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彦根コ発見

66話 彦根コ発見


 シンさんは、お金をおろしに出た。


「琵琶湖にもヘビツカヤがあったんだな。京都で泊まった琵琶湖近くのとは別に……。だいたいあそこの反対側だね」


 彦根市のヘビツカヤは、京都よりまえに出来たと聞いた。 

 やはり、別館はヘビツカヤの裏手にある古い旅館が閉めたのを買い取ったらしい。


 女将は彦根城に巣くっていたという蜘蛛姫ヒコナだ。姫と言っても中年オバさんの姿だ。


 娘の姿がいいが。その姿だと女将としての風格やいげんがないと、気乗りしない姿でいるそうだ。

 若い従業員は、琵琶湖のカッパや魚妖怪の子とかだそうだ。


 暇なときに女将が化け方などを教えてるという。

 だからか、完璧な人間の仲居も居れば化けぞこないも居る。

 そういうのは、妖怪の宿にしか出せない。

 本館が忙しいときには化け上手は、手伝いに行くそうだ。

 蜘蛛姫は城妖怪でも、ひとり楽しんでる刑部姫とはちょっと違う。


「シンさん、城も見てくるとか言ってたね。あたしらもナニか食べに行こ。お昼代ういたし」


 と、彦根の街を。


「あ、ネコのゆるキャラが」


 テレビで見た兜をかぶった白いネコだ。

 戦が嫌いな妖怪が兜をかぶるのはファッションみたいなものかな。

 でも、あのネコは妖怪ではなかった。


「ネコと言えば、ケイたちは今頃ドコを走ってるのかなぁ……」

「もう大阪あたりかもね」


「大阪かぁ砂掛けの舞ちゃんとか橋姫とか、もう懐かしいなぁ〜」


「でも、帰りは大阪へは行かず岐阜方面でしょ」

「うん、シンさんは、どう出るかで明日の行動を決めよう」


「おや、君たちも……街に」


「シンさんだ!」


「ヘビツカヤの別館は空いてたか?」

「そっちこそ。ヘビツカヤの別館ならいつもガラガラさ。混んでるの見たことない」


 まあ妖怪しか、泊まらないからね。それに旅する妖怪は意外に少ない。

 あの九州のカッパのオバさんは珍しい方だ。


「そうか、良かったな。コチラも空いてたシーズンじゃないからな」


「シンさんは、どういうルートで東京へ帰るの?」

「そうだな、一度も行ってない大阪に行こうかと。来るときは通り過ぎたんだ」


「そうか、じゃココでお別れだね。あたしら岐阜方面に行くから」

「そうなのか、名残惜しいなぁ……よし、夕飯はオレが……あ、ただし一人前だぞ、静ちゃん」


「ホウ、それは嬉しい。値段に上下はないのね」

「あ、まぁ……限度を知れよ。オレもカネはあまりないからな」


「了解!」



 翌日ヘビツカヤの前で別れた。

 はじめは静ちゃん、奈良や三重も行ってみたいと言ってたが、ルート的には戻る。

 なんだかんだ言っても意外と負けず嫌いなトコがあるから、先に進む方を選んだ。



「岐阜かぁ……福井方面もすてがたいが、どんどん東京から遠ざかるし……金沢、富山は、次の目的地としてとっとこうか。ゆっくりしたいからね。うまくクルマに乗れれば今夜には東京へつける」


「同じ道を通るけど……」


「そうだけど、寄らなかったトコもあるしね」


「おい、クルマをつかまえてから考えろ。歩きだったら一日じゃつけないぞ東海道膝栗毛」


「ナニ言ってんの醜女」


「まあ同じ道でもクルマは違うから、楽しく帰ろう静ちゃん」


 昼間はクルマは多けど、意外と停まらない。


「彦根から岐阜、クルマで高速使えば一時間ちょっとね。歩いたら12時間半はかかるわ。もちろん歩く気はないけどね。でも、走ったら……」


「静ちゃん、見て」


「エッホエッホ」


「なんと時代錯誤な、カゴじゃないの」


 乗ってるのは、あきらかに人じゃない。


              つづく

  

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