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IFストーリー ~チートが日本に帰ってきた~ 1

◇書籍化記念◇


この話は作者による『異世界チート魔術師』の二次創作です。


以下の点にご注意ください。

・この物語は本編とは一切関係ありません。

・作者やりたい放題です。筆が赴くままに書いています。

・文章のクオリティにはあまり力を割いていません。

・ところどころキャラ崩壊しています。

・ネットのネタを使います。

・寒いギャグがあります。

・不快になった場合はその場で読むのをお止めください。

・最後まで読んだ後、ネタをネタと受け止められなかったと見受けられる苦情には一切関知しません。


 ドドドドドド!!


「ん?」

「何?」

「足音?」


 採取の依頼を受けて草原を歩く太一、奏、ミューラの三人に、音が届く。


「なんだ? って、げえっ!?」


 不思議に思って振り返った太一は、目の前の光景を見て驚愕に顔を染めた。

 巨大な、そう、高さ二〇メートルはある人形の魔物だった。

 それは一瞬の出来事。迫り来る右足が、ちっぽけな人間三人を蹴り飛ばした。


「うわっ!?」

「きゃあ!?」

「あうっ!?」


 視界が暗転する。

 痛みすら覚える暇なく、身体と共に意識が吹き飛んだのだった。



「ん、ううん……」

「気が付いたかの?」


 幼い女の子の声が聞こえて、太一は目を覚ました。


「ここは………………どこだ?」


 見渡す限り、真っ白な空間。天と地の境目もない。地面についた手は、確かに床であることが分かるのに、それが何なのか触覚では判断がつかない。これは恐ろしい何かの片鱗のような気がする。


「何を言ってるのかわからねーと思うが(ry」

「本当に何を言っておるのじゃお主」


 横合いから声が聞こえる。

 そちらに顔を向けると、目に入ってきたのは小さいシルエット。

 年の頃は六歳とかそんな感じだろう。それでこの年寄りみたいな話し方は。


「これが噂の……」


 ロリババア、と言おうとしたのだ。太一は。


「……ババアロリ」

「誰がババアじゃ!?」


 明らかに幼女の姿なのに、顔はしわくちゃの老婆。というか、この顔からこの幼い声が出ているとか、もう詐欺である。


「チェンジで」

「何をじゃ」

「全部」

「無茶言うでない!」

「はあ……」

「失望した顔をするんじゃないわ!」


 なんだかんだ言いつつ、打てば響くツッコミ。このババアロリ、ノリノリである。


「って、あれ? 奏とミューラは?」

「お主と共にいた娘らか? 隣で寝てるであろう」

「ん、あ、ホントだ」


 言われた通り隣を見ると、奏とミューラが寝ている。すうすう、と可愛らしい寝息が聞こえてきた。

 安堵のため息が漏れる。どうやら、無事だったようだ。


「奏。ミューラ」


 二人の身体を揺すって起こす。

 ゆさゆさと一部分が身体と一緒に揺れる。主に奏のもののみ。厳しい格差である。


「ん……太一?」

「……妙にイラッとしたのは何故かしら……」


 目を擦りながら、あくびをしながら、思い思いの言葉を口にする二人。


「何、ここ?」

「真っ白ね……」


 すぐに違和感に気付いたのか、二人の娘は周囲を見渡してそんな感想を述べた。


「ああ、俺にも分からないんだよ」


 太一はそう言って首を左右に振った。


「なあ。どういうことなのか説明してくれよ」


 太一の視線の先。そこには白い布を幾重にもまとった、小さい老婆。

 まるで幼女のような大きさの老婆は、大きくうなずいた。


「わしは神じゃ。お主らはわしの手違いで死んでしもうた」

「ちょ。テンプレ」


 太一が何か言ったがスルーされる。


「じゃが、言った通りお主らの死はわしの手違いじゃ。よって、生き返らせることとした」

「生き返らせるって、そんなことが本当に出来るのかしら?」

「可能じゃ」

「神様みたいだね……」

「うむ。わしは神じゃ」

「つーか、そもそも俺たちはマジで死んだのか?」

「マジじゃ。死亡した身体から抜けかけていた魂を、ここに一時避難させた、というところかの」


 と、言われてもイマイチ実感がわかないのが正直なところ。こうして会話が出来るし、五感が存在するからだ。


「でじゃ。お主らが死んだのはわしのミス。というわけで生き返らせるのじゃが、それでは詫びにならぬ。というわけで、お主ら三人の願いを、なんでも一つだけ叶えることにしようと思うておる」

