第60話 太陽のキス(最終話)
――一ヶ月後。米国ハワイ。
俺はハワイの高級リゾートホテルに宿泊している。アメリカ大統領が招待してくれたのだ。プライベートビーチがあって、木製のビーチチェアに横になり、太陽のキスを受けながらノンビリと骨休め……。
隣にはもちろんキャンディスさんがいる。ナイスバディ過ぎてビキニから色々こぼれそうだ。
二人で何も考えず。海で泳いで、食べて、寝て、愛し合う。いや~最高だ! これぞ人生!
「ねえ。ユウマ」
「ん?」
「レジスタンスには入るの?」
俺たちは、H市での戦いに勝利し霧の発生装置を破壊した。H市は解放された。
続いて、東京のT市、米国のロサンゼルスでも、米軍特殊部隊シールズとCIAの混成チームがエルフの拠点を急襲し、霧の発生装置を破壊したのだ。
もちろん、俺とキャンディスさんも参加した。
高坂議員から聞いたのだが、米国と日本はエルフとの戦闘ノウハウ、エルフや霧の情報をカードに国際社会で優位に立ちつつあるそうだ。
何とも生臭い話だが、仕方がない。
日米政府にとっては、自国民が血を流して得た情報なのだ。
米国は、米軍特殊部隊シールズの隊員、CIAのスタッフが命を賭けて戦った。そしてロサンゼルスでは、民間人に犠牲者が出ている。
日本は戦ったのは俺一人だが、多数の民間人が魔石にされた。犠牲者の数は、日本の方が多い。
平和のためとか、人道に基づきとか、各国から色々言われているようだが、両国はエルフと霧に関する情報公開を頑としてはねつけている。
俺としては、なるたけ日本が有利になる交渉をして欲しい。多分、またエルフの襲撃があれば、俺やキャンディスさんが呼ばれるのだ。タダ働きは、ゴメンだ。
ダークエルフのミアさん、犬獣人のモーリー、ドワーフのガルフは、ゲートを使って俺の住んでいたマンションにちょこちょこ来ている。
俺の住んでいたマンションは、日本政府がオーナーから買い上げ、現在では日本政府の役人さんが常駐している。
ミアさんたちが来た時は、俺が通訳として呼ばれるのだ。
そして、俺とキャンディスさんは、ダークエルフのミアさんからレジスタンスに入らないかと誘われた。地球の代表として、エルフたち霧の帝国と戦わないかと。
地球での戦いは終った……ように見えるが、ミアさんによれば、エルフたち霧の帝国は再度地球に侵略してくる可能性が高いそうだ。
俺はキャンディスさんに返事をする。
「俺は入ろうと思う。今さら会社には、戻れないよ。無断欠勤が続いたからね」
俺の冗談にキャンディスさんがクスリと笑った。
「真面目な話。エルフが来たら戦わざるを得ない。人間が魔石になるのを見るのは、もう、コリゴリだよ。戦うことを考えると、レジスタンスの支援、特に情報は頼りになる」
「そうね」
「それに……」
「それに?」
ビーチチェアに寝ていたキャンディスさんが姿勢を変えた。俺をジッと見ている。
「君を守りたい」
「ありがとう」
これは本当の気持ち。地球を守るとか、日本を守るとか、大それた考えを俺は持てない。俺は映画に出てくるヒーローじゃない。悪のエルフから世界の平和を守るなんて、とても自信がない。
でも、自分が好きな人。目の前に座っている美しい女性。キャンディスさんを守りたいと思う。愛する人を守るため、俺はレジスタンスに入る。
キャンディスさんは、嬉しそうに微笑んでいる。
「キャンディスさんは?」
「私はCIAと兼務で入ることになると思う。CIAとの連絡役ね」
「心強いよ」
これからも公私にわたってキャンディスさんとは一緒だ。
俺はビーチチェアから立ち上がり、キャンディスさんに手を差し伸べた。
「ねえ! 泳ごう!」
「ええ!」
俺はキャンディスさんの手を握り、砂浜を駆け出した。目の前には青い海。波が太陽の光を反射してキラキラ輝いている。
俺とキャンディスさんは、海に飛び込んだ。二人で泳ぎ。抱き合い。キスをした。
「愛してる」
「私もよ」
ああ、太陽がまぶしい。