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第12話 エルフとの戦い方

 安全な所から撮影する……。どこが良いだろう? 俺は辺りを見回した。霧は薄くなっているが、まだ完全に晴れてはいない。公園の近くにあるマンションの通路から動画を隠し撮りする手もあるが、霧に遮られてちゃんと取れないだろう。


 俺は公園の隅にある植木の影に隠れた。ここからなら公園全体を撮影できるし、スマホのカメラをズームすれば接近した映像も撮れる。

 俺はスマホを構えてカメラをズームしたり、引いてみたりした。霧の影響はあるが、視聴に耐えるレベルだ。


 ダークエルフのミアさんとドワーフのガルフが、公園に設置されている物置の陰に隠れた。

「じゃあ、行ってくるよ」

 犬獣人のモーリーが弓矢を持って、トテトテとマンション群の方へ消えていった。

 モーリーの見た目は二足歩行するモジャモジャの犬でカワイイのだけれど、これから戦闘する緊張感がまったくない。大丈夫なのだろうか?


 エルフとの戦闘を想像すると……魔石化する粉をかけられたらジ・エンドだ。

 とはいえ、ミアさんの話によれば、遠距離攻撃は魔力の障壁で防がれてしまうらしい。人の俺は戦闘に関して素人だが、非常に戦うのが難しい相手だとわかる。

 なのにモーリーは一人で行ってしまった。


 俺が勝手に心配をしていると、マンション群の方から怒鳴り声が聞こえてきた。

「逃がすな!」

「追え!」


 俺は慌ててスマホの動画撮影ボタンを押した。

 画面には霧が掛かったマンション群が映し出されている。俺は小声で実況を始めた。

「これからエルフの先行偵察部隊と戦闘が始まります。あのマンションの方から怒鳴り声が聞こえました。レジスタンスの犬獣人モーリーさんが、向かった方角です。心配です……あっ! 来ました!」


 トットットと犬獣人モーリーが、マンション群の方から走ってきた。後ろから革鎧に身を包んだエルフの兵士が追いかけてくる。

 モーリーは振り向きざまに矢を放った。矢は兵士の一人に向かって真っ直ぐに飛んだ。だが、兵士の体に触れる前に、兵士の体の前で『バシッ!』っと音がして矢は地面に落ちた。

(あれが障壁か!)

 矢が着弾する一瞬、円形の光が見えた。矢の衝撃を緩和したのか? それとも矢と障壁が衝突した瞬間に何か化学反応的なことが起こったのだろうか?俺は驚き目を見張った。


 犬獣人モーリーは、焦った様子で悲鳴を上げた。

「うわ~! ダメだ~!」

「ワハハ! バカめ!」

「犬こっろ! 魔石にしてやるぞ!」

 兵士二人が勝ち誇った声をあげ、犬獣人モーリーが再び逃走する。


 俺の位置からは、全体が見えている。

 エルフの兵士二人、逃げるモーリー、待ち伏せるダークエルフのミアとドワーフのガルフ。

(なるほど……! モーリーは囮か!)

 俺はジッとスマホで撮影を続ける。息を殺し、ドキドキしながら成り行きを見守る。

 犬獣人モーリーが、大慌てで公園の通路を走る。二人のエルフ兵士がモーリーを追う。三人の動きにあわせて、スマホを左から右へ動かす。

 画面にダークエルフのミアとドワーフのガルフが映った。二人が手に持った大ぶりなナイフの刃がギラッと光った。

「うわ~! うわ~!」

 犬獣人モーリーが、物置の陰に隠れるミアとガルフの横を通り過ぎた。続いて兵士二人が走り抜ける。

 ミアとガルフが飛び出した! ミアは素早い動きで兵士の背後に回り込むと、兵士の喉にナイフを突き立てた。一瞬兵士が痙攣し、すぐに脱力する。

(死んだ……?)


 ドワーフのガルフは、低い位置から兵士にタックルをかまし転倒させると馬乗りになった。ずんぐりした体格から想像出来ない俊敏さで、兵士の喉にナイフを突き入れる。

 ヒューと縦笛を吹いたような声が兵士から聞こえた。兵士の切り裂かれた喉から漏れた音だと俺は気付き、気持ち悪さで眉をしかめた。


 あっと言う間に二人の兵士が仕留められた。

(これがエルフとの戦い方! これがレジスタンスの戦い方か!)

 俺は目の前で殺人を目撃した衝撃と、あのエルフたちと戦えるのだという希望と、コンビニの店員や機動隊員の仇を取ったという仄暗い喜びとがごちゃ混ぜになり震えていた。


 気が付けば汗をかいていた。袖で額の汗を拭い、続いて首元に手をやるとべっとりと汗が手のひらに貼り付いて気持ちが悪い。


(あと二人……)

 エルフの先行偵察部隊は、あと二人いる。

 レジスタンスの三人は、落ち着いていた。犬獣人モーリーが再び囮を務め、残りの二人を引っ張り出し、待ち伏せしていたダークエルフのミアとドワーフのガルフが残りの二人を仕留めた。


 俺は震える手で、一部始終を撮影した。

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