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失って初めて気づいた。
ずっと一緒だった。
誰よりも大切で、守りたくて、傍にいるのが当たり前だった。
俺は彼女が好きだった。
――でも、これで彼女の元に行ける。
私は彼が好きだった。
ずっと、小さいころから。
でもとうとう最後まで気づいてもらえなかったね。
嫌だな、離れたくないな。
でも、もう遅い。
大切にしてくれてありがとう。
私の事を一番に想ってくれて、助けてくれて、ありがとう。
体弱いくせに、いつも無理して。
でも、そんなあなたは間違いなく私の"勇者"だったよ。
目の前に広がる信じがたい光景に俺は平然としていた。
いや、どちらかというとどうでもよかった。
真っ白な空間、目の前に神様と名乗る少女がいる。
「驚かないんだね」
彼女は不思議そうにそう言った。
「俺、死んだんだろ?」
最後に覚えてるのはビルから落ちる時に見えた逆さまの夜景だ。
「そうね、あなたの肉体は今ビルの下で無残な姿になっているわ」
それはそうだろう、なんせ五十階建ての高層ビルの屋上から落ちたんだから。
「でもあなたすごいわね、あの状態から飛び降りようとした女性を助けるなんて」
気付いた時には体が動いてた。
自殺しようとしていた女性を突き飛ばしその反動で落ちたのだ。
今考えると無謀だったと思う、落ちる事はわかっていた。
いや、自分が落ちる事を少し期待してたのかもしれない。
俺は大切な幼馴染を事故で失った。
付き合っていたわけじゃない。
でも、ずっと一緒だった。
失って初めて気づいた。
俺は彼女が好きだったんだって。
「それで、どうするの?」
俺が考え事をしてる間に今後について説明していた神様はどうやら一通り説明し終わったらしく、俺に聞いてきた。
どうやら俺の魂はとある世界に見込まれたらしく、神の導きさえあればその世界に生まれた体に魂を宿す事ができるらしい。
ようするに、転生だ。
・・・それも、異世界に。
「望まれているのなら期待に応えるさ」
彼女はニコリと笑みを浮かべる。
「そう、まぁあなたならそういうと思ってたわ」
俺はこういう性格なのである。
生前はよくおひとよし野郎と言われていた。
自分の事より他人の事を考える。
そんな風に育ってきた。
「それで、転生するにあたって前世ポイントってのを来世の能力値に割り振ってもらわないといけないの、ちなみに来世の能力値は前世の能力値に依存するからね」
運動出来る奴は来世でも運動が出来て、勉強出来る奴は来世でも頭が良くなるって事か。
「まぁ、これから能力を振ってもらうんだけど、あなた達の世界で馴染みのある形でやってもらうわ」
そう言うと俺の目の前に画面が表示される。
ゲームみたいだな。
なるほど、これは確かに馴染みがある。
「前世ポイントは右上ね・・・ここの・・・っ!?」
神様は画面に表示された項目について俺の横で指を差し説明するが、前世ポイントを見た瞬間驚いた表情を見せる。
「なんなのこの数値は・・・」
「どうしたんだ?」
もしかして少ないのか?
いやこの数値はどう見ても多いだろう。
「多すぎるわ・・・」
どうやら後者のようだ。
神様は混乱しているのかブツブツと何かを呟いている。
「まぁ、これがあなたの前世ポイントって事ね、存分に振り分けなさい!!!っていうかいっその事全部限界まで振れるわよっ!!!」
そう言って神と名乗った少女はちょっと席を外すといって消えてしまった。
なんか最後らへん投げやりになってないか?
「まぁいいか・・・さてと」
俺は画面と向き合い、ステ振りというものを始めた。
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前世ポイント : 999999P
能力値
身体能力 : Lv1
運動能力 : Lv1
魔法適性 : Lv0
魅力 : Lv2
運 : Lv1
才能 : Lv1
スキル
なし
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なるほど・・・やっぱり低いな俺の能力値・・・。
能力を振っても戻せる機能があったので色々試してみたのだが。
ステータスに関しては、Lv1からLv10まであった。
神様によるとLv5あれば天才と呼ばれる程の能力になるようだ。
上に行けば行くほどレベルを上げる際の消費ポイントが上がる。
すべてをLv10にしても底が見えない
一つの項目をLv1からLv10にするのに総合で1000かかった。
前世ポイントの平均は800程度とのことだ。
俺の前世ポイントはほんとに異常だったらしい。
スキルには色々あった。
能力値と同様Lv10が上限だ。
多すぎてめんどくさくなったので一括機能ですべてにポイントをLv10になるまで振った。
「終わった~?」
ちょうど振り終わった頃に神様が戻ってきた。
俺の前に表示された画面を覗くと「やっぱりね」といった顔をした。
「そんじゃさっそく転生してもらいましょうか?」
なんか口調適当になってね??
「くれぐれも世界壊す何て事はしないように、あなたの性格ならしないだろうけど、一つ間違えると世界飲み込む程の力はあるって事は覚えといて」
おい、それ大丈夫なのか?
そう聞こうと思ったが既に俺は光に包まれていて、徐々に意識が遠のいて行った。