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川姫の家へ

30話 川姫の家へ


「川姫……。噂に聞く西日本では、ナンバー1の美女妖怪」


「そ、そうなの。そんな噂が……でも」


「でも?」


「上には上が居るんだよ。刑部姫とか、琵琶姫、大阪の橋姫」


「会ったことは」

「ない!」


「そうか、あたしはその連中にあったけど……」

「どうだ? あたしが一番か」


「わたしは川姫かな……」

「だね……刑部姫は、本当はババァ妖怪だし。橋姫は無惨にも大阪のオバさん化していた。あ、琵琶姫にはあってないや……琵琶湖の河童って聞いてるけど……なら、やっぱり川姫だよ。カワイイ」


「そう。嬉しいなぁ。あんたたちはナニ。あたしより落ちるけど美女妖怪じゃない」

「どうも、でもこれ見せちゃうとキモいと言われちゃう」


 珍しく静ちゃんは後を向き髪が舞い上がり頭の後ろの口を見せた。


「そんなんでもないよ。もっとキモいヤツ多いからね……」


「ありがとう。久々に開放したわ。あたし二口の草双紙静」


「わたしは二面の綾樫彩です。よろしく」



「あの〜すいません。トイレで何してるんですか? 出てください」


「あ、今出ます」


 オコられちゃったわ。


 コンビニでパンを買って出る。



「関東から、ヒッチハイクでここまで来たの。へぇ~っ面白いことしてるね。そのパンが

朝食なの」

「そう貧乏旅でさ、こんなもんしか」

「それは可哀そう。良かったらウチに来ない」


「川姫はドコに住んでるの?」

「近くよ。朝の散歩してたら、お腹が急に……でももう大丈夫。タヌキからもらった腹薬飲んだから」


 近くというわりに三十分くらい歩いた。

 途中で静ちゃんは、買ったパンを食べだした。


 田畑が、ひろがる中にぽつんと大きな古民家があった。


「あそこだよ」


 近くまで行くと庭も広い。


「あら、ミキちゃん。何処まで散歩言っていたの。みんな、ご飯もう食べちゃたわ」


 ぽっちゃりのオバちゃんだ。川姫のお母さん?


「ゴメン。ちょっと、あしのばしちゃた。あのお客さん連れてきたんだけど。ご飯まだあるよね」


「ああ、あるよ。友だちかい?」


「おはようございま〜す」


「ああ、おはようさん。どうぞ中に」


 家に入り、リビングに行くと大柄なおじいちゃんが新聞を読んでた。


 鼻をクンクンと動かすと。


「珍しい。物の怪の客か」


「二口の静ちゃんと二面の彩ちやんだよ」


「ほう、二口とな。あんたら関東から来たんか? 二口女といえば関東の妖怪変化では美女と評判の」


 お爺ちゃんは、老眼鏡だったのか別のメガネをかけ、わたしたちを見た。


「ほう、そっちの子もめんこいのぉ。わしは、あんたの方が好みじゃわい。あとで、一緒に飲まんか」


「スケベジジイねぇ。可愛い娘を見れば酒に誘いたがる……」


「ごめんなさい。お爺ちゃん。わたし、お酒は飲めないんです」


「私は、いけるぞ」


「ほお、コレは面妖な……頭の後ろに」


「醜女、とは飲まないとさ。なあ爺さん」


「どちらも好みの顔をしておる。ますます呑みたくなったわ」


「もしかして、爺さんはタヌキだよね」


「ああ、もしかしなくてもタヌキじゃ。わしは、隠神刑部(いぬがみぎょうぶ)の親戚すじの子孫でな。今は人間になりすまし農業をしている」

「あたしは、ココに居候してんの」


「何処でもタヌキや妖怪たちは、人間界で暮らしているんだよね。刑部姫みたいなのも居るけどね」


「あんた、刑部姫にあったのか? 世にも美しい姫様と聞いたが」


「髪を染めてギンギンにロックコンサートしてたよ。姫路城の天守閣でさ。爺さんもいってみるといい妖怪なら入れると……川姫、タヌキやキツネは、妖怪に入るのかしら?」


「さあ……どうなんだろうね。刑部姫が『入れ』って言えばいいんじゃない」


「まあ、いい加減なのも妖怪だからねぇ」


 お昼まで、ご馳走になり。

息子さんタヌキがクルマで阿南まで送ってくれた。

 

 そこからヒッチハイクを再開。

 電話で話して、金沢さんたちとは室戸で落合うコトに。


 阿南からの目標は高知ということで。段ボール紙にそう書いた。


               つづく

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