さんにも知らない人についていくなと言われてきたぞ。いやでもさっきの動きといいこの人から逃げられる気はみじんもしないのでとりあえず従っといたほうがよさそうだ。
「んっぐ、ライオだ、改めてよろしくアスランくん」
「どうして僕の名前を」
「なぁにちょっと警吏の資料を拝見しただけさ、アスラン=ワイアード、ソンデム地方の山奥で父のヨアキムとともに暮らしていたが半年前の父の他界を機にここ王都に上京、だったかな?」
「ええ、つい数日前にやっとたどり着いたところです」
「そいつはご苦労だったね、おや目的地が見えてきたね」
ライオが顎で示す先にあったのは、活気がありきらびやかな王都の中でもとびきり豪奢で絢爛な象徴、スワルガ王国王宮だった。
「…へっ?」
ようやく名前判明ですね
あとほぼタイトル詐欺ですね(苦笑)