深夜の散歩
97話 深夜の散歩
「今、半分住んでるようなあのボロ空き家へは人は呼べないだろ」
「わたしもそう思う」
「じゃやっぱり……マカさんチ」
「それだと久慈姫の術は……」
「そもそも、あたしらが開き直ってマカさんチでジンギスカンしたんだから……」
「あ、ナニ? またないしょ話。 おみやげの話って、そんなに私に聞かれたくないの。大丈夫よ。近所で買ったとか言わないから」
「あ、ゴメン。気を使わせちゃて。ホントはおみやげじゃないのよ……マリアは、ドコに泊まってるの?」
「遠野文化センターの近くの老舗旅館よ」
「ああ、あそこね」
「静たちの家は……」
「遠野の駅からは、けっこうあるんだよね。でも、今日は駅前で」
「遠慮しないの。家まで送るわよ」
「でも、深夜だから、近所に気を使うし」
「駅から遠いんでしょ。なら……」
「あ、静ちゃん。マカさんだ!」
「え、こんな時間に? 散歩?」
「まえを歩いてる人、知りあい? 停める?」
「あれ、あの人は」
網切さんは、わたしたちの返事を聞く前にクルマをよせて停めた。
「?!」
「マカさん!」
「なんだ、彩か。うん、おまえら帰ってきたのか!」
「マカさん、元気だった?!」
「おお、静。お帰り!」
「おじさん、たんなる顔見知りじゃなさそうね静ちゃんたち」
「おっ、あんたは!」
「マカさんと、言ったわよね。もしかして、あの人。摩訶富仕義先生?」
「そ~いう名前だよ……本名はぜんぜん違うけど」
「あの、古書店のご主人ですよね」
「バレたか……いかにも」
あいつらと一緒じゃ違うとも言えないしな。
「そうだ、ウチでお茶でも飲まないか?」
「でも、こんな時間にお邪魔して……」
「ウチは、問題ない。一人だからね」
ん、もうすぐ夜明けだ。お化け共は帰っただろう。
「前に乗ってください家まで」
なんでお茶に誘うのマカさん。家に行ったら網切さんの記憶が。
「あ、ソコ」
マカさんチの、車が無いガレージに網切さんのクルマを入れ。
クルマから降りて門の所で。
網切さんが。
「ああ、この家……の前で一反姐さんと河ババァを見たのよ、私」
「そうなんだ、ココがオレのウチだ」
「ここで一反姐さんを見て、本当に遠野に妖怪が居るんだと、私が民俗学から、妖怪学に切り替えた場所です。ココに再び来るまで忘れてました。一反姐さんのことは憶えてたのに」
「あ、ソレは名古屋で一反姐さんを見てるからよ」
「そうか、そうよね。あなたたちが一反姐さんとお友達で……」
「おい、彩。どこまで知ってるんだ?」
「とりあえず、あたしらのコトは言ってないから……」
「そうか、なら。そのつもりで」
玄関に入ると。
「旦那様お帰りなさい」
なんと、三つ指ついた長い髪の金髪美女が。
旦那さまと言った。
いつ結婚したのマカさん!
「あら、静と彩まで。お帰りなさい。そちらの方は……」
え、ワタシと静ちゃんを知ってるの。ってことはこの人。
つづく