「なんでも……」

「ひとつ……」

「そんなことが……」

「もちろん可能じゃ。その願いを聞き届けるために、魂をこちらに運んだのじゃ」


 「なんでも」とはどの程度のさじ加減なのか。いざ決めて「それは無理」では話にならない。


「なあ。例えばだけどさ」

「うむ」

「俺以外に奏とミューラも召喚術師にしてくれ、って言ったら?」

「可能じゃが、そんな願いでよいのか?」

「出来るのかよ!」


 思わず叫ぶ。奏とミューラは目を白黒させていた。


「『何でも』と言うたじゃろう。神の『何でも』は安くはないぞい」


 どうやら本当にそうらしい。例えば試しに口にした「三人とも召喚術師」というのは、もうそれでいい、というくらいに破格である。死の危険が格段に下がるだろう。

 とはいえ、叶う願いは一つ。ここは慎重に決めねば。


「どうする?」

「いきなり言われても、パッとは浮かばないなあ」

「……」


 しかし叶うのはたった一つなのだから、そう簡単に浮かんで来ない。腕を組んでうーん、とうめく太一と、顎に指を当てて考える奏。

 ずっと、口元に手を当てていたミューラが、伏せていた顔を上げた。


「ねえ。タイチ、カナデ。あたしの願い、聞いてもらってもいいかしら?」

「おう。いいぜ」

「もちろんだよ。何?」


 二人の了承に謝意を目で述べて、思った願いを口にする。


「あたし。二人がいたニホンに行ってみたい。見てみたいの。二人が育った国を。育った土地を。育った、世界を」

「……」


 思わず固まる太一、そして奏。その発想はなかった。


「な、なに?」


 二人から視線を受けて狼狽えるミューラ。何か変なことを言っただろうか。


「いや、妙案だなって。なあ、奏?」

「うん。日本がどうなってるか、確かに気になるね」

「えっと……いいの? 叶うのはひとつだけなのよ?」


 とんとん拍子で決まってしまい、提案しておきながら少し不安になる。二人は何も願いを口にしていない。そんな簡単に決めていいのか、と。


「いいよ。だって、私も太一も、願い事が出てこなかったもの」

「そうそう。それに、日本に戻ってみるのだって、こういう機会でもないと叶う願いじゃないしな」


 そうだろ? と言って神を見る太一。彼女は首肯する。次元の壁を越えるとなれば、時空魔導師でもなければ正に神の所業だ。


「お主らは『迷い人』じゃったな。故郷の様子を見に行くというのもいいかもしれぬの」


 神が右手を空に突き上げる。そこに宿る光り。穏やかなそれは、しかし桁違いの力を内包していると、三人は気付いた。


「期間は到着日を一日目として、三日後の午前零時じゃ。そうしたら、またこの世界に戻ってくるぞい。わしとはもう会うこともあるまいて」


 光が徐々に強くなる。


「最後に聞いていいか?」

「なんじゃ」

「俺たちの死因は?」


 神は「ああ、言ってなかったか」と呟いた。


「トロールじゃ。走るトロールが歩くお主らの列に突っ込み、全身を強く打ち間もなく死亡したというわけじゃ。調べに対し、走りながら居眠りしていた、と供述しておった」

「……何でニュースっぽいの」


 彼らが何故トロールの蹴りごときで死んだかは突っ込んではいけない。

 太一と凛がその願いで地球に戻ればいい、というのも無しである。

 もちろんそれ以外のもろもろも突っ込んではいけない。

 すべては作者がこのネタをやりたいがための、無理やりを承知の上でのご都合主義だからだ。


