噂の真相
37話 噂の真相
「コレは牙次のカタウデの八に聞いた話ですが、二口女の姐さん、徳川の埋蔵金を見つけたって本当ですか?」
「また、ソレか。まえにもイタチに襲われたときにも同じことを言われたわ。誰がそんなウソを流してるか知らないけど。まったくのホラ話よ。そんな物を見つけてればヒッチハイク旅なんてしてないわよ。ソレを言ったのはカワウソね、取っ捕まえて、誰に聞いたか聞き出してやるわ」
「伝助よ、その話はまゆつばだ。姐さんが大金持ってりゃウチで、こんなに食わんだろ。な、よっぽど腹が減っていたんだろう。見ろ、この食いっぷり」
テーブルには静ちゃんが前と後ろの口から食べた空き皿の山だ。
「うほぉ見ただけで胃が痛くなる食いっぷりですなぁ姐さん」
「ご馳走してくれるて、言ったんで。ここぞとばかり……。いや、ご馳走さまです。大将、さすが太っ腹」
「ああ、まあ……。わかったか伝助。二口女の姐さんが徳川の埋蔵金を見つけたなんて大嘘だ。川獺と牙次をここへ連れてこい!」
「静よ、イタチに襲われたと言ったな」
「そうよ姐さん。あのオカマのイタチだ。知ってるでしょ姐さんも」
「カマイタチが、カワウソに話したとか……」
「どうかな? カマイタチのヤローがアヤを傷つけたんで地獄に送ってやったから……」
「地獄ねぇ……実はな静。カマイタチに静が徳川の埋蔵金見つけたと言ったのは私なんだ」
「えー! ホントに?!」
「久しぶりあのカマイタチと、出合って茶を飲みながら話してて静の話をしたんだよ。その頃静は、旅に出てると話をして、シャレのつもりで静が徳川の埋蔵金を見つけて、日本中を豪遊してると……すまん。静! まさか、ヤツがソレを真に受けて静を襲うとは思わなんだ」
そう言うと一反姐さんは、ヒラヒラの頭から全体を畳に付けた。
「ほう、ウソを言ったヤツまで、ココにおったぞ伝助!」
「姐さん、あきれてナニも言えないわ……」
コレでカッパとの話は一件落着。
牙次弟カッパと、カワウソが店に来た。
やはり話はカマイタチから聞いたとカワウソが。
コチラもふたり土下座して静ちゃんに謝った。
ちなみにカマイタチは、地獄から抜け出し何処かを放浪しているらしい。
わたしたちは、四万十をあとにした。
一反姐さんは、わびだとわたしたちを乗せて松山まで飛んでくれた。
そして、金沢さんたちと会うコトに。
「アヤ、一反姐さんに乗って来ちゃたから、海沿いのネタ、なんにもないよ……どうしよう。マリアみたいに一反姐さんに乗ってきたとか言えないし……」
「そうだね、四万十でのカッパの話も出来ないよね」
「あ、ふたりの車が……」
約束のお店の駐車場に入ってきたのが見えた。
来るなり。
「あたしら、おかしなものを見ちゃたのよ。コレ見て!」
と、デジカメの画面を。
「あ、一反姐さんだ!」
「やっぱりこいつが、静の言っていた妖怪一反姐さんだよね」
一反姐さんの飛んでる姿が顔はわからないが、かなりハッキリ動画で撮られてた。
「コレは何処で?」
「佐田岬半島で、九州方面から飛んできたのを……あんたたちは見なかった?」
「いいえ、あたしたちその辺へは行ってないから」
「そうかぁ……でも、コレ絶対に妖怪よね」
「まえに、そんなのをテレビで見たわよ。ビニールハウスのビニールが飛んでたとか、あと凧だったとか。だいたいそういう物よ」
「金沢さん、つまんないコト言わないでよ。妖怪研究家の静はどう?」
「自称だけど……。本物かもねコレ……ホラ九州は特に一反妖怪の本場だし。岩手に居るんだから、もっと近い四国にもいるんじゃない。空飛んでるからタヌキじゃないわね」
「こういう動画、テレビとかに売れるかな? 色々持っててみようかな……ところでさぁ。静たち、ずいぶん早く着いたよね。四国の旅、楽しまなかったの」
「四万十までは、なかなかクルマ乗れなかったけど四万十でさぁいいクルマに乗れたの。松山まで直通のトラック。その運ちゃんがいい人でさぁご飯も奢ってくれたしね」
多分それは、カッパの頭だ。さすが静ちゃん。うまくウソをでっち上げた。
悪知恵は働くな静は。
こらこら、そんなコト言わないの。
「直通だから、景色とか見てるヒマなく着いちゃたんだ。運ちゃん、デカくてロン毛で髭面で土踏大吾ってーおっさん」
「名前も言ったのか。豪快そうなおっさんだな」
「四万十の主みたいなおっさんだった」
みたいじゃなく、四万十川の長だよね。
「ホント、イイおっさんだったよ。おっさんのおかげで、大分食費がういたかな。昼は腹いっぱいたべた。あ、そろそろ……ねえ、夕飯は何食べる?」
つづく




