短編小説(春)
今日は卒業の日、私は三年間お世話になったこの学校を去る。思えば入学した頃、第一志望の高校に落ちて滑り止めのこの学校に入ることを恥ずかしく思っていた。正直、偏差値が低いから見下していたんだと思う。あまり周りの人とも打ち解けなかった。次第に学校をサボりがちになっていった。そんな最低な私をいつも懲りずに気にかけてくれたのが担任の高木先生。最初はどうせ自分の評価を落とされるのが嫌でこんなことを言ってるんだろうと思っていた。でもあの日、高校2年の春かな、両親が離婚して私は人生に絶望して、全部どうでも良くなって、お金欲しさに同級生や先輩とえろいことをしようとしたら、高木先生に見つかって、思い切り頬っぺたを殴られた。しかも他の生徒がいる前でだよ。もしそいつらが保護者に言ってPTAとか呼ばれて辞めさせられたらどうしてたんだよ。その日以来私は高木先生を少しずつ信頼して、学校に行くようになって、高校3年の春、夢が出来た。あまり勉強しなかった私は進路を地元の就職に決めた。
卒業式も終わり、私は屋上に来ていた。「勝手に入ったらダメなんだぞー」後ろから聞こえた頼りなさそうな声を聞いて振り替える。「いいじゃないですか!卒業サービスで許してください!」私は緊張を隠すよう精一杯元気に答える。「とりあえず卒業おめでとう。思えばお前とは色々あったな」「そうですねー、例えば私を殴ったりとか」「いや、あれは、あの後、なんでも言うことを聞くって言って、それで終わったじゃないか!」「冗談ですよ。可愛いですね、先生」「お前と言うやつは!」「あーあー、怒らないでくださーい!」私と先生は互いに笑いあった。「私、先生に言いたいことがあります」私は震える手を握りしめながら勇気を出した。「私、先生が好きです!結婚してください!」やっぱり少し不安で目を瞑ってしまった。「ありがとう。俺も好きだよ」私の夢の第一歩が叶った瞬間の少しまだ寒い春の日でした。