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第49話 間話 大統領の決断

 ――アメリカ首都ワシントンのホワイトハウス。

 大統領執務室では、パーマー大統領が椅子に座りご機嫌だった。リモコンを片手にTVのニュースをハシゴしている。

 TVのニュースでは、日本からアメリカに無事帰国した人たちのインタビューが流れていた。

『ええ。不気味な霧で本当に怖かったです!』

『アメリカ政府が迎えに来てくれた時は、本当に心強かった!』

『アメリカ人で良かったよ!』

『大統領のおかげだ!』

『ありがとう! パーマー大統領!』

 部屋にはフルブライト国務長官とホワイトハウスの広報担当官がいて、ソファーに座っていた。二人の表情は対称的で、フルブライト国務長官はいたって冷静にTVニュースをジッと眺め、広報担当官は興奮した様子だ。

「では、大統領! プレスへコメントを発表してきます!」

「ああ、頼んだよ!」

 上機嫌の大統領は、グッドニュースに張り切る広報担当官を送り出した。


 大統領執務室は、パーマー大統領とフルブライト国務長官の二人だけになった。フルブライト国務長官は、表情を変えず淡々とパーマー大統領に質問する。

「大統領。日本での我が国の活動は遠慮なくということでよろしいですね?」

「ああ。ユウマが提案したH市での破壊作戦を全力でバックアップしよう。同盟国市街地での作戦行動になるが、手加減できるような状況ではない。君は作戦後の外交を頼む」

「承知しました」

 パーマー大統領は、CIAと在日米軍に対して『破壊作戦を完遂せよ。そのためなら戦車でも爆撃機でも好きなだけ投入しろ』と命令した。

 つまりは『同盟国ではあるが、日本政府は無視しろ』と言ったも同然である。それでも、『日本人であるユウマの提案した作戦をバックアップする』という建前を用いて、あくまで主役は日本人であると、同盟国日本に対して配慮をした。


 パーマー大統領は、フルブライト国務長官に続ける。

「残念だが岸辺総理はダメだろう……。判断力をなくしている。同盟国に対して表立った批判は不味いが……」

 アメリカ政府は岸辺総理に見切りをつけていた。日本政府が未曽有の事態に混乱するのは仕方がない。だが、何日経っても混乱を収拾できず、霧が発生した都市を封鎖する悪い選択を岸辺総理はしてしまっている。

 封鎖のせいでH市は混乱し、この混乱が続けばH市で人死にが出そうな状態だ。

 フルブライト国務長官は、冷徹な現実主義者である。内政干渉は現に慎むべきと考えているが、統治能力のない者が同盟国の国家元首の座に居座ることは、到底受け入れられなかった。

 フルブライト国務長官は、パーマー大統領の言葉に反応する。

「そうですね。では、日本の政権与党にコンタクトを取りましょう。誰か他の者に総理大臣を代わった方がよろしいでしょう」

「うん。可能であれば、速やかに交代してもらいたい。非常時に強い人物が良いね」

「承知しました。大統領の意向を、日本の政権与党に伝えます」

「頼むよ」

 こうして岸辺総理は、自分の知らないところで失脚した。

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