金沢・天野コンビ鎌倉に
8話 金沢・天野コンビ鎌倉に
「ねぇ毎度、鎌倉って。よく書くネタあるねぇ」
「まあね。新しいネタ探しも大変だわ……」
「ネタと、言えば静と彩の北海道ヒッチハイクの旅、うけてて増刷すると聞いたよ。やっぱ美人は、とくね。あたしらが同じネタでやってもあーは売れないもんねぇ」
「そういえば、どうしてるかしら。連絡ぜんぜんしてないから。あの北海道本の静が、妖怪映画の二口女と同一人物じゃないかってネットで……」
「そーなんだろうけど。あいつ騒がれるのは苦手だよね。一時期パパラッチや芸能記者が、ヒッチハイカーを探しまくってたって」
「でもさー。また、やりたいな。あいつらと。今度は四国とか、九州とかに行ってもらわねぇ」
「さぁ行くかしら?」
「電話してみる……」
「あ、久しぶり! あたし」
「すぐ出たわね」
〘金沢さんの電話だけど、マカさんの姪っ子の志子華よね。元気? 金沢さんは?〙
「隣に居るよ、ひと月前に子供産んで復帰したとこ」
「静、ウソよ。結婚もしてないのに!」
「あ、イテッ。叩いた。パワハラだ」
「ウソつくからよ」
〘アハハ、二人とも元気そうだね。クルマ?〙
「ああ、鎌倉で仕事中」
〘鎌倉かぁ。あたしは東京に居るよ〙
「そうなんだ。会いたいな」
〘だね〙
「そうなの。金沢よ。久しぶり。いつまで東京に?」
〘今週いっぱい稼いでから出る〙
「出るって、遠野に帰るの?」
〘違うわ。西へ向かうの〙
「西へ! 大阪? 名古屋? それとも京都、奈良?!」
〘志子華ね。う〜んとりあえず……西へ〙
「ヒッチハイクしてるのか? 最終目的はドコなんだ?!」
「シズカ、よけいなことは……」
〘鹿児島〙
「九州なのか。あたしらとコラボしない?!」
〘また、旅費出してくれるの……〙
「ごめん。まだ、何も決めてないから、どうなるか……」
「やめなさいよシズカ。彼女たちにも都合があるだろうし」
「明日帰るから、夜に話そう。またな」
「北海道のときでこりてない?」
「そんな感じじゃなかったぞ。金欠旅みたいだったし」
「あっ、あぶない!」
ドン!
「跳ねちゃたわ!」
あたしらは、あわてて外に出た。クルマの前にお爺ちゃんが、転げていた。
「ほぉ……」
「お爺ちゃん、起きないで救急車呼ぶから!」
「大丈夫じゃ……少しきいたが。わしは丈夫でな」
お爺ちゃんは、杖で立ち上がると歩き出した。って、おい!
「見て、シズカ」
え、お爺ちゃんの尻に尻尾が。
あれは。
「タヌキ……」
「人に化けたタヌキよね……シズカ。はじめて見た」
「って、あんなのまだいたんだ。さすが、鎌倉。映画で、鎌倉って異界と……。金沢さん、今回のテーマは『異界鎌倉』で、いこう」
「でも……あっちの編集長納得するかなぁ」
「まあ適当にグルメとお土産記事入れとけば大丈夫なんじゃ」
池袋。
「静ちゃーん。買ってきたよ。でも、タコパー行くのに。こんなにたこ焼き買わなくても」
「アヤ今、金沢、天野コンビから電話きた」
「ええ、久しぶりじゃないかしら」
「鎌倉に居るそうよ」
「大仏さんでも見に行ったのかな?」
「仕事よ。旅行雑誌作ってんだから」
「そうね」
「で、さ。コラボしないかって」
「コラボ?」
「また、一緒に旅したいんじゃない。うまくいけば旅費はむこうもちだよ。明日の夜に話をする予定」
「でも、人間が一緒だとヘビヅカヤへは泊まれないよね。伊東か熱海のヘビヅカヤは、温泉だって聞いたわよ」
「そう聞いたね。蛇骨の娘だっけ? なら、その先で、おちあえばいいんじゃ」
つづく