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【前半戦終了】柔よく剛虎を制す!~呪いの帯で虎の怪物になった元・柔道女子高生は妖を柔道技でねじ伏せる~   作者: 暁季
前半戦

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第五話 山と鳥居と神社


 昨晩、私たちを襲った謎の少年──葛葉 漣(くずは れん)

「監視する」と言い残し、闇に消えたはずのその男が今、転校生として堂々と私の目の前に現れた。

 

 監視すると言ってもそこまでする!?

 彼の鋭い三白眼が、私の目を貫くように睨みつける。


 そんな中、クラスメイトの女子たちが私に詰め寄る。

「葛葉くんってイケメンじゃない?」

「虎井さん、ずっと見られてたけど知り合い?」

「付き合ってるとか?」


 矢継ぎ早に飛んでくる質問に、私は思わずたじろいだ。

「い、いや……別に知り合いとかじゃなくて、昨日たまたま見かけただけで……」

「じゃあ付き合ってる訳じゃないんだね!」

「は、はァ!? そんな訳ないじゃん!」


 女子たちはあれやこれやと活気付いているが、私はそんな気分ではなかった。監視──何も学校まで来なくても……


 午前の授業は正直、全く集中する事が出来なかった。

 

 帯の事、「虎」の事、結局ほとんどわかっていない。

 わかっているのは呪われた道具は複数あって、私はその一つに「選ばれてしまった」事。そして昨日、私は「虎」にならずに耐えることができた事。それと──

 

 後方から常に私を射抜くような視線を感じる。コイツに監視をされている事だ。


 黒板を見てるふりをして後ろを振り返ると、漣の三白眼が一直線に私を射抜いていた。

 授業中、何度も視線を感じて背筋がゾワッとする。


 

 長かった午前の授業が終わり、私は紬と夢愛を連れて学校の屋上に向かった。


 雲一つない晴天。小鳥のさえずりと風の音が心地よい。

 暖かな日差しが降り注ぐ中、私たちは昼食をとりながら今後に向けて作戦会議をしていた。


「あれから新しい『ウワサ』はあった?」

 私が卵焼きを頬張りながら夢愛(ゆあ)に問いかける。

 

「ぜーんぜん! 授業中ずっとSNS調べてたけど目撃情報も『ウワサ』もなーんにもなかったわー」

「夢愛ちゃん、授業はちゃんと受けなきゃ……」

 夢愛はスマートフォンをカバンの上に投げ捨て、空いた手でたまごサンドを掴む。


 「私、休み時間にネットで古文書について調べてみたんだけど……ちょっと気になる言葉が書いてあってね。「業虎(ごうこ)」とか「九尾(きゅうび)」とか……難しくてよくわからなかったんだけど、何か関係あるかなって……」

 (つむぎ)が両手で水筒を握りしめながら恥ずかしそうに肩をすくめる。


「すごいよ紬! もしかしたら重要な手掛かりが見つかるかもしれない!」

 私は空になった弁当箱を置いて紬に抱き着いた。


「く、苦しいよ(らん)ちゃん……でも古文書に『白雨神社(はくうじんじゃ)』って書いてあったけど、そんな名前の神社、地図に載ってないの……」

「そ、そっかあ……」

 私は脱力し、肩を落としてへたり込んだ。

 そう簡単に手掛かりが見つかる筈もないか……


「それって……『白雨(はくう)様』の事か?」

 屋上の扉が開き、漣が姿を現した。その手には、半分に欠けたメロンパンが握られている。


「葛葉 漣! アンタ盗み聞きしてたの!?」

 夢愛がたまごサンドを掴んだ手で漣を指差し、睨みつけた。


「だから監視するって言ってんだろ……そんな事より俺、その神社の場所わかるかもしれないぞ」

「「「え!?」」」


 まさかの発言に私たちは目を丸くして顔を見合わせた。


「死んだじいちゃんから色々聞かされてたんだよ。正直、お伽話だと思って話半分にしか聞いてなかったけどな。確かにその神社は実在するはずだ」

 漣が上目遣いで私たちにそう告げる。コイツに助けられるのは(しゃく)だけど、他に頼れるものはない。


「そこに、案内してほしい」

 私はまっすぐな目で彼を見つめた。


 「ああ、いいぜ。俺も言い伝えについて、もっと知らなきゃいけないからな」

 ……信用した訳じゃない。

 でも、今はコイツの知識が必要だ。私たちは藁にもすがる思いで「白雨神社」を目指す事にした──


 

