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柔よく剛虎を制す!~呪いの帯で虎の怪物になった元・柔道女子高生は妖を柔道技でねじ伏せる~   作者: 暁季
後半戦

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第十二話 課題と修行と心技体


『おぬしらは、修行が必要じゃな』


 白雨(はくう)が厳しい目つきで屋上のフェンスから私たちを見下ろした。


 週末を控えた金曜の昼休み。私たちはいつものように学校の屋上で、作戦会議を兼ねたランチタイムを取っていた。

 

 のどかな青空とは裏腹に、私たちの間には重苦しい空気が漂っている。


『先日の土蜘蛛(つちぐも)との闘いで、おぬしら自身も己の未熟さを痛感したじゃろう……まずは小娘よ! おぬしは勘と怪力に頼りすぎじゃ。業虎(ごうこ)の力に任せて暴れるだけではいかん。「人間」としての「技」を磨くべきじゃ』

「人間としての、技……」

 

 私は巨大な弁当箱を支える両手を見つめながら、静かに復唱した。

 確かにあの時は、力任せに地面を砕いただけだった。


『そして小僧! おぬしは圧倒的に霊力が足りぬ! 羽根は蜘蛛の糸すら切れず、すぐ手詰まりになっておったじゃろう! このままでは業虎の完全封印はおろか、今後の闘いで足手まといになるのは目に見えとるわ!』

「ぐっ……!」

 

 (れん)は悔しそうに顔を歪め、持っていたクリームパンがミチミチと潰れかけた。図星を突かれ、言い返す言葉もない様子だ。


『そこでじゃ。幸い次の(くさび)はまだ現れておらぬ……今のうちに修行に励み、自身の弱点を克服するのじゃ』

「悔しいですが……白雨様の仰る通りです……。俺はもっと、強くならなきゃいけねえ……!」

「私も……業虎の力に頼ってばかりじゃなくて、ちゃんと人間として闘えるようにならないと……!」

 

 私と漣は顔を見合わせ、深く頷いた。


「よーし! そうと決まれば明日から特訓開始だー! (つむぎ)! ウチらも出来る事探して協力するよ!」

 

 夢愛(ゆあ)がツナサンドを片手に勢いよく立ち上がった。

 

「うん! ……でも、私たちに出来る事ってなんだろう……?」

 

 紬が、少し不安そうに首を傾げる。

 

「んー……ま! それは追々考えればオッケーっしょ!」

「はは……夢愛ちゃんらしいね。もうすぐ昼休みも終わるし、放課後一緒に考えよっか」

 

 二人の明るいやり取りに、張り詰めていた空気が少しだけ緩んだ。


 私たちは弁当を片付け、午後の授業に向かった──



 ◇ ◇ ◇



 次の日。休日の朝早くから、私たちは白雨神社(はくうじんじゃ)のある白陽(はくよう)町の山へとやってきた。

 

 ここはいつも穏やかで心が落ち着く。

 少しひんやりとした山の空気が、肺の奥まで澄み渡っていく。


『よいか……小娘よ、おぬしは武術を心得ていたな。その技を磨くことが先決じゃ。山にそびえ立つ木々や岩が、おぬしの修行相手じゃ。精進せい!』

「はいっ、わかりました!」


 私は持参したスポーツバッグから、白い柔道着を取り出した。

 

 かつて父が使用していたもので、少し埃っぽいような古ぼけた匂いがする。

 

 以前の私には大きすぎて袖が余ってしまうはずの道着だが、今の私の身体には、恐ろしいほどピッタリと馴染んだ。

 私は帯をきつく締め直した。


『小僧は霊力の限界を引き上げねばならぬぞ。わしが徹底的に指導する。覚悟するのじゃ!』

「わかりました……!」


 私と漣がそれぞれの特訓に向けて気合を入れていると、少し離れた場所でゴソゴソと物音がした。


「……紬。あんたすごい荷物だね」

 

