名古屋で再会
72話 名古屋で再会
気がかわったと、静ちゃん突然ヘビツカヤへ泊まろうと言いだした。
「お風呂入りたいの静ちゃん?」
わけないだろ、静はひと月やそこら風呂入らなくても平気だ。食いもんだよアヤ。
「いやあ~いくら静ちゃんだってお風呂をひと月も」
「ナニ、 アヤ。お風呂がどうしたって?」
ホラ、聞いてない。
「お風呂入りにヘビツカヤへ?」
有料だが、そこらの銭湯よりぜんぜん安いうえに石鹸、シャンプーは使い放題だからね。
「そうね、でね。明日の早朝にモーニング食べに行こうかと。ホラ、朝まだ暗いうちからやってるトコもあるんだって。前回、名古屋に来たときにはモーニング食べなかったから。モーニング食べ放題ってとこもあるわよ」
静ちゃんはスマホの画面を見せて言った。
その日は名古屋のヘビツカヤで一泊し。
朝から、早朝喫茶店めぐり。
四軒目で。
「珍しいね、あんたらヒトじゃないのね」
「それが、わかるおねえさんは?」
都会の連中はホント、妖気が感じられない。
「う〜ん、ほのかにあんこのかおり。おねえさんは小豆とぎの一族?」
「あら、当たり。あなたたちは、何処のお化け?」
「お化け……あたしらは化けてないんだ見たまんま」
「おや、何処かで聞いた声だと思えば二口の……」
店の奥からコック姿の小柄なおじさんが出てきて。
「やっぱり、『小豆あらい』」
このおじさんがウワサでしか聞いたことのない小豆あらい。
「お父さん、顔見知り?」
「関東をうろうろしてたときに知り合った」
「二口だけど、今は人間名があるんだ草双紙静よ。こっちは親友の二面のアヤ」
「そうか。俺も人の名は亜月豆太という。娘の小間芽だ」
「よろしく。ウチのあんトーストは美味しいよ。食べてって」
「あんトーストはモーニングにも付くからモーニングの方が得だぞ。二口は大食いだからなぁ一斤分サービスだ」
「ありがとう小豆あらい。名古屋に寄って良かったよ」
カリャラン
早朝の客だ。
「いらっしゃい!」
「ジイさん、ちょっと顔見せるだけって。なんで三日も滞在してんのよ」
「まあまあ旅はせこせことするもんじゃない。ココの店のオーナーは。おつ、豆太ちゃん」
「誰かと思えば後眼じゃないか!」
「あ、お爺ちゃんたち!」
「姐さんたちだ!」
「なんか、久しぶりニャ」
「そうね、でもそんなにたってないよネコ」
ケイたちは、まだ関西に。もう関東かと思ってた。
つづく




