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異世界ヤドカリ物語  作者: 村吏
60/161

6-4

閲覧ありがとうございます。


私たちはマー君の案内で獣人たちの仮拠点に

たどり着いていた。


戦時中の最前線基地。


敷地内は張り詰めた空気でとても息苦しい。



・・・ということはなかった。



丸太で作られた塀をくぐり抜けた先には

遊牧民が使うようなテントと広々とした空き地。


そしてその空き地の中を

体中傷だらけの筋肉ムキムキの獣人たちが

はしゃぎながらボールを追いかけている。


ちょっと思ってたのと違う・・・。


ゴウゴみたいに目があったら襲い掛かってくるような

荒々しい連中と状況を想像していた。


お嬢もこの光景には拍子抜けのご様子。


マー君いわく。



「平時の彼らはこんな感じだよ?」



とのこと。


いや、今は平時じゃない気が。


まぁ、とにかく話の通じない相手ということは

なさそうなで良かった。


むしろ腹を割って話せそうな体育系の

さわやかさを感じる。


こちらに気づいた木陰で休んでいる

獣人たちも手を振ってくれているし。



よし!



お近づきの印に私からのプレゼントだ!!!


私は宿殻空間からラグビーボールを取り出す。


なぜあるのかは知らない。


これ以外にも多種あるのだがひとまず

これが手に当たったので持ってきた。


マー君とお嬢は私の取り出したラグビーボールを

不思議そうに見ている。



っふっふっふ。


私の華麗なるカニテックを見るがいい。


サイドスローより発射される螺旋軌道のボールが

手を振ってくれた獣人たちのもとに飛んでゆく。


飛んでくるボールを認識した獣人の一人が

ボールを取ろうと立ち上がる。



・・・あ。



だがそのときの私は失念していた。


彼らの遊んでいるボールが私の知っている

ボールの類と違いたいして跳ねないことに。


ラグビーボールの形状と色も合わさって

きっと取ろうとした獣人は地面に突き刺さると

思っていたのだろう。


彼の意表を突きラグビーボールが地面と接した瞬間、

縦方向への急速な回転運動を得て

キャッチしようとした獣人の顔面へ当たる。


あぁ・・・!


さらに木陰で休んでいた何人かの獣人の

目の前や体に当たりながらやっとその運動を止める。



・・・。



空気が変わった。


マー君の登場シーンではないが

今日はよく空気が変わる。



みんなラグビーボールをガン見している。


そして誰も動かなくなった。



「これはまずいかもしれない・・・。」



マー君?


え?マー君何言ってるの?


ただのボールだよ?



そんなことをふと思った瞬間、

一番近くにいた獣人がボールにとびかかる。


すかさずそれに反応した獣人が

とびかかった獣人の側面に飛び蹴りを決め、

その勢いでボールにとびかかるという

アクロバティックなキャッチ!


だがそれも一瞬。


ボールを掴んだ獣人にみぞおちを決め

ボール奪い走りゆく獣人・・・。


そんなこんなであたり一帯の獣人たちを巻き込んだ

壮絶なボールの奪い合いが始まった。



これが・・・戦場・・・。



っいた!いたたたた!!!


お嬢!ごめんなさい!!!


わざとじゃ、わざとじゃないんです!


ちょっと仲良くしようとしただけなんです。



「もう!なにやってんのよ!!!」



だが、お叱りはごもっとも。


あれだけほのぼのとした空気がまさか

血みどろの仁義なき戦いに発展するとは。



今ボールを掴んだ獣人なんて顎に膝蹴りを食らい

空中一回転で地面に落ちていった。



ボールの取り合いであんなになるの?


あんなのどうやって止めるんだ?


困り果てている中、

どこからかすさまじい雄叫びがあたりに響きわたる。



「良かった。彼が来てくれた。」



そういうマー君の視線の先には

いかにもな赤いマントを羽織った

ライオンの獣人が現れた。


それを目にした獣人たちは彼に向けて膝をつく。



「彼が獣王『ライオネル・ガ・ゴルバル』だよ。」


次回は説明メイン。

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