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ところ変わり、私が召喚された部屋へ。
いきなりヤドカリとして召喚され、
窓から空中ダイブを決めた上、左手をやられた私。
そう、今の状況はとんでもないことになっている。
その上このあと使い魔契約を行うらしい。
これは言うなれば悪徳商法の類では?
突然拉致され痛めつけられた上に
無理やり契約をさせられる。
要点をまとめるとまさしくそれだ。
これは危ない、実に危ない。
かといってここから逃げ出したところで
そこが安全である保障はない。
とにかく今は死なないように善処しよう。
そんなことを考えていると
お爺さんとお嬢が入ってくる。
「待たせいてすまなかったねヤドカリ君。」
「さっきは悪かったわね。」
笑顔のお爺さんとは対象的に私を窓から射出した
お嬢はどうやら不服のご様子。
そう、目がとても怖いです。
あの目は謝っている人の目では決してない。
「さて、これから使い魔契約を行うにあたり
ヤドカリ君には名前を付けねばな。
リサや、名前は決めたかね?」
「・・・名前?私が決めるの?」
「そうじゃよ。
自分で付ける名じゃ。愛着もわこうて。」
名前か・・・。
確かに今の私は自分の名前さえわからない始末。
そこは大事だよね?
ってかちょっとわくわくしてしまう。
2人の名前からして英語圏の名前かな?
カニ・・・クラブ・・・クライブ的な名前か?
いやぁー照れるな。
大和魂に英名は照れちゃうなぁ。
そんな期待感を裏切って出てきた名前は。
「じゃあ『カニ』で。」
・・・え?え?愛着放棄ですか?
「り、リサや。
さすがにそれはかわいそうではないか?」
さすがはお爺様!そうだよね?
そういう思いやりっても大事だよね!
「じゃあ『カニ太郎』で。」
太郎!?太郎!!?太郎っておま。
その名前の存在するの?
確かに和名がしっくりくる感じはあるけども!
ここファンタジーな世界じゃないの?
「う、うむ。もう一ひねり!
もう一ひねり考えてみようか!」
さすおじ!さすがお爺様!さすがにね?
名前呼ぶときに『カニ太郎』ではね。
「じゃあ『キャン太郎』。」
「よし!今日から君は『カニ太郎』じゃ。」
まさかの方向に頭をひねったお嬢に対して
すばやい切り替えしのお爺様。
ありがとう。ありがとうお爺様。
感謝の言葉しか出てこない。
ってかキャン?キャンサーってこと?あるの蟹座?
「名前も決まったことじゃし次はこのプレートに
名前を書き込み手を載せるのじゃ。」
お嬢がお爺さんから渡されたプレートに
なにやら文字を書き込んでゆく。
どうやら英語ではないらしい。
少なくとも私は見たことのない文字だ。
そしてそのプレートの上に無事な右手をのせる。
「よしよし。ではリサや、
カ二太郎の手に触れながら魔力を流すのじゃ。」
私の手の上に乗せられたお嬢の手から
なにやら不思議な力を感じる。
そうして手の下のプレートに熱がこもる。
(ジジジジジジジューーーーー)
・・・ッア゛!
アッツ!!!
熱いって!!!焼けてる!ヤケテル!!!
ってかコワ!
何で笑ってるの!?
手を押さえつけているお嬢の満面の笑みが!!!
左手が無事なら跳ね除けていただろうが
先ほどのお爺さんの一撃により動かず。
ひたすら心身の恐怖にたえるしかなかった。
・・・・・・
っえっぐ。
泣いてないし。
私別に泣いてないし。
初めて見る焼印に感動してるだけだし。
「さぁ、これで使い魔契約は完了じゃ。
このプレートはカ二太郎が持つんじゃぞ?
右手の印と合わせて使い魔である証となるんじゃ。
無くすと冒険者や兵士に狩られるからの」
なるほど。
あれはどうやっても必要な処置なのか。
あのお嬢の笑顔以外納得しよう。
その後、お爺さんから今後の説明を受けた。
何でもお嬢は魔法の学校に行くため遠くの国へ
行かなければならないらしい。
ただお爺さんはここから離れられない。
そこで使い魔召喚したら私が出てきたらしい。
知り合いから貴重な召喚媒体を譲り受け、
頑張って召喚したのに上位互換の危険な魔獣がいる
という理由で魔獣として分類分けされている、
『岩ヤドカリ』こと私が出てきたらしい。
遺憾である。
突如呼び出されてそんな不満を言われても困る。
まぁ落ち込んだところでしょうがない。
なるようになるしかないからね。
ポジティブ!ポジティブに生きるんだ私!!!
痛いのと怖いのを除けば人間だったときには
経験できないであろう貴重な経験だ。
そんなこんなでくじけない私であった。




