表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/100

奇妙な客

62話 奇妙な客


 延岡まで、油崎さんと水天坊さんのクルマで。


「ホントに大丈夫? 暗くなったよ。なんならウチに泊まってもいいよ」


「大丈夫、暗いだけでまだはやいから。それにあたしたち夜にはなれてるから」

「そう……。じゃ気をつけて」



 次は、別府方面を目指しクルマを探す。


 国道を歩いてて見つけたお店で夕食を食べてると。店内に妙な客が。

 店内なのにフードをかぶったままで食事をしている。


「アヤも気がついた。アレはヒトじゃないよね」

「静ちゃんの方が敏感だから、わたしより早く気づいたのね。アレは妖怪かしら?」


「どうかな? かといって狐狸の類でもなさそうね。ほっとこ……」


  ガシャラン


 わっ、食べ方下手なのか食器を落とした。


「ああ、お客さん。大丈夫ですか。私がやりますから」


 店のオバさんが落ちて破れた食器をかたづけながら。


「大丈夫? 大分手が不自由になってきたんじゃないかい」


 どうやらオバさんは、あの客のことをよく知ってるようだ。


「すまない……」


 奇妙な客はテーブルにお札を二枚置いて立ち上がり店から。


「お客さん、お釣り!」


「壊した食器代も……足りるかな?」


「いいですよ、安物だから」


「そうか……」


 出ていった。


「静ちゃん、見た? チラッとだけど指が細くて長くなかった」


「そうだった……カッパかなぁ?」

「どうかなぁ……ホント、多いのね九州は。でも、アレはカッパの指とは……」

「カッパにもイロイロ種類があるから」


 おい、わたしゃアレはカッパの妖気とは思えなかったぞ。


 そうなの。カッパじゃないのね。


 私がいままで感じたことのない妖気だ。

 おそらく静も。


 「なんだろうね?」


「アヤ、気にしすぎ。オバさ〜ん。餃子ニ人前追加して」


 食事を終えて駐車場で。

 本州ナンバーのクルマがないかと。

 探した。


 ヒゲのおじさんが大きなトラックに乗るところに。

 トラックには大きく鳥取水産と。


「ナニ? あ〜ヒッチハイクね。何処に? 九州を出る。 残念だなぁ俺、九州に来たばかりでコレから鹿児島に行くんだ。あ〜残念だな〜。おねえちゃんたちみたいな美人と九州まわれるなら良かったのに。残念だ……」


 ダメだった。


「キミたち、九州から出たいのかい?」


 わたしたちより、まえに店を出たあの客だ。

 出入り口の横のベンチに座り。


「そうだよ。コレからウチに帰るんだ」


「ウチか……ゴーホームだな。早く帰りたいだろ」


「まあ……」


 競争してるなんて、なんか言いづらい。


「わしがおくってあげよう」


「え、クルマ乗せてもらえるの?」


「悪いが、クルマじゃないんだ。乗り心地も良くない」


「そんなの、気にしないよ」


「それじゃついてきなさいフォロミー」


 相変わらずフードは深くかぶっていて、夜なのでよく顔は見えない。

 しゃべり方や声で若くないとわかるけど。


 店の裏の暗い森に入る小道に。


 わたしたちをとって食うような元気もないヨボヨボとした歩きだから問題ないとついて行ったら。


 池だか、沼のような場所に出た。


 彼はなにか、わからない言葉を言うと手を上げた。


 袖が下がって長めの細い指が三本。


 暗くてよく見えないが水の中からナニか生物が。


 クォクク


 アヤ、顔を変えるよ。私の方が夜目がきく。


「おい、ジイさん。こいつは亀か……」

「静、よく見ろ。でっかいスッポンだ!」


「コイツが山口県あたりまで行ってくれるよ。乗りなさい」


「ありがとうジイさん。でもこんなのに乗って行くって海を渡るのかい。海一反とちがい潜ったらヤバいだろ。あたしら。甲羅のどこかにフタでもついてて中に入れるのかな?」


「大丈夫だ、海じゃなく空だ。じゃ○∞Ⅱ♀✕☆△」


「なに?」


 オジィさんがわからない言葉を言うと、わたしたちが乗ったスッポンが宙に浮いた。そしてゆっくり空に上がっていく。


 月明かりでスッポンの全体がわかった。軽自動車より、大きい。


 ある程度まで上がると前に移動した。


「スッポン飛んでる!」


「あんたら、もしかして妖怪か?」


「スッポン、しゃべれるのね」


「ああ、はじめアレが、あの細いのだ。アレに会ったときに我らの言葉で話しかけてきた。それから会話はスッポン語だが、わしは妖怪なんであんたらとも話せる。オバベ沼の主でスッポン翁はわしだ」


「おばべ沼のヌシなのね。おばべ沼、へんな名前ね。そうよ、あたしら妖怪よ。あたしは静。後ろのが相棒のアヤだよ。乗せてくれてありがとう」


「ああ、そうかい。沼の名は、昔は違う名だったのぉ……忘れたが。しかし、わしなぁ飛ぶのに限界があるから。下関のちょっと先あたりまでだ」


「いいよ、いいよ。そんだけ飛んでもらえるなら言うことナスだ」


「ナス?」


「気にしない。気にしない」


                つづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