「お主らは転生トラックならぬ転生トロールとなるわけじゃな」

「だからメタなのやめろっつーの。そもそも転生じゃねーし」


 パアッと、光が瞬間的に強くなる。それが晴れた時には、ちょうど神の肩の辺りまで、何処からともなく伸びてきているひもが。


「準備はよいか」

「え? もうなの?」

「うむ。そうだタイチよ」

「んあ?」

「お主にはLSを追加しておいたからの」

「LS?」

「カカ……じきにわかる」


 悪い顔で見られ、嫌な予感がぬぐえない。


「では、グッドラックじゃ」


 くい、と紐が引かれる。


 ガコン!!


「へっ?」


 抜けた声を出したのは太一。

 呆けた、悪く言えば間抜け顔を晒してしまったのは奏とミューラ。

 足から地面の感覚がなくなる。


「きゃああああ!」


 少女達の悲鳴と。


「うおわあああ!」


 野郎の太い悲鳴。

 三人は抵抗の間もなく落ちていった。


「アルティアを頼むぞ……これは、一つのご褒美じゃ」


 神はそう呟いた。




 ドタドタバタン! と大きな音が響いた。

 


「いつつ……ったく、もうちょっと優しく扱えよな……」


 前触れもなく落とされた。大した衝撃ではなかったものの、全く気構えも無い状態では受け身も取れない。

 瞼を開けても視界は真っ暗。何も見えない。どうやらうつぶせになっているようだ。

 とりあえず身体を起こそうと両手に力を込める。


「んっ……」

「え」


 耳に届いたのは、艶めかしい声。

 そして、右手にむにゅりという柔らかい感覚。凄く良い感触である。

 なんぞこれ、と思いつつ、何だか嫌な予感もしつつ、身体を起こして目を開ける。


「……」

「……」


 真下にはミューラ。

 太一の右手は彼女の胸の上。わしづかみにしていた。

 慎ましいとはいえ、どちらかといえば『貧』ではなく『美』がつくミューラの母性の象徴である。それが、太一の手によって妖しく形を変えていた。

 彼女はこういうことには厳しい。これはやばい! と思ったが、何だか様子がおかしい。

 彼女の瞳は潤み、揺らいでいる。頬は若干赤くなっていた。わずかに開かれた薄い唇から漏れた小さな吐息が無性に艶めかしい。

 仰向けに寝ているミューラと、覆いかぶさるような太一。

 どう見ても押し倒しです。本当にありがとうございます。

 太一は、気が動転していた。

 本当はすぐにどけばいいのに、真っ白になった思考はそれすらも思いつかせなかった。


「た、タイチ……どいて、欲しいかも……」

「うわあごごごごめん!」


 ため息のような声が、太一の耳朶を揺さぶる。太一は勢いよく飛びのいた。後ろに背中がつく勢いで。

 むしろここでどいたのは男として鋼の精神だろう。ミューラほどの美少女にこんな反応をされて、並の男なら理性を保つのは至難の業である。

 だから、決して、「ヘタレ」と言ってはならない。

 言ってはならないのだ。


「きゃっ!」

「!?」


 飛びのいた太一の背中に、再び柔らかい感触。

 そう、太一は忘れていた。別にミューラと二人きり、というわけではなかったのだ。

 太一の身体はかなりの勢いで動いている。

 つまり、背中で今押しているのは、奏なわけで。

 このままでは背中で奏を押し潰してしまう。太一は全神経を注いで、両手を床につこうと体勢を変えた。もちろんその勢いでは奏が背中を強打してしまう。彼女の背中に左腕を挟み、ぶつけないようにして。信じられないほどの身体の動き。火事場の馬鹿力というやつだ。

