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IFストーリー ~チートが日本に帰ってきた~ 2

注意事項の詳細は前回と同じ。

短いです。


LSは、lucky sukbe です。

 姉の素敵な勘違いをどうにかこうにか正し(三人の必死の形相に亜季が押し切られた)、今は四人で話し合いの席が設けられていた。


「ふーん。異世界、ねえ……」


 話を聞いた亜季が額に手を当てている。

 こんなリアクションにもなるだろう。荒唐無稽だと、話している太一と奏当人がそう思っているのだから。

 しかし、亜季からは否定の言葉が出てこない。


「ねーちゃん」

「……何?」

「信じるのか? こんな与太話」

「そうねえ……」


 亜季は顔を上げ、まず太一を、次に奏を見た。


「太一、あんただけなら精神科を探さなきゃって思うところだけど、奏ちゃんも同じこと言ってるしねえ」

「まてこら」

「そりゃ、あんたと奏ちゃんじゃあ信頼度も違うってわけよ」


 更なる反論しようとして失敗し、口をモゴモゴさせる太一。まあ、気持ちは分かる。奏は誠実。彼女の言葉には説得力がある。

 それに……と言って、亜季はミューラに目を向けた。

 視線を向けられたミューラだが、気付いていない。現代日本の中流階級……つまり平均的な家庭である西村家のリビングだが、ミューラにとってはオーバーテクノロジーなものしか存在しない。

