惨状
なんなんだこれは。おかしい、ドウシテコウナッタ。
僕はただ買い物をしにきただけなのに。
ーー眼前には地獄が広がっていた。 およそ人間一人分程の肉が転がっている。行き場を失った血液は逃げるように宿主の体を這い降り、かつて頭蓋があった場所には静寂だけが残されていた。
路地裏の暗がりは恐怖心を煽り、鼻腔をすり抜ける死の匂いは精神を汚染する。
だ、誰か、早く呼ばないと。
路地裏を抜け大通りに出る。 誰かに助けを求めようと手を伸ばした瞬間、気づく。
・・・自らの手から滴るありえないほどの鮮血に。
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〜聴取室〜
「何も知らないわけないだろう‼︎血まみれで通りをふらついていてなにもなかったわけがない!」
白い制服に身を包んだ男が唾を飛ばす。 相当イライラしているようだ。
顔は真っ赤に紅潮し、こめかみには青筋が浮いている。
一方で椅子に座る美男子の方は、顔が青ざめ引きつっている。
「本当にわからないんです。気がついたらあそこに立ってて・・・」
「ほう、正義官に嘘をつくとはいい度胸だ。知らないなら教えてやる。王国勅書第5条2項 『正義官は自らの良心に従い、犯罪者及びそうおもわしき者をを罰し更生させる権限を有する』だ。なんなら今ここで裁いてやろうか⁉︎」
あまりの剣幕に少年がひぃと情けない声を出す。
そのままの勢いで男が少年の顔をなぐりつけようとした瞬間、聴取室の簡素なドアが勢いよく開く。
「嘘は良くないねぇ、おにーさん。」
…入ってきたのは金髪の美丈夫だった。