自殺代行人
契約通りに。
「一回二千五百万円です。一昔前までなら多くとも千万くらいでした。最近はお金をかける方々が多いので」
スーツの男は礼儀正しいフリ。色々書類を出した。
「あ、でもまだ君は成人じゃないのか。だったら五百万円くらいから取引できますよ。最近はそういった代行者も増えてきてるので」
優しい対応に感謝するまでである。私は書類に名前等書き込んでいった。わからないところを聞くとスーツの男は丁寧に教えてくれた。
「支払いは三割が国負担、六割は君の負担、一割は自己負担でよろしいですか?」
「はい」
「わかりました。では身分証を」
「今からやるんですか?」
「あ、また別の日のほうがよろしかったですか?」
「い、いえ、じゃあ今日でお願いします」
「はい、今からでいいんですね? 別れの挨拶など」
「はい。大丈夫です」
スーツの男は段取りよく準備する。僕を連れていき、代行場所を覗けるところへ案内した。
椅子に縛られた僕と同じ年くらいの人がいる。目隠しされてもいる。荒げてはなく、とても静かだ。
「確認しますが、首吊りでいいんですね?」
「はい」
「失血死などもありますが、刃物で動脈を切って。実感あって人気ですよ?」
「なら――――」
「でも追加で百万円ほどかかりますが――――」
「じゃあいいです」
スーツの男は手に持っていた包丁を置き、代行部屋へ入って進めていった。僕はその終始を眺め、あっけなく代行は終わった。
「こんな感じでよろしかったでしょうか?」
「は、はい」
「ではあちらの扉から――――ご来店ありがとうございました」
小さなドアノブを開け、僕は一人ぼっち。何か変わった気分はない――――けれどもう僕はアイツらの創り上げた人間じゃない。
「……どこへ行けばいいんだっけ?」
こうなって僕は何がしたかったんだ? そもそも僕は死んだ。僕って誰? 何をすればいいんだろう?――――まぁいいか。
血は薄れて、顔も揺らいで、信念や記憶も褪せていく。苦しみと共にあの人は死んだ。私は私として生きるだけだ。
――あとがき――
読解力と想像力を。