1-7
異世界に召喚されスラ子と出会い数日がたった。
お爺さんに色々教えてもらいながら家事手伝い。
あ、ご飯はスラ子が加わったことで土+水に。
なんだろう?おままごとでもしてるのかな?
でもこれって現実なんですよね。
ただ不思議と食事を取らなくても平気なようだ。
食欲はあるが食べなくても平気というか。
なんだか不思議な感じである。
そんなのんびりとした日々をすごしていると。
「ちょっと!お爺様!!!
これは一体どういうことですか!?」
お嬢の怒声が聞こえてくる。
覗いてみるとお爺さんが床に座らされ、
その前にはお嬢が立っている。
「それはの?ほら色々と準備があるじゃろ?」
「・・・」
「宿の手配をしたり、野党討伐の依頼をだしたり、
道中のアホ貴族どもを押さえ込んだり。」
「・・・」
「いや!ホントなんじゃて!
別に隠してたわけじゃないんじゃて!」
「・・・」
「お願いじゃ!リサや!しゃべっておくれ!?」
お嬢の無言の抗議がお爺さんをじわじわと
苦しめているご様子。
そんなさなか、2人が私に気がつく。
「お!そうじゃ。カ二太郎にもまだ色々と
教えなければならんからな。」
「そんなのもういいわよ!もう私は行きます!」
「い、いやじゃ!まだ日にちはあるじゃろ?!」
「いや!私は早くお兄様に会いたいの!」
「っく!やはり弟子なぞ取るんではなかったの!」
「カ二太郎!出かけるわよ!」
お?お出かけですか?
この塔周辺からまったく出ていなかったので
ちょっとわくわくする。
「り、リサが行くならわしも行くからな!」
「お爺様はここはから離れられないでしょ!」
「いやじゃ!絶対ついてゆくからの!」
何だろう?おじいさんの駄々のこね方がすごい。
そうして我いざ行かんとお爺さんが
立ち上がろうとした瞬間。
(ドン!)
素早い正拳突きがおじいさんのみぞおちに決まる。
崩れ落ちるお爺さん。
そして手馴れたようにお爺さんを縛り上げるお嬢。
!!!
ちょ!?お嬢!?
な、何してるの!?
こちらの驚きは気にも留めず、
お嬢はどうやら旅支度を整えているようだ。
ってかお爺さん死んでないよな?
おじいさんの元に駆け寄ると
すぐそばに手紙が落ちている。
あれ?これってもしかして
スラ子と会った日に届いていたあの手紙かな?
簡単な字はもう習っていたので
内容はなんとなくわかる。
固有名詞はわからないが『準備が出来た。』、
みたいな内容のようだ。
こうして私は突如として旅に出ることになる。
旅の目的はお嬢の愚痴から、
お嬢の入学予定の魔法学校へ向か事らしい。
さっきの手紙は受け入れ準備についての事だった。
「まったく信じられないわ!
馬鹿みたいに強固な秘匿術式編んでると思ったら、
手紙隠すためだったなんて!」
それを皮切りにお爺さんの孫大好き行動が語られる
何でもはじめてのダンジョン攻略の際は、
ボス部屋までの雑魚敵を一掃し
ボス自体に生きているのが不思議なほどの
弱体化魔法とダメージを与えていたり。
お嬢に言い寄ってきた貴族の男を
秘密裏に暗殺しようとしたり。
はたまた国政にすらお嬢に対するピンポイントな
政策をごり押しで通そうとしたこともあるそうだ。
普通に接する分には人当たりの良いお爺さんだが、
なるほど、それはこんなところに飛ばされますわ。
「まったく、運よく気がつかなきゃ数ヶ月は
隠されてたわよ。」
そ、そこまで隠すの?
「いい?カ二太郎?魔法使いってのは強くなれば
なるほどまともな奴なんていなくなるの?
だからカ二太郎も気をつけなきゃ駄目だからね?」
おう。何だろう?笑いがとりたいのかな?
でもまぁそこには突っ込まない。
はい、気をつけます。
そんなこんなでまずは最初の町へ向け
出発するのでした。