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2年B組はゴミ溜めクラス

「うわぁ、マジで…」

教員用の個人タブレットに送られた来年度の人事発表のPDFデータを見て、有村は落胆した。


人事は毎年3月末に発表され、4月からの1年間に自分が担任するクラスや所属する分掌を知ることになる。


50名以上の教員の名前が並ぶ中で、自分の名前を見つけた。有村大登(2年B学級担任)。何度も確認したが、そこに記されている事実は変わらなかった。


校長が今回の人事の背景や年間目標について説明をしていたが、有村の頭の中には一切入ってこない。


時は2週間前に遡る。

職員室では、1学年の機械科の教員たちが来年度のクラス編成を行っていた。


仮編成されたクラス名簿を見て、2年B組の酷さに頭を抱えたものの、最終的には面白おかしく笑い合っていた。


「でも、これ誰が担任するんですか?くじ引き?僕はちょっと無理なんで、柚木先生にお願いしますね」


C組の担任である芦田が、B組の担任である柚木に冗談交じりに言った。


芦田と柚木が担任を押し付け合っている中、学年主任の牧田は終始眉をひそめていた。


「本当に申し訳ないけど、来年度の2年生機械科は、習熟度別の2クラス編成になりそうだ」


そう告げて以来、牧田はほとんど口を開いていない。


現1年の機械科は、習熟度別にA組25名、B組26名、C組25名で編成されていた。計76名の生徒を、来年度は習熟度上位のA学級38名と下位のB学級36名に再編成することになる。


田舎町にあるこの私立男子高校の機械科に集まる生徒は、全国的に見ても学力が低い。地元の中学生のほとんどは、公立高校を目指すが、本校に来る生徒は受験に失敗した者や、推薦をもらえなかった「落ちこぼれ」たちだ。中でも、機械科はさらに低学力層が集まっている。


町の中学生の間では、「本校に行くぐらいなら隣町の高校へ行ったほうがマシ」と言われるほどだ。


そんな高校の中で、さらに下位に位置するのがB組だ。


「ゴミ溜めクラスですね」


A組の副担任をしている有村が、担任団ににやにやしながら言った。有村は次の年度で新卒3年目になり、そろそろ担任を任されるのが本校の通例だ。しかし、問題を抱える2年B組の担任にされることはないだろうと高を括っていた。そのため、編成されたクラスの酷さに、笑いを隠せなかった。


「他人事だと思ってると、痛い目見るぞ。俺も初めての担任は2年B組だったんだから」


「いやいや、ないない。僕ですよ、芦田先生とは出来が違いすぎます。上がまともなら、僕にはこんなクラスを任せませんよ。ライオンでも、僕みたいな子供が生まれたら崖に落としませんよ」


「若手の育成に力を入れたい。今年度は、若い先生方に少し重いクラスを任せることになりましたが、期待しています」


人事発表後、校長が話していたことは耳に入らなかったが、この一言だけは有村の耳に届いた。


「サプライズがありましたね♪ 崖から落とされちゃいましたね♪ 隣のクラス同士、頑張りましょう」


人事発表の会議中、有村の個人タブレットに芦田から社内メールが届いた。


すぐにメールを確認し、とっさに後ろの席に座っている芦田の方を振り向く。芦田は、わざとらしく頷きながら神妙な顔で校長の話を聞いている。少しいらだちを覚えたが、芦田が自分を気にかけてくれていることが分かり、いらだちはすぐにこれからの1年間への不安へと変わった。


「ゴミ溜めだな」


会議後、改めて2年B組の名簿を見て、有村はぽつりとつぶやいた。

自分の経験を踏まえた上でのフィクションです。ゆる~く連載するので応援よろしくお願いします。

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