竜馬連
33話 竜馬連
深夜、二時もまわった頃に高知内に入るが、この時間では、どこも開いてない。
宿は無理みたいだ。
24時間営業のコンビニでは買い物は出来るが寝ることは出来ない。
「ふわぁ〜丸亀の川姫んとこ出てから寝てないねぇアヤ」
コンビニを見つけた。
で、オニギリを買い駐車場で食べながら休んでると。
ドドドドドゥと数台の大型バイクが。
「ナニ。暴走族?」
「バイクに旗竿が立ってるよ。竜馬連って書いてある」
「暴走族みたいね。でも、この寒いのになんで薄着。Tシャツ一枚って。あれで走ったら死ぬんじゃない」
「あ、ひとりこっちに来る」
金髪のリーゼントヘアの太った男だ。
「おねえちゃんたち、こんな夜中にナニしてんの?」
「あ〜そうかぁ。あんたらタヌキか」
「俺をタヌキと見破った、おまえらはなんだ?!」
太っ腹をTシャツからはみ出した男はパンと腹を叩きクンクンと顔を上げて臭いをかぐと
「人ではないのはわかる……物の怪か。水臭くないからカッパではないな?」
「カッパ……四国にも居るの?」
「四万十川あたりに少々。九州から来た連中だ。おまえらカッパの仲間でも、川姫の仲間でもないのか?」
「川姫は知ってるけど、カッパの仲間じゃないわ。あたしらは関東から来たから、九州のカッパにも縁は、ないわよ」
「おう、小堤。女か、人間の女と関わると病気になるとオヤジが言ってたぜ」
もう一人、いやもう一匹背が高く痩せたタヌキが来て。
「三日月か。こいつらは人間じゃねえ。関東から来た物の怪姫だとよククククッ」
「クヒヒヒッ。なんか、笑っちゃうね。あんたの名まえ小包っていうの。その腹で」
「ああ、大包だとまんまで、よけいかっこ悪いだろ。こっちの細長いのは三日月だ、こっちはまんまで笑えるだろ」
「そうかなぁ……」
「そうか……。まあいい、カッパとは関係ないんだな、おまえら」
「カッパといえば、四万十の奴ら妙な動きを……何でも何体かが、高知へ移動して来てると」
「カッパが、高知に。俺らの縄張り荒らす気か?」
「いや、イタチに聞いただけだ。細かいことは、わからねぇ」
「あんたら、夜は気をつけな。四国のカッパは気が荒いからな。あばよ」
二人のいや二匹のタヌキはコンビニに入っていった。
「なんか、するのかと思ったけど気の良さそうなタヌキだったね」
「ひと暴れ出来るかとわくわくしてたのに……」
裏アヤ、暴力反対。
「でも、坂本龍馬って、タヌキの暴走族の名前にもなってて、やっぱり人気がある人間なのね」
「あの竜馬じゃないかもね。竜馬は、字からして竜の馬よ。竜馬は妖怪なんだ元々は。竜神の化身なんだよ。だから、そっちの名を使ってるのかもね。タヌキが人間の名を使うとは思えない」
「ホントに静ちゃん、妖怪研究家なんだね」
「毎度言ってるだろ自称って、あたしは網切マリアみたいに研究してるんじゃなく経験とか見てたとか聞いてるとかで記憶だけなんだよ。知識ならマリアの方があるんじゃないの」
「おーい、いたいた。静に彩」
「一反姐さん、久しぶり。四国に寄り道しちゃたよ」
「まあ、あんたらが楽しんでるんだから、それはいい。べつにあたいの一族があんたらを待ってるわけじゃないし。それより、昨日鹿児島で妙な話を聞いてな」
「ナニ?」
「四国のカッパが、二口女を狙ってるって」
「カッパがあたしをなぜ?」
つづく