 ◇ ◇ ◇


 放課後。

 

 電車で二駅進んだ先にある小さな町、白陽(はくよう)町。

 その白陽町の最北端にある山へ、私たち四人はやってきた。


 人がほとんど訪れていないのだろう。道はないに等しく無数に並んだ大木をかき分けるように進んでいく。


「本当にこんなトコに神社なんかあるわけぇ?神社よりも熊が先に見つかりそうなんですけどー!遭難したらアンタのせいだからね!」

 夢愛が悪態をつきながら険しい山道を登る。


「知るかよ。……ったく俺だってここに来るのは初めてなんだ。グダグダ言ってないで、黙って歩け」

「んだとぉ!?」

「まあまあ落ち着いて夢愛ちゃん……」

 紬が疲れを押し殺して夢愛をなだめる。


 三十分ほど歩いただろうか。ほとんど休むことなく進んでいたが、神社どころか人工物の気配すらない。あるのはひたすら自然のみ。虫や花粉で身体がじわじわと不快になってきた。


 草木をかき分けながら、漣が何かをブツブツ呟いているのが聞こえた。

「……じいちゃんの話、もっと真面目に聞いとくんだったな……本当に『白雨様』がいるんだろうな……?」

 どうやら彼も、記憶が曖昧らしい。本当に頼りになるんだろうか?


「それにしても、すごい山道だね……ちゃんと帰ってこれるか心配になっ、キャァッ!」

 紬は空まで伸びる大木に気を取られ、足元の木の根に気が付かなかった。紬は足を取られ、そのまま転倒する。


「紬!大丈夫!?」

 私はすぐさま紬のもとへ駆け寄った。


「いたた……びっくりした……大丈夫だよ。先へ進もう……痛っ!」

 紬が右足をついた瞬間、ガクンと姿勢を崩した。足首が腫れている。足を捻ってしまったようだ。


「紬……私がおぶってあげる!乗りなっ」

 わたしは紬の前で屈み、背中を差し出した。


「でも……こんな酷い山道、迷惑かけたくないよ……」

 紬は申し訳なさそうに俯く。


「大丈夫だって!私はまだまだ元気だから!一緒に神社目指そう!」

 紬にこれ以上無理はさせたくない。私はニカッと笑って見せた。

  

「ありがとう、蘭ちゃん……」

 紬が私の背中に乗った。──軽い。まるで空気だ。人一人背負っているはずなのに、全く辛くない。これなら問題なく進めそうだ。


 そんな私と紬のやり取りを見ていた夢愛が、目を細めて漣を横目で見つめる。

「……俺はお前の事背負ったりしねえからな。自分で歩けよ」

「んな事わかってますよーだ!」

 夢愛は顔をしかめて舌を出すと、漣を追い越してズカズカと歩き出した。


 それから一時間ほどが経った。


 日が傾き、辺りが茜色に染まり始めた時。漣が前方に指を差した。


「見ろ……道だ。やはりここで合ってたらしい」


 漣が指を差した先には塗装が剥がれ、色を失った鳥居が傾きながら立っているのが見えた。

 そしてその先には雑草に埋もれて見えづらいが、確かに苔むした石段のようなものが、断続的に続いていた。


「やった……!きっとこの先に神社がある!」

 私は背中の紬をずり上げ直すと、残りの力を振り絞って石段を駆け登った。


 登りきった先に現れたのは、ボロボロに朽ち果てた拝殿(はいでん)だ。

 屋根の瓦は崩れ落ち、柱は根元が腐り、所々歪んでいる。

 

「つ、着いた……ハァ……本当にあったんだ……!」

 私は安堵した。想像以上に荒れ果ててはいるが、目的の神社は確かにそこにあった。そして紬と漣の情報が確かなら、この先にはきっと何かがあるはずだ。


 期待に胸が膨らみ、疲れが一気に吹き飛ぶ。


 「行こう!早くしないと、日が暮れちゃう!」

 私は休憩をしている三人を尻目に拝殿の入口へと向かった。

 

