再開有り
80話 再開有り
「いきなり出てきてすみません。私は中国の人々から愛されて誕生した『拳精』とでもいいますか……名はフェイといいます」
「中国人よね? 言葉がわかる……」
「私たちのような存在は言葉で会話してませんから、みんなが通じます。それに私は人間には見えません。あなた方は人外でも人の目にふれられてる存在なんですね」
「見えないだろうね、後ろの宙に浮いてる獅子は中身、ないんでしょ」
「ええ、コレも精霊化した獅子です。ほうっ!」
フェイが一声出し手を上げると獅子頭が乗り。フェイは舞ってポーズをとった。
「カッコイイ!」
わたしと静ちゃんは、拍手したが周りの人におかしな目で見られた。
何もない空間に拍手をしてるのだから。
「あなたたちは、そこの食べ放題で昼食をとる予定だと」
「ええそうよ」
「あそこはやめた方がいい」
「なんで?」
「あそこは日本人の中華だ。本格的中華が食べたきゃこの奥にある店の食べ放題の方が美味しい。行ってみなさい」
と、また一舞して消えた。
「アヤ、今の宣伝じゃないの……」
「そうみたい……」
「そっちの奥と言ってたよね言ってみようか」
行ってみると路地の先に前のより小さな店で食べ放題と手書きのポスターが。
「静ちゃん、こっちの方が安いよ。それに本格中華だからこっちにしない」
「あの拳精、客引きだね……やっぱ」
お昼、墓地から後眼お爺さんが戻った。
外国の妖怪で墓守をしている「ゴーラ」という知り合いが居るそうだ。「ゴーラ」は、墓場からは出ない存在なのだとお爺さんが語った。
ケイたちが、戻り皆で路地奥のお店に。
店内に見慣れたヒトが。
「なんと、珍しい。あんた飛縁魔……作家の方だよね?」
「二口女じゃないか」
「家でゴロゴロしてるあんたが横浜まで来るとは驚きだよ」
「ココは美味いんだ。年に一度は来る」
双子の姉で作家の飛縁魔みずちさんだ。
ハンテンの妹さんと違いジャージの上はダウンジャケットを。
「マカから旅してるって聞いたぞ」
「マカさんが、またそちらに?」
「ああ、あんたらが寄ってないかってね。今度は電話じゃなく直接編集と来たよ。なんだかんだ言ってあいつ、おまえら心配してんだよ。たまに連絡しとけよな。しかし、二人じゃないんだな。連れは?」
「お初に、わしは後眼というジジィです。飛縁魔先生のことは仲間からよく」
「よく……ろくな噂じゃないだろ」
「いや、美しいと……」
「ソレは妹だろ」
どちらも同じだと思うが。
「いつもは東京でぶらついてるケイとネコ。ソレにケイが抱いてるのは九州から来たセコだよ」
「セコじゃないわチミよ」
「コラッ人形がしゃべるな」
とケイがチミちゃんの頭をポカッと。
「へー面白いなぁそいつ。ネタにするかなぁ。すいませんーん。知りあいが、来たんで大きいテーブルに移ります」
「ハイよ。こっちのテーブルにどうぞ」
と、店員が中国なまりの日本語で。ここは中国の人の経営か。
なるほどあの拳精が推すわけだ。
あの拳精、店の人はは知ってるのかなぁ?
人間よねここの人たち。
奥は個室に近いのでチミちゃんも話し動いた。
でも料理が来ると人形化した。
なれてるのか上手い。
「ここかな、飛縁魔先生。居ます」
「あ、忘れてた。編集を呼んでたんだ。申し訳ない、人間のフリをしててくれ」
飛縁魔先生が、手を上げ編集さんを読んだ。
「アレ珍しく大勢で……あの、会ったことありますよね。ボク憶えてます? モデルの静さんと彩さんだよね」
「高田だっけ? 憶えてるのあたしら」
「美人は忘れません!」
「そう……新橋で会ったの忘れてたよね」
「新橋? ……いつのことで?」
「静ちゃん、この人泥酔してたから仕方ないよ……」
「……酔ってたのかぁ……」
思わぬメンバーでこの日お昼を。店から出て。
「いよいよ東京だが、東京の何処に行くかの」
「蒲田!」
「恵比寿!」
「ケイは渋谷か原宿じゃないの?」
「最近は恵比寿をぶらぶら……」
「じゃ近い方から。蒲田に行こう」
つづく