 夢愛が呆れたような声を上げる。

 見れば、紬が自身の身体の半分以上はあろうかという巨大なリュックサックを背負って立っていた。


「わ、私に出来る事は限られてるから……飲み物とお弁当と、タオルと救急キットでしょ、それからレジャーシート、懐中電灯、寝袋……」

「わあああちょい待ち! 全部出さなくていーから! ……って寝袋!? 泊まるつもりだったの!?」

「あっ……流石に泊まらないか……」

 

 紬が顔を真っ赤にしてパタパタと手を振る。どうやら本気で持ってきたらしい。


「ふふん……でも紬の力になりたい気持ち、ちゃんとみんなに伝わるよ!」

 

 夢愛は笑いながら紬の背中をポンと叩いた。


「ウチは漣の特訓に付き添うからさ、紬は蘭の傍にいてあげなよ」

「ありがとう、夢愛ちゃん……わかった! 行ってくるね」


 こうして、二手に分かれての過酷な特訓が幕を開けた──



「ふぅ……よし! 紬、いつでもいいよー」

「はーい! それじゃあ……はじめ!」

 

 紬がストップウォッチのボタンを押す。

 私が初めに取り掛かったのはサーキットトレーニングだ。

 

 短い時間で筋トレと有酸素運動を連続して行うトレーニングであり、手っ取り早く身体を温めるにはもってこいのメニューだ。


 腿上げ、サイドステップ、腹筋、スクワット……私は紬の合図で次々とメニューをこなしていく。

 

 身体が軽い。いくらやっても身体がバテない。無限に続けていられそうだ。

 

 そして、靭帯断裂を起こした右膝に全く違和感がない。

 これまでの闘いで薄々勘付いてはいたが、膝の怪我は完治しているようだった。


 これも業虎の力の影響だろう。これなら思いっきりやれる。まあ、こんな規格外のパワーで柔道に復帰する訳にもいかないが……


 私が地面を踏み締める度に小さな地響きが起き、地面が崩れていく。


「やっぱりすごい……頑張れ、蘭ちゃん……」

 

 紬が地煙に目を細めながら、トレーニングに励む私を見つめていた。



 一方その頃──


『小僧よ、今からわしの指示通りに術を発動するのじゃ。そして霊力を限界まで開放する。それを何度も繰り返して限界値を引き上げるのじゃ! ……気絶なんぞしてみろ、わしがすぐに叩き起こしてやる』

「はい、よろしくお願いいたします」

 

 白雨が白い尻尾を揺らしながら鋭い目つきで漣を突き刺した。

 漣が静かに札を抜き取る。指先に力が入り、札がクシャリと歪む。


『今からあの木に向かって「酉ノ空烈(とりのくうれつ)」を放つのじゃ。霊力の限界まで術を止めるでないぞ』

「わかりました! ……急急如律令きゅうきゅうにょりつりょう……『酉ノ空烈』ッ!!」

 

 無数の羽根手裏剣が大木めがけて飛んでいく。

 ザクザクと小気味よい音を奏でながらすべての羽根が大木に鋭く突き刺さる。


『ふむ、精度は申し分ないのう……じゃが、問題はいつまで持つかじゃ。小僧よ! そのまま続けるのじゃ!』

「はい! ……ぬぉぉぉぉ……!」

 

 漣が指先にさらに力をこめる。手の甲から血管がビキビキと浮かび上がっていく。

 

 術を唱えて二分を迎えようとした時、札の端から青白い炎が立ち始めた。限界の合図だ。

 

「くっ、そぉぉ……!」

 

 漣の腕が震え始めた。精度が落ち羽根が大木の真横をかすめるようになっていく。

 

『……予想よりも限界が早いのう。これは相当の修行が必要じゃな……』

 

 白雨が目を細めた。

 

 何百もの羽根手裏剣が目の前の大木に突き刺さり、剣山のようになっていた。


「く……、ぐぁっ……」

 

 漣が大粒の汗を垂れ流しながら膝をついた。

 白雨がすかさず尻尾で漣の肩をピシャリと叩く。


『何をしておる! 立つのじゃ! 限界を越えねば成長はないぞ!』

「は、はい……! ……『酉ノ空烈』……ッ!」

 

