2024年2月6日放送 フラワーラジオ ポストメリディアン火曜日 八巻和行の七転び八巻 妄想【愛の劇場】#122 ベランダ
サクソフォン奏者八巻和行さんのラジオ番組
こうのすFM フラワーラジオ
フラワーラジオ ポストメリディアン火曜日(午後4時~午後6時)
八巻和行の七転び八巻
というラジオ番組の投稿コーナー
妄想【愛の劇場】
毎週パーソナリティ八巻さんから出題される【作品のテーマ】を小説風に書いた作品を投稿するコーナー。
小説の書き方を知らないシロウトが投稿コーナーに参加。
そのコーナーに投稿した作品をこちらに投稿しています。
妄想【愛の劇場】のコーナーで、絶賛!妄想仲間を募集中!!
こんな感じで大丈夫なので、コーナー投稿に興味がある人がいてくれると嬉しいです!
《番組への参加方法》
①フラワーラジオが聴けるように、ListenRadioのアプリをダウンロード
フラワーラジオを選局して、お気に入り登録
②パーソナリティ八巻さんのX(旧Twitter)をフォロー
③毎週日曜日の夜に、八巻さんのX(旧Twitter)から【作品のテーマ】が発表
④八巻さんのX(旧Twitter)のダイレクトメールから投稿
※番組放送当日の火曜日午後6時頃までに投稿できれば、コーナーの時間に間に合います。
※何故か八巻さんが初見で読むルールのようなので、漢字には「ふりがな」をふって下さい。
サイト投稿回数 第69回目の今回は………
2024年2月6日放送。
妄想【愛の劇場】#122 ベランダ
ベランダでタバコを燻らせていた。
スウェットというラフな姿で、満月の月を見上げている。
「月が綺麗ですね」
昔とある文豪が“I love you”をそう訳したと聞いた。
「愛している」
伝えることのできない貴方への想い。
月が綺麗という言葉でなんとか私の想いを貴方伝える事ができないかと、月を見上げながら考えていた。
一口苦い煙を身体の中へと吸い込む。
貴方は今、何をして過ごしているのだろうか。
煌々と輝く満月を見つめながら、一度だけ抱きしめた細く柔らかい身体の温もりを思い出していた。
互いに求めてはいけない間柄だった。
惹かれ合い求め合い、夢の様な時間を過ごした事を今でも身体の全てが覚えている。そして、再び貴方とひとつになりたいと、身体が貴方を求めている。
貴方はどうだろうか。
今は仕事を終え家庭に戻り、私の知らない顔をして日常を過ごしているのだろう。
何食わぬ顔をして、パートナーと笑い合い、そして抱かれるのだろうか。
苛立ちが神経を逆なでする。気持ちを落ち着ける様に、タバコの苦い煙を一口、また一口と身体の中に満たしていく。
苦々しい思いが残るだけで、なかなか落ち着かない。
月を見上げる。
私の中には、貴方しかもう居ない。
「ねぇ。そろそろ中に入らない?タバコもいいけど、風邪を引いてしまうわ」
「そうだね。もう終わるよ」
妻の声で我に返る。
妻は私の顔を見るなり驚きの声を上げた。そして、心配そうに告げた。
「冷たい風にあたり過ぎたんじゃないの?」
不意に妻の右手の親指が、私の左目の下を優しく撫でた。
「涙を流すまで外にいたなんて……」
妻の右手首を不意に左手で振り払った。
驚いた様な表情から愛しむように、優しく微笑む妻の表情に私は嫌悪した。
妻からの愛を煩わしいと感じた。
今の私の心には、貴方しか居ないのです。
ベランダの窓を閉めながら、私は月を見上げた。
「月が綺麗ですね」
ありがとうございました。
次回もラジオ番組の投稿コーナー
妄想【愛の劇場】へ投稿した作品の投稿になります。
妄想【愛の劇場】#123「ダンボール」