都市伝説化
27話 都市伝説化
「へぇ〜ここが、大妖怪漫画家先生ゆかりの妖怪ロードか。有名妖怪たちの像がいっぱいあるね……。あ、アレはあたしだ。アヤ、見て」
やっぱり静ちゃんは有名妖怪ね。
わたしのは無いや。
と、ぶらぶらしてたら。逆方向から、見慣れた二人が。
「あ、居た。やっぱり。ね、金沢さん居たでしょ。あたしの感はさえてるぅ〜」
「金沢さんと志子華だ。スゴイ偶然?!」
「静がさ、妖怪研究家とか言ってたからさ。九州行く前に寄ると思ったんだココ。正解だったわ」
「同じこと言って姫路にも行ったのよ。ハズレたけど」
「金沢さん正解だよ。わたしたちは、ココに来る前に姫路城に居たの」
「ホラホラ、ねっ。はい、お昼は金沢さんの奢りで」
金沢さんたちは、なんとわたしたちのヒッチハイク旅の記事を取材する仕事を「北海道旅」の記事を載せた雑誌編集部からとってきたと。
あとからわたしたちを追ってきたそうだ。
「ドコかで会えると思ったわ。あれ、この像って
……見たことあるけど」
「二口女だよコレ金沢さん。普段は食べないくせに夜中にコソコソと頭の後ろの口でバクバク食べてるいやしい女妖怪よ」
「正解!」
「え、誰?」
「でも、美人なんだよ二口女は」
「今、誰か知らない人の声が……正解って。静、聞こえなかった?」
「ええ」
「きっと、その像じゃない……」
「まさか、変なコト言わないでください金沢さん」
「私の聞いた話では神無月の深夜に、ここの妖怪像が動き出して百鬼夜行をするそうよ……だから」
「ソレはないよね静。ありえないよ金沢さん…」
「まあ多分ね。でも、百年後にはどうかな。ねぇ静」
「妖怪研究家としては、そういうのどう思うの」
「自称ですけど……。百年かぁなくはないかもね、皆が付喪神になって動き出してるかも……そういう話もおもしろいけど、ホントにお昼奢ってくれるの? 金沢さん」
「いいわよ、お腹すいてるのね。じゃ行きましょ」
とあるお食事処。
「ねえ、まえの北海道の記事見た?」
「ごめんね、実は見てない。海鮮丼美味しい……」
天野さんが、カバンから雑誌を取り出し見せた。
「北海道美女コンビのヒッチハイク旅行」っていう記事だ。わたしと静ちゃんの写真が。
でも、目のトコに黒い線が。
「静が顔載せるなって、目だけ見せないで載せたけど。コレさ美女と書いてあるのに顔がわからなくしてあるってクレームが来たんだって。で、今度は許可もらって素顔を載せれれば今度の九州旅を載せてくれると編集長が、で、いいかな顔出し。モデルの仕事はやめたんでしょ?」
「実は、この旅出るのに再開したのよね……モデル。でも稼いたお金、大分美味しい物食べちゃって、今回はまえより資金難。大阪は美味しい物沢山あったから……あたし関西に居たら破産かもね」
「そうかぁ……。今回は私らの持ち込み企画で、前回の記事にクレームついたでしょ。予算少ないのよね。ガソリン代と少々」
「救世主ってとこまで、いかないわけか……。仕方ないわよね。一気に姐さんトコ行って帰ろうかアヤ」
「ねえさんって、姉妹? が、九州に」
「あ、家族じゃないの友だちで年上だから姐さん。この旅のきっかけは彼女なのよ。久しぶりに故郷へ飛んで帰るから、来ないかと言われて。どうせならいつものヒッチハイクで行くわと。姐さんは、飛んでる」
「飛んでるってその姐さんは飛行機で……。今はあっという間よね。飛行機だと……つまんないわよね。ん、静たちの気持ちわかるわ」
「でも、こっちのシズカはね、北海道のときに中々クルマに乗れなくて、もうやらないとか言ってたのよ」
「それは、わからないでもない。つかまんないときは、ぜんぜんだからね。やっと来たら。変なクルマだったり」
「変なクルマ?! 大丈夫だったの、危ない目とかにあわなかった。二人ともかわいいから、ヤバイのにあったら」
「あ、そっち方面の変なのじゃなくて。お化けトラックとか。夜中に歩いてると出るのよ」
「ホントに。あ、それで思い出した。これ見て」
天野さんが、週刊誌の記事をフォルダーから出した。
「なんですか……『深夜の道路に二人の美人幽霊』。コレは……わたしたちの後ろ姿だよ静ちゃん」
「これ、ある霊感師の女性が深夜に道路を歩く妖しい二人を見たっていう記事なんだけどね。やっぱり、あんたたちなのね。見て、この写真とか、彩ちゃんの後ろ頭で妖しい目の光がって、コレフェイク写真よね」
こんな写真、いつどこで撮られたんだろう。
「面白いね、アヤの後ろ頭に目が有るっていうの。あたしは、口があったりして」
「あ、それだったらさっき見た二口女だ」
「底なしで大食らいのいやしい妖怪女よ」
「いやしいまで、言ったらかわいそうよ彩ちゃん」
あ、今のは、わたしの声色で言った裏アヤなんだけど。
静ちゃんは、わかってるよね。
「アヤねぇ時々そ~ゆーコト言うんだよ」
「仲いいのよね〜二人は」
「そちらの二人には負けるわ。あたしら仕事場は別よ」
「そーなんだ。普段はナニしてんの遠野では?」
「わたしは農家のお手伝い。お年寄り二人きりなんでたいへんなトコなの。早く帰って手伝いたいわ」
「大丈夫だから、行ってこいって言われたんだろアヤ」
「まあ、そうだけど……」
「それより、さっきの記事。けっこうネット内でも噂になってんのよね。ホラ、深夜のヒッチハイク美女お化け。乗せたら。車から飛んで消えたって」
「飛んでって、屋根は……」
「このクルマはオープンカーだったのよ。ヒッチハイクでひろった二人は、降りるとも言わずに座席から消えたと」
「ソレ、ドコでの話?」
「ドコとは、書いてないけど……おぼえあるの?」
「ないわよ。走ってるクルマから飛び降りたら死んじゃうわ」
あのときのことかな、アレは日本海に行ったときだっけ。
ああいうやからは、自分たちのコトはナニも書かないのよね。
「あんたたち、深夜によく歩いてるって言ってたよね。ソレ見た連中があんたらを都市伝説化したんじゃない。ちょっとまえにモデルの静がヒッチハイク旅してると、話題になったよね。アレで静、捜して走りまわってるヤツがいたわよ。それで顔出しNGかぁ。で、どう。やっぱり出すのダメ?」
「取材費出るならいいよ……」
いいんだ静ちゃん。
わたしたちって都市伝説化してるのね。
本物なんだからいいんじゃないかケケケ。
「あの、金沢さん。デザート頼んでいいかなぁ」
「まだ、入るの。ホント、底なしの二口女だなぁ」
「正解!」
「また彩ちゃん……正解って」
「シズカったら二口女は失礼よ。いいわよ静ちゃん。わたしも頼もう」
「じゃあたしも!」
「みんなも底なしじゃないの」
「別腹ってやつだよ」
つづく
 