 漣が震える腕を抑えながら札を構える。


 札から五枚程の羽根が飛び出したが、すぐに勢いを失い地面に突き刺さる事なく消滅した。


「ちくしょう……」

 

 漣は札を掲げながらそのまま地面に倒れ込んでしまった。

 

「漣!」

 

 夢愛が漣の元へ駆け寄る。


『まったく、情けない奴じゃのう……』

 

 白雨が大きなため息をついた。


「漣、大丈夫か?」

「はぁっ……はぁっ……ま、まだだ……」

 

 漣が夢愛の差し出したボトルを払い、土を削りながら体を起こす。


『……もうよい。一時休憩じゃ。しばし身体を休めた後、もう一度行うぞ』

「……はい……わかりました……」


 


 それからしばらくして、私たちは木陰で昼食をとることにした。

 

 紬と夢愛がせかせかとお重を並べ、蓋を開けていく。

 中にはおにぎりや唐揚げなどたくさんの料理が詰め込まれており、さながら運動会の昼食だ。


「……で~そっちの特訓はどうだった?」

 

 夢愛が麦茶を片手に私たちに語り掛けてきた。


「もう、蘭ちゃんったらすごいんだよ! 足さばきっていうのかな、力強くってそれでいて素早くて」

 

 紬が目を大きく広げながら私を褒めたたえる。


「いやぁ、まだまだだよ。確かに体は軽くってなんでもできちゃいそうって思ったけど、もっと効率よく身体を動かせそうな気がするんだ」

 

 私は頭を掻きながら唐揚げに箸を伸ばした。


「そうそう、そっちはどう? 捗ってる?」

 

 私が唐揚げを頬張りながら問いかけると、漣は苦虫を噛み締めたような表情で俯いた。

 

「俺は……まだまだだ……!」

『そうじゃのう。あの程度で倒れるなど情けない。』

「そ、そっか……」


 和気あいあいとした空気が一気に重くなる。

 

 漣の様子をよく見ずに聞いてしまった。私は少しだけ後ろめたい気持ちになった。


「あーでも! 漣だってすごかったんだよ? 百発百中! 白雨様も精度はイイって言ってたし! そうでしょ、白雨様!」

 

 夢愛がわたわたと手を振り回しながら白雨に問い掛けた。


『まあ、精度は悪くなかったのう。精度が良いという事は霊力を適切に扱えておる証拠じゃ。あとは限界値さえ引き上げれば、おぬしは急速に成長する事が出来るじゃろうな』

「白雨様……もー! そういうイイ事はもっと伝えていかないと! 今ドキの子は褒めて伸びるタイプなんだからさぁ~!」

 

 夢愛が白雨の頭を撫でまわす。

 

『これ! 気安く触るでない! ……まったく……』

 

 白雨は一度は夢愛の手を尻尾で払うも、まんざらでもない表情でそれを受け入れる。

 

 漣は白雨の言葉にハッと顔を見上げた後、すぐに頭を下げて麦茶を飲みほした。


「まだ初日だもんね。二人ともきっと成長できるよ!」

 紬が顔をほころばせながらおにぎりを頬張った。


「よーし! それじゃあ午後も張り切っていこーっ!」

 夢愛が立ち上がり拳を掲げた。


 みんなでもっと強くなろう。私は帯をきつく締め直した。


 

 

 午後は大木を敵に見立て様々な動きで技を掛ける練習に取り組んだ。


 鋭い鉤爪で大木の「体」を捉え、脚を払う──大木の皮が削れる。

 

 離れては、再び体勢を変えて捉える。ひたすら反復練習だ。


 動く相手でもなければ人ですらない。大木相手に技の練習をするのは一苦労だ。

 

 そして、どこか技が嚙み合わないような違和感を感じる。

 練習相手が木だから? しかし、対峙する相手も人型とは限らない。

 

 どんな相手だろうと全力の技を叩き込むためには必要な特訓だと私は考えた。


 漣は火焔の術の特訓をしているようだ。遠くから火柱が立ち上がっているのがこちらからも見える。

 

 頑張れ、漣。私も負けられない。

 

