二台目のクルマ
4話 二台目のクルマ
旦那さんが機嫌が良いのか、いわき市を通り越し茨城県に入っても停まらず。
水戸まで。
「ありがとうございます。また会えるとイイですね」
ありがたい。水戸のドライブインでお昼までご馳走になり。
お腹もサイフも助かった。
ホントに良い夫婦に出会った。
「それじゃねぇ。今度は、あなたたちの旅の話聞かせてね」
妖怪は詳しくないと言っていたお婆ちゃんは、妖怪との出会いが多く。いくつも妖怪を見た話を聞いた。わたしたちとの出会いも、その一つだけど。
「あ、名前もナニも。聞いてなかった……クルマって、まえのと違ってたよね」
「だね。でも、まえだってそうだったけど、また会えたから。また、いつか会えるかもね。旦那さんは、静ちゃんを気に入ってたよね」
「なんでもどんどん食えって言ったから鍋を一人で食べたら引いてた……食べすぎたかなぁ」
「爺さん、サイフの中見て汗かいてたぞ!」
「ウソ言わないで、醜女。あんたの位置からじゃ見えないでしょ」
「知らないのか? あたしゃ彩の視界と共有してるんだ」
「知ってたわよ……」
「どうするの。今回も埼玉、寄るの? それだとルート変わるわよね」
「岩男のトコね。毎度世話になってるから……あ、でも行くとまた……お金せびりに行くみたいだから、今回はパスしようか」
「そうだね。いつも助かってるけど」
ドライブインの駐車場で次のクルマを見つけるコトに。
「あ、このクルマは東京ナンバーだ」
「でも、帰るとは限らないよ……」
と、そこへ。
「おや、おねいさんたち。オレのクルマにキョーミあんの? いいでしょ、この絵。わかる」
そのクルマのあちこちに戦車と女の子の絵が。
「クルマより、ナンバー。あたし、クルマのコトはわかんないから。その絵も」
と、静ちゃんはダンボールの札「東京」を見せた。
「ヒッチハイクしてんのキミたち?」
「ええ、乗せてくれる?」
「いいけど……寄り道していくんだよね。大洗なんだけどイイ?」
「べつに急ぎ旅じゃないから……アヤ、いいわよね」
「いいよ」
「そう。じゃ後ろに乗って」
乗せてくれたのは赤いキャプをかぶった、おにいさん。サングラスで目は見えないけど、なんとなく三十代前後じゃないかと。
若いのは、たしかだ。
黒い手袋は指が出ている。ソレはドライバー用のヤツかな。
テレビで見たことがある。ちょっとカッコいい。
座席にはクルマの絵と同じらしい縫いぐるみが何体も。大きいのから小さいのまで。助手席に一番大きいのが。
「大洗って、何があるの? 海鮮とか食べるの?」
「さっき、お昼食べただろ。静じゃあるまいし」
「黙れ!醜女」
「え、ナニ?」
「なんでもないです……」
「大洗はね、あるアニメの聖地なんだよ」
「あ、そういうの聞いたことある。アキバによく行く友だちが言ってた聖地巡礼とか言うのよね」
「あ、ソレだ。実はオレ、アニメオタクでさ。まえから行ってみたかったんだよ。たまたま水戸に用が出来てね、近いから寄ろうと思ってたんだ」
「へえー。何かあるの? この戦車の縫いぐるみカワイイわね」
「情報では、お店にグッズがあったりキャラクターの立て看が置いてあったりと町ぐるみでそのアニメを受け入れてくれてるとか。場所によってはポスターが貼ってあるだけのトコも」
「おにいさん、聖地巡礼とかよく行くの?」
「行ける範囲ならね、関東周辺は、だいたい。大洗は、はじめてだよ」
しばらく行くと大洗町と書いた看板にアニメの絵が見えた。
本当だ、アニメの絵があちこちに飾られてる。
「うそ、スゴイ。向こうから戦車が走って来る!」
「え、そんな。いくらなんでも。ドコ?!」
「ウワァーぶつかる!」
つづく