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(ッカーーン!ッカーーン!)
けたたましい金属音が響き渡る。
あの音は私が宿殻空間にいる際に
お嬢が呼び出せるように入り口にかけた
おたまとフライパンをたたく音。
寝ぼけ眼で宿殻から顔を出す。
日の出が近いのだろう、
うっすらと空が明るくなってきている。
「遅い!緊張感ないわよ!」
うぅ、おっしゃる通りです。
「今しがたライオネル陛下からの伝令で
撤退準備の合図が来てるの。
次の伝令次第ではすぐにここを発つわよ。」
まだ、続いていたんだ。
でも、なんで急に撤退なんて?
覚めていない頭を使いつつ
フラフラしている私をよそに
お嬢は準備を終えてマー君達の元へ向かう。
私はひとまず朝食用に準備していた
調理台やらの撤収作業を行うことにする。
今朝は豪華にバイキングでもと
色々用意してたのに・・・。
しかし作業をしつつ感じるこの体のダルさ。
昨日はちゃんと寝たは・・・。
あれ?
記憶がぼやけている部分がある。
なんかすごい怖い思いをしたような・・・。
スラ子?いる?
私が呼ぶと宿殻の中からスラ子が出てくる。
スラ子。昨日の夜何があったんだっけ?
「・・・。」
あれ?どうして黙ってるの?
スラ子?スラ子さーん?
「・・・。」
え?え?
いつものスラ子じゃない。
私の問いかけに反応してくれない。
一体どうしてしまったんだろう?
スラ子を観察するとどうやらある方向を
凝視している。
「な”-。」
す、スラ子が唸っている?
しばらくするとスラ子の視線の先から獣人たちが
ちらほらとやってくる。
どうやらみんな手負いのようだ。
!!!
突如として動き出すスラ子。
宿殻に戻ると何かの箱を持ち出し
駆け出してゆく。
え!?
こんな時にどこ行くの!!!?
一直線に獣人たちがやってくる方向に走ってゆく。
一体どうしたというのだろうか?
あんなスラ子今まで見たことがない。
言いしれぬ不安を抱えながらもスラ子を追う。
(ブォーーー!ブォーーーー!)
後ろから何度も角笛が吹き鳴らされる。
・・・あれ?
これってもしかして撤退の合図?
やばい急いで連れ戻さなきゃ!!!
スラ子を見つけたのは撤退する獣人たちの
一団の中だった。
スラ子を捕まえようとする獣人たち。
そしてそれを華麗に回避しつつ、
横になって動けないでいるゴウゴで
みかんを押しつぶすスラ子。
「や、やめ・・・!」
必死にスラ子を払いのけようとするゴウゴ、
それに対してスラ子は難なく腕を潜り抜け、
ゴウゴの目玉にみかんを押し当て果汁を絞り出す。
!!!
声にならない悲鳴を上げるゴウゴ。
何これ・・・。
周りの獣人たちもゴウゴを助けようとするが
全然スラ子を捕まえることができないでいる。
ってかスラ子!!!
ダメでしょ!!!
「な”!!!」
私に気が付いた私に駆け寄ってくる。
「な”ー!な”!!!」
かなりご立腹のスラ子。
でも食べ物を粗末にしちゃダメでしょ?
「・・・な?」
使うのは皮だけ!わかった?
「な!!!」
再び箱とゴウゴに近づいたスラ子は
すかさずみかんの皮と実を分離し、
みかんの皮をゴウゴの口に詰めてゆく。
最初は必死に吐き出そうとするゴウゴだったが
圧倒的なスピードの前には抵抗もむなしく、
今はもう泡をはいて痙攣している。
・・・南無。
そして、ひとまずこのむき終わったみかんは
オレンジジュースに・・・。
と思ったその時である。
マー君が現れた。
「ここにいたんですね!リサ姐が探してますよ?」
あー、そういえばお嬢のところに戻らないと。
スラ子いくよー。
スラ子に呼びかける。
だが今度はマー君の元に駆け寄るスラ子。
「な!なな!!!な、な。な!」
「そうですか・・・。でも彼がしなくても
いずれ同じ結果にはなるものです。」
「な?な?」
「大丈夫、もう覚悟は出来ています。」
「なー・・・。」
・・・何話してるの?
私を放置してシリアスに浸る二人?
元気なく宿殻の中に戻るスラ子。
「カニ太郎君。私はこのまま殿を務めます。」
えぇ!?マー君が?
なんで!?
今やマー君って魔国の王様なんじゃないの?
王様自ら殿って何なの?
「不思議に思われるのも当然ですが、
おそらくこれが一番被害が少ないんです。」
そう寂しげに語るマー君。
戦力的にそういうものなのか
複雑な事情があるのか私にはわからない。
ただ、せっかく出会えたお嬢の友人を危険から
守ってあげることもできない。
また自分の力のなさを実感してしまう。
一時無言の時が流れる。
聞こえてくるのはゴウゴのうめき声だけ・・・。
しんみりした空気の中、
スラ子が宿殻の中から何かを持って出てきた。
「な!なな?」
そっと差し出すのはこの前宿殻内で
勇者ごっこをしていた時のおもちゃの剣だ。
「っふっふ。お守りかい?
ありがとう・・・。大事にするよ。」
(トゥールールーーー)
受け渡しと同時に鳴るおもちゃの剣。
雰囲気ぶち壊しである。
マー君もかなり意表を突かれたようで
一瞬固まっていたが、ふと我に返り。
「もうここも危ない。早くリサ姐のところへ!」
と、私たちを急かした。
そう、その時である。
全体改稿に向けてこつこつと設定つくりがんばってまーす。