 父の柔道着が土で汚れ、擦り切れるまで私は大木相手に技を掛け続けた。



『今日はここまでじゃ!』

 

 白雨が大声を張り、招集をかける。


 辺りはすっかり日が暮れていた。茜色の空にカラスの大群が飛び回っている。

 

 私と紬が白雨の元へ駆け寄ると、肩で息をする漣とタオルを差し出す夢愛が立っていた。


『今日の修行で己の課題がより明白になってきたじゃろう。その気付きを忘れずしっかりと身体を休め、明日また修行に励もうぞ』

「「はいっ!」」


 擦り切れた柔道着を脱ぎ、身支度を済ませる。パンプアップの影響か朝よりも少しだけ服が窮屈に感じた。

 

 漣はやつれた表情をしていたが、昼のような浮かない顔とは少し違って目の奥に力が宿っているようにも見えた。


「紬ぃ、明日はそんなに大荷物じゃなくていいからね~。寝袋ウチが持とうか~?」

「わ、わかってるよ夢愛ちゃん……! 大丈夫、自分で持って帰るからっ」

 

 夢愛の「イジリ」に紬は顔を赤らめながら、巨大なリュックサックを背負い直す。


 心地よい疲労感の中、私たちは冷たい夜風を浴びながら帰路に就いた。



 ◇ ◇ ◇



 それから一か月。

 

 私たちは毎週末、徹底的に特訓に励んだ。


 「ぬぉぉぉ……りゃぁっ!」

 

 私は大木だけではなく、ワゴン車ほどの大岩を相手に特訓を続けていた。

 大岩の座標がズルズルとずれていく。

 

 流石に岩を切り裂くことは出来ないが、「掴める」──対象の適切な掴みどころを見極め、捉える事が出来るようになってきた。

 

 そして極めつけは、タイミングだ。今まで感じていたどこか噛み合わない違和感。それは「心技体」のタイミングだった。

 

 一か月の特訓で業虎の破壊的な力と人間としての武術の技。その二つの「ズレ」を私はようやく理解した。

 

 精神を集中させ、最高のタイミングで適切な重心を捉える──

 すべてが一つの線につながった瞬間、ただの怪力とは違う真の力を発揮する事が出来た。


「あの岩が動き出した……すごいよ蘭ちゃん!」

 

 紬がタオルを振りながらぴょんぴょんと飛び跳ねた。


「……ありがと、紬! 紬が私の重心のクセに気付いてくれたおかげで、力の使い方がわかってきたよ! ……今ならひょっとして……!」

 

 私はそういうと姿勢を落とし、大木に一気に迫って鉤爪で「体」を捉えた。

 

 そして心技体、すべてがつながる瞬間に足腰を沈み込ませ、全身を捻る――

 

 大木の支点が崩れ、太い根がバキバキと音を立てて地表に姿を現した。

 そして大木は背負い投げの軌道に乗って宙に浮き上がった。


「おぉっ!? い……いけたぁ!」

「木を……引っこ抜いちゃった……! でも蘭ちゃんこっちは!」

 

 天まで伸びる大木がゆっくりと紬の方へと傾いていく。


「お……おわぁ危ないっ!!」

 

 私は右脚を力強く踏みしめ、身体を無理やり反転させて軌道を変えた。


 ドバァァァァン!!


 落雷のような爆音と共に大木が後方に叩きつけられた。

 

 鳥たちがパニックを起こしてバサバサと空へ逃げていく。


「あ……あぁぁ……」

 

 紬が目に涙を浮かべながら地面にへたり込んだ。


「ご、ごめん紬……ホントにいけちゃった……」

「……し……死ぬかと……思った……」

「ごめーん! 本っ当にごめんね! 怖い思いさせちゃったね!! もう調子に乗ったりしないからっ!!」

 

 危うく紬の方へ大木を投げ飛ばすところだった。私も涙目になりながら紬の胸に飛び込んだ。

 

 紬の激しい心拍音が伝わってくる。私は紬の頭を撫でながら優しく抱きしめた。


 その時、後方から勢いよく熱波が吹き込んできた。

 

