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魔王と勇者

閑話のようなものです。あまり想像力を働かせずにお読みください。




 おはようございます。いえ、こんばんはでしょうか。

 とにかく、私は今起きました。そして同時に後悔しています。昨日、一人で食べるのはつまらないからと夕食を抜いたんです。いまさらですが非常に後悔してます。


 女性の皆様、訂正させてください。事を致す前にはしっかりとご飯を食べてください。生理現象で胃が出ようが、お腹がポッコリになろうが食べてください。もうね、起きたときにフラフラになる。お腹すきすぎて。

 現在朝六時。まだ外は暗い。たぶんあれから二時間くらいしかたってない。体は正直に辛い。主に下半身。あと体全体が筋肉痛みたいな感じになってる。あの時は痛さと辛さで全身に力入れてた気がする。あまり覚えてないんだけどね。夢中で。


 え? 何に夢中だったか?

 そんなの決まってるじゃない。捕らえるためよ!

 私の告白に応えたってことは、もう断る気はゼロってことよね。


 私の家の私の部屋で怪獣を捕えた。偶然だけど、顔合わせの時と同じパターン。巣穴に誘い込まれて捕獲されたことに、怪獣はいつ気付くだろうか。もちろん私が襲われたのは想定外だし、めちゃくちゃ怖かったけど。

 うん。結果オーライ。


 話は変わるけど、私の干支は卯。ウサギさんです。カリナが私をおびえたウサギだと言ったのはあながち間違っちゃいない。誕生日は一月三日。早生まれのウサギさんなんだけど、おばあちゃんから小学校の時よく言われた。私はウサギだけど、お母さんのお腹の中で過ごしたのは丸々寅の年だからお転婆になるよ、と。私はウサギの皮をかぶった虎なんだって。


 ええ。草食動物に見せかけて近づいた獲物を捕らえる虎です。日本ではウサギだったと認識してる。そしてこの世界にやってきてウサギの皮がはがれた。見た目は子供だからまんまウサギ。でも中身は寅です。


 食ってやりました、怪獣を!

 旦那様ゲットー! 夢に一歩近づいた。もちろん、好きな人と一つになれたことも本当に嬉しい。私だって一応乙女ですから。



 それにしても、アチコチ痛い。婚約者をこんな目にあわせやがって。怪獣許すまじ。ギャフン候補に、公王の次に名前を書いておこう。

 その当人はもうベッドにはいない。眠ってたであろう場所を触っても冷たくなってるので、だいぶ前に出たみたい。さすが騎士、体力自慢なだけあるね。


 しかし、私は体力がないので昼まで寝るコースだと思ってたのに目が覚めてしまった。しかもまだ暗いうちから。

 目覚める前に何かの音を聞いた気がする。なんていうんだろう。紙をすり合わせたような音だ。


 何度も言うが私は騎士じゃない。だから気配なんてものは感じることができない。でも、その時何かを感じた。背筋にゾクゾクとした悪寒が走る。お腹の底あたりにズンとした不安がある。あたりを見回すも何もない。窓の外、机、本棚、ベッド……………


 ん?


 私は寝転がったままベッドの枕もとを見つめた。たくさんあるぬいぐるみ。かわいらしいぬいぐるみに交じって、見たことのないものがいる。


 明かりのない部屋ではそれが何かわからない。目を細めてそれを子細に観察する。


 大きさは私の拳を二つ並べたくらい。黒くて平べったい。長くて細いものが二本、片方の先端部から出ている。細長い形の両端からは三本ずつトゲのついたものが計六本出ていて。


 …………

 …………

 …………


 ソレが身じろぎする。カサカサと音がした。背中は明かりもないのに妙にテカテカ光っていて、二本の細長~いものがゆっくりゆらゆらと動く。


 …………

 …………

 …………


 私は声を限りに叫んだ。叫ぶと同時にベッドから飛び出す。体が痛いとか辛いとかどうでもいい。命の危機に瀕した昨日以上の恐怖を感じた。


 黒尽くめの奴が私のベッドにいたのだ!


 部屋の扉が勢いよく開いた。同時にロドスタさんが飛び込んでくる。私の横をすり抜けて部屋に入った。次いで入ってきたバラク様に私は抱き着いて助けを求めた。


「ミナッ、何があった!?」

「く、黒い……黒い奴がおる!」

 私はバラク様の足に縋り付いて答えた。


「どこにいた」

「ベッドの上! 早くっ。早く退治して!」


 アレは人類の敵だ。生かしておいてはいけない奴だ。何が何でも退治してもらわねばならない。

 なのに、バラク様は何を思ったのか、アレがしがみついたままのシーツを私にはおらせようとした。白いシーツにしがみつく黒いもの。目を見開く。見たくないのに脳にしっかりと奴の姿が焼き付いた。


「いやっー!」


 シーツを振り払って逃げる。目の前にいたロドスタさんの後ろに隠れた。とにかく盾が欲しい。私はロドスタさんの服を握りしめた。呆然と私を見るバラク様をロドスタさんの足越しに見る。


「あー、バラク殿。たぶん、ミナお嬢様が怖がってるのは、ソレじゃないですかねえ」


 ロドスタさんが間延びした声でバラク様のシーツを指さす。いまだ黒いものがぶら下がるシーツをバラク様がしげしげと見つめ、奴を見つけて指で弾いた。


 なんで弾くのよ!

 そんな奴はっておしまいなさい!


 弾かれた黒い奴が床につく寸前に羽を広げた。ピッと音がしそうなくらい立派な黒い羽を広げ、こちらに向かって飛んでくる。その姿はまさしく魔王。

 私は悲鳴を上げてロドスタさんを盾にして前面に押し出す。


 羽音が気持ち悪い! 姿が気持ち悪い! ギザギザの足が気持ち悪い! 存在自体が気持ち悪い!


 その黒い奴を、ロドスタさんが素手で叩き落した。

 力なく床に落ちる黒い奴。


 私はごくりとつばを飲み込む。

 凄い。アレを素手で退治できるなんて。魔王を一撃で倒した。ロドスタさんは奴の触角を持って窓から家の外に投げ捨てた。


 その姿に頭の中でファンファーレが流れる。勇者だわ。彼は勇者だ。魔王を一撃で倒せるカッコイイ勇者。


「凄い! ロドスタさん勇者ですね。アレを退治できるなんて。凄い、素敵です。勇者様、カッコいい! 惚れそう。大好き」


 もう、よいしょしまくった。アレを退治できるのは勇者なのだ。そして、ロドスタさんは私にとって間違いなく勇者だった。



 私の言葉に落ち込んだような顔をしたバラク様とお腹を抱えて笑うロドスタさん。


 私はそこで気付く。

「なんで、ここにロドスタさんがいるんです?」




 私の問いかけにバラク様が大きなため息を吐いた。










はい。わが家でも出ましたゴキちゃんの話です。

アレは私にとって魔王であり人類の敵です。絶滅してくれるのを願わずにはいられません。というか、家に住むなら金を出せっての!


さて、干支の話ですが、私もウサギさんなんです。で早生まれ。なので母親にずっとこういわれて育ってきました。私も自分で虎気質だと思ってます。寅年の女性は男を食っちゃうから婚期が遅れるとも言われていましたねぇ。

ミナにはぴったりな設定かと思います。

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