福岡へ
46話 福岡へ
北九州市でクルマから、降りたわたしたちは鹿児島で合流を決めて別れたけど。
「ねえ、四人は多いよね。あんたたちは、あんたたちで鹿児島に向かって」
「せっかく一緒になったのに」
「だから、四人もいたらクルマ停まらないよ。さっきまでクルマぎゅうぎゅうだったでしょ」
「あのクルマ小さいニャ〜」
「トラックだと、もっと狭いわよ。それに大きいクルマとか、めったに停まらないから。アヤ、あたしらはまず福岡目指そう」
と、静ちゃんは段ボール紙に福岡と書いて首にかけた。
「なら、あたしらは佐世保へ行ってハンバーガー食べよう」
「そっちも悪くないわねぇ」
「じゃ姐さん、お先に!」
ウソ、ふたりの前にもうクルマが停った。
「すみませ〜ん、佐世保のおばあちゃんが危篤と聞いて早く行きたいんです。わたしたち姉妹乗せてくれまんせんか」
「あ、行っちゃた……」
「負けられないわね、アヤ」
べつに競争じゃないんだから。静ちゃん。
「なんなのもうお昼過ぎたのに一台も停まらない」
コンビニで買ったパンを食べながら、わたしたちは福岡方面に向かって歩いてる。
「ケイたちは、今頃佐世保でハンバーガー食べてんのかな」
「そうかもね。福岡、クルマならすぐに着くんだよね」
「スマホで調べたら北九州からお昼前には着いてただろう」
そこへ。
「おねえさんたち、何処へ行くの」
クルマが停まった。なんの冗談か十人くらい乗れそうな大きなクルマ。
「福岡、乗せて」
「いいよ。乗りな」
ドアを開けると、数人が乗ってた。
「おじさん、相乗りバスじゃないよね。あたしらお金ないよ」
「違うよ、皆ヒッチハイカーだよ」
それぞれ年齢が違った人たちだ。
皆、コクリと頭を下げた。
「バスに乗ったみたいだよ」
「二人分、空いてるだろ座ったらシートベルトしてね」
あ、この妖気。このクルマに人でない物が居る。
静ちゃんの顔が変わった。
やはり気づいたのね。
隣に座った大きな鞄のオバさんが頭を下げた。
このオバさんだ。
「何処からか来たのおふたりさん?」
「関東周辺です。オバさんは?」
「私は九州。鹿児島からグルっと宮崎、大分とまわってるんだよ。反対側通って帰るとこたよ。旅好きでね、おふたりさんもかい?」
「ええ、旅はイイですね……わかった。オバさんは……」
わたしより近い席の静ちゃんが、小声で。
「オバさん、カッパだね」
「だよ、あんたたちも人外だろ。旅をしてるとたまに会うよ。でも妖怪のヒッチハイカーは珍しい」
「海が見える」
窓側の女性が。
「もうすぐ福岡だよ。お二人さんは九州は初めてかい?」
「ええ、はじめて。鹿児島に行こうと。あっちに知り合いが」
「そうかい、鹿児島に来たら寄って……」
「あれ、運転手さん。何処に?」
「海岸に寄って行きます。私の用でちょっと。かまいませんよね、皆さん」
「いいですよ」
「どうぞ」
「かまいませんよ」
クルマには、男女三人の内、カッパのオバさんとわたしたちともう一組の男女が乗っている。
男女のヒッチハイカーって珍しいかも。
クルマは海岸の方に降りて行き。
殺風景な浜辺で停った。
「皆さん、良かったら降りて手足を伸ばして。私、ちょっと出てきますから」
と運転手の人は、古い大きな漁師小屋へ。
「私は、海の水はカラいから苦手でね……」
と、カッパのオバさんは頭に布をかぶってクルマから降りたがクルマに寄り添っている。
他の連中は海の方へ。
真っ先に向かったのはカップルだ。
「なんか、空があやしくなってきたね。静ちゃん」
「痛い、なんか降ってきた」
「石だ、石が降ってきた」
曇った空から石が。
「アヤ、石は降って来るじゃないわね。海の方から、飛んできてる」
「あんたたち、クルマに乗りな!」
「ありゃなんだ?!」
「海からなんか来るぞ!」
「人よ。人が海の上を歩いてる!」
わたしたちは、カッパのオバさんのとこまで戻ると石の雨はやんだ。
「『いしなげんじょ』だ。それに海から来るのは海女よ!」
「いしなげんじょって、妖怪?!」
「あの運転手、なんか怪しいと思ったのよね。みんな、早くクルマに戻って!」
「海女って、なんか広島のコとは違うわねアレ」
つづく