「えっ!?」

 

 見上げると、漣のいる方角から巨大な焔を纏った赤い竜巻が天高く舞い上がっていた。


『これ! 調子に乗るでない! 山火事を起こす気かー!!』

 

 遠くから白雨の怒鳴り声が聞こえてくる。


「今の……漣くんの術? すごい……」

「きっとそうだ……行ってみよう!」

 

 私たちは立ち上がり、漣の元へ駆け出した。




 辺りは物凄い熱気で真夏のようだった。

 

 陽炎に揺られながら夢愛が私たちと元へやってきた。

 

「蘭、紬……今の見た!? ちょーヤバい術だったでしょ!」

 

 夢愛が興奮した様子で漣を指差した。


「見たよ! あれが、漣の新しい術……?」

 

 熱気の方へと目をやると、不敵に微笑む漣の姿があった。


「待たせたな。ようやく完成したぜ……俺の新奥義がな……!」

 

 そう言うと漣は両手に持った札を払い、炎をかき消すとバンドへと収めた。


「お疲れ! ホイ、水っ」

 

 夢愛が漣に水の入ったペットボトルを投げつける。

 漣はそれを片手でキャッチし、浴びるように喉を鳴らしながら水を飲む。


『全く調子に乗りおって……危うく山火事になるところじゃったぞ! ……まあ、この短期間でここまで成長するとは……期待以上じゃ。褒めて遣わすぞ』

 

 白雨がスンと鼻を鳴らした。


「すごいよ漣……! あんなすごい技を身につけたなんて!」

「奥義だけじゃないぜ、俺は新たな術の修行もしたんだ。もう足手まといだなんて思わせねえ。お前も、相当力をつけたみたいだな。」

 

 漣は自信たっぷりに答えてみせた。

 

 物凄い技だった。しかも息は多少上がっているが、全くバテている様子はない。なんて頼もしいんだ。


「へへ……そうだよ! 私もだいぶ強くなったんだから! これでどんな強敵が来ても大丈夫だね!」

 

 私はニカっと笑顔を見せてピースサインをした。


「漣、ホントめちゃくちゃ頑張ったよね! 白雨様にみっちりしごかれて何回倒れたことやら……でも、どんなに倒れても漣は決して弱音を吐かなかった! だからここまで強くなれたし、新しい術もマスターできた! ウチ、普通にカッケーなって思ったよ」

 

 夢愛は照れくさそうに目を逸らした。


「おい、何回倒れたとかは余計だろ……」

 

 漣はボソッと吐き捨てた。


『これこれ……確かにおぬしらは成長したが、次の妖が何者かわからぬのじゃぞ。決して油断するでないぞ!』

「はいっ!」

「わかりました!」

 

 私と漣は返事をした後、顔を見合わせ小さく頷いた。


「はーい! それじゃあお昼にしよー! ウチら今日もお弁当いっぱい作ってきたから!」

 

 夢愛が巨大な風呂敷を取り出した。私の腹がそれに反応するように重低音のサインを送る。


「さんせーい! 私もうお腹ペコペコだよぉ〜」

「ふふ……白雨様、今日はフライドポテトもありますよ」

『何ッ、「ふらいどぽてと」じゃと! (はよ)う! 早うわしによこすのじゃぁぁ〜』

「白雨様、ポテトは逃げませんよ……ご安心を」


 一か月の特訓は大成功だった。私たちは新たな力を手に入れた。

 

 次の敵がどんな相手だろうと、勝ってやる。

 そして残り二つの楔も必ず封印してみせる。

 

 心の中で私は決意を固めた。


設定情報10

夢愛は母親との二人暮らしで、両親は夢愛が五歳の時に離婚している。

母親はモテるタイプで、夢愛が中学生になった頃から彼氏を家にあげるようになった。

しかし長続きはしないようで、母親は現在五人目の彼氏と交際中。

夢愛はどうせまた長続きしないと彼氏と距離をとっていたが、占いをきっかけに少しずつ良好な関係となり、最近は母親と三人で外食に行くようになった。

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