 ドタン! と強い衝撃。

 同時に左腕が地面と奏の背中に挟まれて痛みが走った。とはいえその痛みは、奏が受けた衝撃を和らげられた証拠。安堵のため息をつく。


「……っ」


 と、間近で奏が息を呑んだ気配がする。

 何だろう、と疑問に思って目を開けると。


「……」


 鼻と鼻が触れ合わんほどの至近距離で、太一と奏は見つめ合っていた。唇同士の距離はおよそ五センチあるかないか。

 こうして近くで見ると、改めて奏が美少女だと思い知らされる。

 奏の顔は赤い。

 今度は気が動転していないと思った太一。

 だが、奏の背中と床に間に手を差し込み、何故か右手で左手を握り締め、唇が五センチまで近づいているのだ。

 どうしてこうなった、と言われても仕方ない体勢だとは気付いていない。

 どう見ても押し倒しです。本当にありがとうございます。

 見とれてしまって動けない、とは太一自身考えもしていない。

 と、ドタドタドタ、と足音が近づいてくる。

 なんだろう、と思う間もなく。


「何! 何事なの!?」


 という叫び声と共に、ばたん! と扉が開かれた。

 聞きなれた、しかしとても懐かしい女性の声だった。


 空気が、凍り付く。


 現状を客観的に説明しよう。

 扉を開けて入口で固まる女性。

 女の子座りで顔は真っ赤、胸を手で押さえ、口元に軽く握った手を当てて俯く異国出身の金髪碧眼超絶美少女と。

 奏を押さえ付けるように仰向けにし抱き締めながら覆いかぶさり、顔を至近距離まで近づけている太一。

 女性がこうなった状況を予想した結果。

 1.太一が二人を連れ込む。

 2.いい雰囲気になり、金髪の美少女にキス。

 3.後にされて拗ねた奏を抱き締めながら覆いかぶさり、事の最初にキスしようとしている。←今ここ

 完璧な流れだと、女性は思った。


「お帰り、太一」

「……おう。ただいま、ねーちゃん」


 そう、扉を開けたのは、太一の姉、西村 亜季だった。

 行方不明になった弟。幾ら捜索しても見つからないまま半年。用事を済ませて帰ってきた直後、静かなはずの部屋で連続して発生した大きな音。

 思わず部屋に飛び込んできた、というわけだ。

 普通は、半年も行方不明だった弟を見れば、気が動転して大騒ぎになるところだろう。

 それが普通である。

 毎日顔を合わせていた頃は、決して不仲ではなかったものの、お互い理由も意味も分からず気まずい空気が漂っていた。だが、久々に会ってそんな過去は全て上書きされてしまった。

 それもこれも、この情事寸前(亜季視点)の状況を見たからであり。弟がこれほどの美少女二人を連れ込める位に、男を磨いたのだと知ったからだ。

 彼女は思う。「こんな美人二人も連れ込むとかやるな我が弟!」と。

 現実逃避? 何それ? 食えんの?

 亜季はにっこりとほほ笑む。それはそれは、菩薩のような温かい笑みで。


「太一、ゴムはちゃんとつけなきゃダメだからね?」

「……」


 久しぶりに会ったというのにあまりと言えばあまりな第二声に、二の句が継げない太一他二名。


「それじゃ、ごゆっくりどうぞ。お姉ちゃんは下でゆっくりしてるから。終わったら挨拶しましょう」


 ぱたん、と静かにとじられる扉。

 太一たちは顔を見合わせる。

 ゆっくりと今のやり取りが頭に染み込んで。


「待て待て待てねーちゃん! 誤解だから誤解だから!」

「待ってください亜季さん! こ、これは違うんです!」

「ちょ、ちょっと待ってよ二人とも! ここはどこなのよお!?」


 結局、数か月ぶりの太一の部屋だというのに、感慨に浸る暇は一切無かったのであった。


「LSってそういう意味かよあんのアホ神があ!」


 神が、ほくそ笑んだ気がした。

もう一つ二つ続きます。

本編は……すみません。

がんばります。

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