「あ!ちょっと待ちなよ蘭ー!」

 そんな私に気がつき夢愛が声を掛ける。

 紬と漣を連れて私の待つ拝殿の入口へと駆け出した。


 入口の蝶番(ちょうつがい)は壊れていて、扉が半開きになっていた。

 半開きの扉から覗く闇は光が一切なく、静かだ。まるで地上に現れた深淵(しんえん)のようだった。


 ――何かが、待っている。

 理由はわからない。でも、そう感じた。

 

「……開けてみるよ……」

 私は息を呑んだ。恐る恐る扉に手を掛け、半ば強引にその深淵を開放する。


 メキメキ、ギギィーッ……


 扉が開くと同時に闇が塵と共に空気を飲み込んでいく──まるで私たちを引き込むかのように。


「お、おじゃましまーすよぉ〜」

 夢愛が間の抜けた挨拶をしながら足を踏み入れる。

 私たちもその後に続く。


 中に入ると、湿り気のあるカビの臭いが鼻をつく。

 朽ち果てた得体の知れない木片。蜘蛛の巣のカーテン。腐った床板が歩く度にギギィと音を立てて軋む。


「何もかもボロボロ……これじゃあ手がかりなんて……」

 私の背中から降りた紬が、足を引きずりながら呟いた。

 

 ……紬の言う通りだ。目に映るもの全てがボロボロで元がなんだったのかさえ見当がつかない。この状態で倒壊していないのが奇跡のように感じた。


「……奥だ。奥に本殿(ほんでん)がある」

 漣が蜘蛛の巣の奥で指差す先に、一段高くなっている空間があった。


 そこには祠のような小さな建物が鎮座していた。


 拝殿よりは幾分か状態が良いが、それでも至る所が朽ちており、しめ縄は千切れてくたびれている。


「本殿は神聖な場所だ。本来人が入っていい所じゃない。……だが、事情が事情だ。……入るぞ」

 漣が扉を開けると、そこには祭壇のようなものや薄汚れた鏡が飾られていた。


「わあ……すごい……」

 紬は目を見開いた。長い間放置されどこもかしこも荒れ果ててはいるが、空気が違う。肌にまとわりつくような静けさ。重みのある静寂。

 「ここは神聖な場所である」と脳が理解させられる。理屈じゃない納得感があった。


 祭壇の近くに、握り拳ほどの大きさの塊が落ちていた。私は何故か、その塊から目を逸らせなかった。

 石……?泥とカビで黒ずんでいるけれど、奇妙なほどなめらかな曲線を描いている。よく見ると、それは狐が丸まっているような不思議な形をしていた。

 私は何かに導かれるように、その塊を拾い上げた。


 ──その時だった。


 カッ!……ペリペリペリ……


 拾い上げた塊が光を放ち、脱皮するように黒い汚れが剥がれてその輝きを増していく──

 

「お前!何をしたッ!?」

 漣が物凄い剣幕で私に問い詰める。

 

「し、知らないって!なんか汚れた石みたいなのが落ちてたから拾っただけだって!」

 何か罰当たりな事をしてしまっただろうか──慌てて拾い上げた塊を元の場所へ戻そうとしたが、その考えは塊に吸い込まれるようにスッと抜け落ちていく。


 私の手の中で輝きを増していく小さな塊。

 その光はあたたかく、手の平に優しい熱が広がっていく。心が落ち着くような不思議な安心感を覚えた。

 

 薄暗い神社の本殿が、青白い光に包まれた──


設定情報④

【名前】喜多見きたみ 夢愛ゆあ

【年齢】17

【職業】高校生

【身長】164

【体重】49

【血液型】AB

【好きなもの】サンドイッチ/焼肉/K-POPアイドル

【嫌いなもの】野菜全般/母親の彼氏

【大切なもの】洋服/アクセサリー/友達

【性格】好奇心旺盛/ポジティブ

【趣味】ライブ配信/ショッピング

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