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四国のタヌキ

28話 四国のタヌキ


 相談の結果、鳥取を出たわたしたちは金沢さんたちの車で岡山へ向かった。


 クルマで高速通れば3時間かからないけど、もう暗くなりかけていた。


 岡山から四国へ渡る。


 四国へ行くのはやはり静ちゃんがうどんを食べたいと。まあ、うどんならそんなに高くないと。

 

 大きな橋を渡り香川県に入る。


 うどんと言ったら丸亀なんて、静ちゃんが言うもんだから、とりあえず丸亀までクルマで。

 そして金沢さんたちと別れた。

 金沢さんたちは髙松へ。


 わたしたちはヒッチハイクをはじめて。


 丸亀市内から少し離れた所で安いうどん屋さんを見つけた。

 

 ここは、ほとんどの作業を自分でやって食べるというほぼオールセルフの店だ。安いわけだ。

 ここで夕食にうどんを。

 自分で作ったうどんにトッピングを乗せて料金を払う。

 静ちゃんのうどんには天ぷらが沢山乗っていて、うどんが見えない。


 うどんを食べにきたのか天ぷらを食べにきたのか。まあらしいけど。


 全部食べ終わった静ちゃんは、素うどんをおかわりにいって、もどると。


「アヤ、あそこでうどんゆでてるコ、人間じゃないわよ」

「そうなの」

「そばにいたら獣臭がしてね、おそらくタヌキよ」


 金髪のショートカットの中学生くらいの子だ。

 金髪の中学生は、ないから若く見えるけど大人かな。


 オイ、アヤ。タヌキが化けてるんだ見た目と人間の歳は関係ないだろう。


 そうか。

 あ、同じ年頃の男のコが。


「おそいぞ、イサオ! あんまりおそいから、コレ三杯目だよ、二杯分払ってもらうわよ」

「ゴメン、サキ。友だちがなかなか離さなくて」


「また、あの男ね。あんた人が良すぎよ」


 ふたりは友だちかな?


 暗くなってから、会ってんだ。カップルじゃないのか。


 男のコもタヌキかしら。


 あ、静ちゃん。

 静ちゃんが丼ぶりを持って二人の方に。


「ねえ、あんたたちはタヌキでしょ」


「え、あなたナニ? なんで、あたいの完ぺきな変身を見やぶったの?!」


「臭いかな」


 女のコは腕の臭いをかいだ。


「臭いなんてしないわよ」

「妖怪独特の臭覚だからね……」

「え、あんた物の怪!」


「そうだけど。タヌキの臭覚じゃわからないでしょ」


「なんか、ちょっとくやしいけど……なにか用かしら」

「立ち話もなんだからさ、座ろ。あんたもタヌキよね」


「はあ、そうです。ちょっとお水もらってきます」


 静ちゃんたちは、ゆで場の一番近いところに座った。


 アヤ、わたしらも。


 わたしも静ちゃんたちのテーブルに。


「待ってね、コレ食べちゃうから」


 静ちゃんが、素うどんを食べてるあいだにタヌキのコは、ゆでたうどんにお汁を入れて、戻った。


「ここのは安くて美味しいのよね」


 男のコはお盆に水を乗せて、三人分を。わたしたちの分まで、と思ったら。一気に三杯飲み干した。


 のどが渇いていたの。それとも。


「あんた、水でお腹を……」

「だってサキの分払ったら、財布がカラだよ」


「はい、おごるわ」


 と、静ちゃんは五百円玉を男のコに投げた。


「いいんですか。見ず知らずのボクに」


「ありがとう……」


 女のコがお礼を。やはりカップルかな。


「それでね……」

「あ、ゴメン。あたいも食べてから」

「あんた、ソレ3杯目とか言ってたよね」


「え、ああ。いけるときは十五杯はいける。素だったらね」


「あと、汁なしだったらだろ」

「醤油と生卵もかけるよ! こいつは弟のイサオ。あたいら双子なの。似てないでしょ」


「そういう双子もいるよね」


 姉弟だったんだ。たしかに似てない。

 うどん三杯。このコも大食いだ。


「あたしは、二口の草双紙静よ。こっちは親友の二面で、綾樫彩」


「はじめまして。こんばんわ彩です」


「二口と二面……物の怪かぁ。あたいは太三郎サキよ」

「太三郎って聞いた名ね……」

「四国狸最長老禿狸のひ孫よ。あたいら」

「そうなのか、それは都合がイイ。あたしらは、今日、四国へ来たんだ。で、四国に来たんで、やっぱりタヌキの大物に挨拶しとこうかと……」


「そういうこと。珍しいわね、今どき。ひいお爺ちゃんの禿狸は寝たきりだから……。そうね……」


 女のコタヌキは、少し考えて。


「徳島の金長神社へ行って手を合わせてくれば。それで、いいんじゃない。べつにタヌキが四国をおさめてるわけじゃないから。それで問題ないわよ」


「そうか。時代も変わったね……」


 うどん屋さんを出て、電話をすると。

 金沢さんたちは髙松で一泊するそうだ。


 わたしたちは徳島の金長神社を目指すことにした。


 丸亀から高松にもどり徳島市を目指すのに歩きはじめた。


「愛媛方面に行って九州へ渡ろうと思ったのに。もどることになっちゃたなぁ。いいか、どうせだから高知へも行ってぐるっと四国巡ろうよアヤ」


               つづく

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