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戦車の町

5話 戦車の町


 戦車が、クルマの横っ腹に!

 わたしと静ちゃんは、思わず抱き合った。


 と、戦車はぶつからずにクルマを通り抜けた。


「お二人さん、戦車は何処ですか?!」


「今、クルマを通り抜けた……」

「アヤ、今のは実体ではないようよ」


「そんな物が、見えたんですか! あなたたちは『見えるヒト』ってヤツですか。霊感が強い……」


「妖怪とかは見えるけど……」

「幽霊とかは、あまり見ないよ。あたしら。でも……アレは?」


「あ、向こうの道路にも戦車が」


「ホントだ、でもアレはお二人さん……」


「あの戦車は、あんたでも見えるの?」


「アレは、キミたちが見たのより小さくない? トラクターか、なんかを改造したイベント用戦車だよ。上にコスプレしたが乗ってるだろ。平日にアレが見れるのはラッキーだ」


 そうなのラッキーなの?


「後ろからも戦車が! アレは?」


「ゴメン、ミラーで見てるけど後ろにはクルマもいないよ……きっとそれは幻だ……って、言うか、霊感の強い友だちに聞いたことがある。この町には、ファンの思念が走らせてる戦車が見えたと」


「ファンの思念……なのね。恐るべきヲタクの狂気とでもいいますか」


「なんでも、いきすぎると怖いよね……。あの駐車場に停めて町中を歩いていいかな?」


「ええ、遠慮なく」


 わたしらもヲタクのおにいさんについて行くコトに。ちょっとした観光気分。


 おにいさんは、観光ガイドのように、この場所はアニメの劇中では、こうだ、あーだと説明してくれる。


 まったく知らないアニメなので、よくわからないが、おにいさんがそうとうのファンなのは、わかった。町の人とのふれあいで愛情も感じた。


 途中アニメ関連の食べ物なんかも食べつつ歩いて行く。

 やはりアニメファンの聖地巡礼者と出会い、情報を聞いたりした。


 おにいさんも静ちゃんに負けずよく食べる。


 聖地をひとまわりしたとこで。


「うわあーさすがに食べすぎた。おねえさん、よく食べたね。負けるわオレ」


「そう? あたし、まだいけるよ。あ、あっちの方に海鮮丼屋が」


「行ってきなよ。オレは駐車場で待ってるから」

「わたしも」


「じゃ行ってくるわ」


 わたしとおにいさんは途中の自販機で飲み物を買い駐車場のクルマに戻った。


 そしたら、車内のプレイヤーでご当地のアニメを見せられた。

 おにいさんは、町中みたいにさっきの巡礼の地を説明しだした。


 町中の戦車は、この人達ファンの思念が創り出したんじゃないかと、わかった。


 帰ってきた静ちゃんは、夜食にするからと海鮮丼をいくつか持ち帰った。


 おにいさんは、都内の千住というトコに住んでると北千住の駅までおくってくれた。


 もう日が暮れて夜に。


「どうする静ちゃん。ここからなら電車でも」

「うん、だね。そうだ、ケイに電話しとこう……」


「うぉーい静ぁ彩ぁ」

「上から声がする」


「夜空に浮いている生首……」


 一反姐さんさんだ。

 わたしたちは人目につかない場所へ。


 一反姐さんが降りてきた。


「見てたよ海鮮丼。まだ、あるかい? そいつで都内なら何処でも乗せてあげるよ」


「なら、寝肥の事務所まで乗せてってよ」


「あいよ!」 


「あ、ゴメン海鮮丼。クルマの中で食べちゃた」

「大丈夫。わたしのあるから……」


 こんなこともあろうと、二人まえに分わけておいて正解だった。


「乗りな」


「もしかしたら姐さんは、ずっと空に?」


「ああ、老夫婦のクルマに乗ったのも見てた」


「九州へ先に行っててても良かったのに。じゃとりあえず寝肥の事務所へ」


 一反姐さんに乗り飛んでると。


「ナニが起こるかわからないからね……。あんたらを見てると退屈しないし……。あ、ホラ。あそこ事故ってるぞ」


「わぁホントだパトカーの赤い光がキレイだね」


「スゴいなぁトラックが二台横倒しでその後にクルマが玉突き状態だ……アレは何人か死んでるよ静」


「クルマに乗ってたら巻き込まれたかもしれないね静ちゃん」


「アヤ、お腹すいた」

「ダメだよコレは一反姐さんの分だから……」

「見えると食べたくなる……」


 なんてコトを静ちゃんが言うから丼の入った袋をリュックに入れた。


 電車も走ってるのが見えた。

 蒲田にある寝肥の経営するモデル事務所までは、電車より速かった。

 空は違う。


 しかし、一反姐さん。この調子で一気に九州まで飛べるんじゃないのか。

 それは、姐さんの体力もあるが。


 静ちゃんは、そんなのつまらないと。ヒッチハイクをして行くのが楽しいと言うので、姐さんに乗って行くのはよした。

 まあたしかに旅はゆっくりの方が楽しいとわたしも思う。

 クルマに乗せてくれた、いろんな人たちが頭に浮かんだ。


「なんの連絡もしなかったけど出版関係の方のシズカちゃんはどうしてるかな?」

「こっちからもしてないから音沙汰ないね」


 リリリーリーン


「電話なってるよ、それって」

「ケイだ!」


〘姐さん、久しぶり!〙

「今、ドコに居るのケイ?」

〘ホテルです。姐さんに教わったヘビ屋、タダだから転々としてます〙

「ヘビ屋……ヘビヅカヤか。あそこはアパートじゃないわよ」

〘姐さんは、遠野で?〙

「違うわ、東京上空」


〘え、東京に来てる?!〙

「今日は、寝肥の事務所に行くからまた明日ね」


 と、静ちゃんは簡単な会話して電話をきった。


「おっと、寝肥んのとこに連絡しとかなきゃ」


〘あら、お久しぶり静ちゃん〙

「いつから、そんな呼び方?」


〘彩ちゃんがいつも……そんな事はいいわ。で、ナニ?〙

「今からそちらに行くけどイイ?」


〘今、お風呂屋さんの脱衣場なんだけど〙

「事務所に行きます。一反姐さんに乗ってて、アヤも一緒よ」

〘そうなの。じゃ事務所に電話入れとくから〙


「静ちゃん、もう下に事務所が」


 一反姐さんは、事務所の上を旋回してゆっくり降りた。すると事務所から、メイクの妖怪お歯黒べったりが。


「今、社長から電話もらったわ。お久しぶり静ちゃんに彩ちゃん」


 あわてて出てきたので顔に目がない。


「あんたにまで、そんな風に呼ばれてたっけあたしたち」


「そんなコト気にしない。今日のお昼に飛縁魔も来たんだよ」


                つづく 

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