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歌好き姐さん

54話 歌好き姐さん


「久慈姫じゃろ……なんだ。その姿は?」


「河バァ。久慈姫は、どこで見たのかそのかっこうが気に入ってて……」


「外国人は遠野でもよく見かけるようになったが、その金髪に黒のコートは目立つの。それにそんなかっこうだとマカ坊がうるさいだろ」


「あ、いやそれがさ。ご主人公認なんだ。金髪碧眼は好みなんだそうだ。あたしも異国の子供に化けようかな」


「邪邪娘よ、マカは、子供には興味ないわ。なるのなら私のようなセクシーな大人だ」


「べつにあたしはご主人に好かれたいわけじゃないから」


「まあお主らみたいに变化が得意だといいが、わしはこのままじゃ。ときおり羨ましいわい」


 ドンドン


「一反姐さんだ。二階から入るのは姐さんしかいない」

 窓を開けると、やはり。


「お帰り姐さん」


「おい、のど自慢がはじまる。テレビをつけろ!」


 姐さんの推し番組だ。姐さんは、日曜日の昼にはどんな遠くからも帰ってきて、素人が歌うこの番組を観る。

 河バァが、コタツの上のリモコンを取りテレビをつけた。


「まにあったな、丁度一番手が歌うとこだ」


   カーン


「見ろ、一番からカネ一つだ……って、でぁあ。なんだオマエは!」


「妖怪も驚く……。久慈姫だよ。姐さん」


「久慈姫か、なんだそのかっこうは?!」


「どうだ、キレイだろうマカの好みだ」


「なるほど、でもマカは妖怪なんかあいてにしないよ」


「それがさぁ姐さん、ごにょごにょ」


「マカが久慈姫を……信じられない。あの美貌の静だって……。ホントかじゃじやめ?」


「って、姫が……」


「まえの夜這いは失敗したんだろ」


「ああ……だが、ちゃんと好みを聞いて変身したら、向こうから抱きついてきた。よっぽどこの姿が好きなんだろうフフフ……」


  キンコンカンコンカーン


「見なよ、この出場者は人間じゃないよ。見事にカネ鳴らしたよ!」


「ん、こいつは……邪慰安(じゃいあん)じゃないか。下手な歌で人を癒やすという」


「河バァ。でも、こいつ、歌上手かったよ。カネも鳴らしたし」


「わしは昔、聞いたが酷かった……誰かに教わったのかもな」


 次は歌謡曲歌う太ったオバさん。まあまあかしら。


「おぁあ、今の歌で合格かよ。私の方が上手い!」


「あんたも出りゃいいだろ……」

「ババァ、この姿でテレビ出たら世の中ひっくり返っちまうよ」


 確かに……もう一匹变化不能なのが。


「姐さん、出たいのか『のど自慢』。あたしと組めば出れるぞ。前に自分で作ったコスプレで出た人間がいたよね。あたしが姐さんを……」


「おい、仮装大会じゃないぞ邪邪女!」


「そーゆーのいっぱい出てるじゃないかババァ。あたしにまかせな」


 それから二ヶ月後。



 佐賀のモデル事務所。


「アヤ、大分仕事したから、そろそろ。出発しようか。金沢さんたちはもう東京に戻ったし……」


「悪いことしちゃったね……。鹿児島で会う約束だったのに」

「やっぱりボンビー旅は、しんどいからね。せめて食う分は稼がないと楽しくない。お昼食べに行こアヤ」


「おい、アヤ、静。見てみろ! テレビ」


「どうしたの醜女。テレビに宇宙人でも出た?」


 事務所の控室のテレビをお弁当食べながら見てるモデル妖怪のコたちも、立ち上がった。


「テレビに妖怪がまんまで、出てる!」


 見るとわらべ姿の頭に一本角を生やした女の子が体に巻き付けた一反妖怪を持って歌ってる。


「あれは、姉さんを巻き付けた邪邪女じゃないの」

「あの声は……歌は一反姐さんだよね」


   カンカン


 カネ二つだ。


〘どうも、残念でしたね。腹話術で歌。うまかったのにねぇ。 五月さんどうでした?〙


〘それは、何かのキャラクターなのお嬢ちゃん? 口がまったく動いてなくて腹話術は最高にうまかったのにね。いいものを見ました〙


 腹話術じゃないよ。邪邪女が一反姐さんの髪の中に手を入れてただけだ。

 そして、ただ一反姐さんが歌ってた。

 でも。


「よく出れたなぁお昼にはちょっと怖すぎてなかった姉さんの顔。あれ、緊張しまくってたよな笑っちゃうねぇアヤ」


                  つづく

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