 物珍しげに目をキラキラさせている。一応椅子に座ってはいるものの身体はうずうずしており、知的好奇心を必死に抑えているのだ。


「ねえ、ミューラさん」

「……え、なに?」


 名前を呼ばれて少ししてから気付いて居住まいを正す。部屋の中を眺めるのに夢中だったらしい。

 この日本で何回彼女の琴線に触れることになるだろうか。今からこの調子では想像もつかない。


「ミューラさん、あなた、エルフ、ってやつよね?」

「え? ええ、あたしはエルフだけれど」


 お前は何を言っているんだ? と突っ込まれても仕方ないセリフ臆面もなく口にするミューラ。

 亜季は思わず苦笑した。


「あんたたちの証言、その服装、エルフ。信じざるをえないじゃない」


 応じて、太一と奏も苦笑する。異世界と信じてくれたなら、と、太一は一つ見せることにした。


「ところでねーちゃん。この剣を見てくれ。こいつをどう思う?」

「凄く……綺麗です……」


 おもむろに太一が抜いた剣を見て、本音の感想を述べつつ振られたネタにはきっちり返す姉である。

 姉弟揃って某巨大掲示板のまとめサイト巡りや、ニコニコ出来る動画サイトを愛用しているのだ。


「綺麗だろ……ミスリルなんだぜ、これ……」

「へえー……って、ちょ、待って、え、ミスリル?」


 フリーズ。

 強制シャットダウン。

 再起動。

 一連の流れを終えて、ファンタジーだわー、と背もたれに身体を預けて呻く亜季。


「もちろん本物だぜ?」


 と言いながら、缶用のダストボックスに入っていた空のアルミ缶を一つ手に取り、剣の刃を缶に当てる。姉がこちらを注視しているのを確認し、太一はゆっくりと剣を動かす。

 包丁が豆腐を切るよりも遥かに滑らかに、剣が缶を引き裂いていく。

 薄いアルミ缶。異世界の高級装備品であるミスリルの剣の前では、その存在はあってないに等しい。剣が通過し、缶の下半分がからんと落ちた。

 剣を鞘に収め、切った缶を亜季に手渡す。亜季は促されるまま受け取った。

 まるで最初からそれぞれ独立した物体だったかのように、切ったことを全く感じさせない切り口だった。


「な? すげえだろ?」


 流石の現代科学でも、魔法金属であるミスリルは再現できない。

 この剣はどうやら本物らしい。

 パチン、と鞘に収まる音で、ハッとした。


「太一……」

「まあ、そりゃ驚くのも」

「それちょうだい」

「無理はない……って無理だっ!?」


 ちょうだいとはなんだちょうだいとは。


「だってそれがあればカボチャ切るのも簡単だし? ほら、こんなに簡単に切れちゃう! みたいな?」

「みたいな? じゃねーよ! キッチンごと簡単に切れちまうって!」

「しょうがないな。庭の植木の枝切るのに使うよ」

「対象の問題ちゃうわ!」

「ワガママだなぁ」

「どっちが!」


 始まった毎度のやり取り。

 奏は目を軽く閉じ、楚楚とした動作でお茶を飲む。ず……という緑茶に良く似合う音が控えめになった。


「えっと、ほっといていいの?」

「いいの。そのうち気が済んで収まるから」


 驚くべきは、太一が突っ込みに回っていることか。

 目を白黒させるミューラに対して、奏は慣れたもので我関せず。構えば最後、二人の勢いに引きずられる。


「ふう……」

「はあー……」


 言い合ってスッキリしたのか賢者な時間の姉と、髪が乱れて疲れた様子の弟。姉は強し、である。


「やっぱアンタからかいがいあるわー」

「この姉……いつかぎゃふんと言わせてやる……」

「ぎゃふん。ほら、言ってあげたわよ?」

「くっ……! 盛ってるくせに! 養殖のくせに!」

「くっ……!」


 そう、この姉、貧乳(ステータス@希少価値)である。

 ミューラがお友だちになれそうだ、という目で亜季を見ている。

 再び太一と亜季が騒々しくなった。


「ねえ……ほっておいていいの?」

「いいの。太一と亜季さんは仲が良いんだから」

「仲良くねえよ(ないわ)!」


 シンクロ。

 太一と亜季は同時に奏を見て、同時に声を上げ、再び同時に向き合った。


「ね?」

「そうみたいね」


 太一と亜季は顔を反対に背けた。

 もちろん、同じタイミングで。


それはさておき。


「ねえ、太一」

「ん?」

「どのくらい、こっちにいられるの?」


 亜季の思考は、ハナから「太一たちは一時的な里帰り」というものだ。幾らなんでも、エルフのミューラを恒久的に日本に連れ帰ったりはしないだろうと考えてのことだ。


「んー。三日後の日付変更までかな」

「何よ、すぐじゃない」


 若干咎めるようなものが混じるその声に、太一は少し苦そうに笑う。

 彼としても、半年分のあれやこれやを埋めるには、たったの三日という思いが抜けない。


「まあ、別の次元から来てるからな。たった三日でも、戻って来れたことそのものが、奇蹟みたいなもんだし」

「それもそうよね」


 姉の不満はすぐに引っ込んだ。彼女が一番年長であり、年下相手に物分かりの悪い真似はしたくないのだった。

 それだけなら、頼れる姉なのだが。


「じゃあ、今すぐに始めなきゃ」


 ふいんき(何故か変換できない)がガラリと変わり、よく言えば愉しげな、悪く言うと何かを含んでいそうな笑みを浮かべる。

 ネタは逃さない女であると、太一は思い出した。


「せっかくだから、ミューラちゃんを案内してあげなさいよ」


 敬称が「さん」から「ちゃん」に変わっている。大人びて見えてもまだ一四歳、亜季からすれば妹のようなものだ。


「いやまあ、そのつもりだったけどさ」


 話の流れがアルティアかで何をしてきた、から日本で何をするか、に変わったことで、ミューラの目が輝く。

 現代日本の科学という名の『魔術』に魅入られていた剣と魔術の世界出身のエルフさんであるため、無理もない反応だ。


「さしあたっては、着替える必要があるわね」


 そりゃそうだ、という顔の太一と奏、キョトンとするミューラ。彼女の今の格好は普通であるため、日本ではコスプレに値するとは知らない。夏及び冬に開催される大きなサイトのお祭りあたりでもなければ、浮きまくることこの上ない。


「ほら、ミューラちゃん。あたしの服貸してあげるから」

「え、でも……」


 思わず太一と奏を見る。二人が頷いたのを見て、彼らと初めて出会ったときの服装を思い出す。そう、明らかにアルティアとは服の質もテイストも違ったのだ。ミューラは大人しくついていくことにした。

 二人の背中を目で追って、太一と奏も顔を見合わせる。

 太一も立ち上がりながら言う。


「俺たちも着替えるか。とりあえず奏もねーちゃんについていけよ。どうせお前の部屋行くまでだし」

「えっと、うん。あ……」

「ん?」

「あー、えっと、それなんだけど……」


 歯切れの悪い奏。


「ん? どした?」


 一瞬だけ考える素振りを見せて、奏は太一を見た。


「えっと。折角の機会だから、男物の服、着てみたいんだけど……」

「おお? まあ俺のでもいいってんなら、別にいいけど……」


 奏は背が高く凛とした少女であるため、ボーイッシュな格好も良く似合う。太一の服でも選べば良く似合うだろう。

 なお、包み隠した本音として、太一の服だから、とは言えない奏さん。

 余談。

 着替えながらタンスの中にしまってあった太一のぱんつを発見、じっくり数十秒凝視してしまったのは、奏は語らず墓まで持っていってしまったため、太一も死ぬまで知ることはないのだった。

次回は、

車に乗ったり

デパートに行ったり

制服着て学校行ったり

シルフィが現れたり

剣道場で太一とミューラが稽古したり

渋谷辺りに行ったり

お約束的に絡まれたり

って感じです。(変更の可能性あり)


ていうか亜季が地味にいいキャラしている……

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