妖怪と年越し
26話 妖怪と年越し
オレは何が哀しく、妖怪ババアたちとコタツで紅白見てるんだ。
河ババァに久慈姫。邪邪娘。
なぜか、蕎麦まで連中に奢っちまった。
まあカップ麺だから、たいしたことないが。
妖怪どもが、持ってきたのはわずかな餅とお新香。餅は年が明けたら食べるとか。
ピンポ〜ン
こんな夜ふけに誰が。
まさかまた妖怪?
河ババァが呼んだのか?
玄関に降りて。
「ハイ、どちらさまで?」
「こんな夜ふけにすみません。河バァに誘われた者で」
やっぱり妖怪だ。若い女の声だが、数百年生きてるとかいうやからだ。
が、ドコかで聞いた声だ。
丁寧なしゃべりだし。そんな無粋な妖怪ではなさそうなので戸を開けると。
これは、背の高い女性で知った顔。
「おそかったな山女」
河ババァが階段の上から。
「あ、河バァ、なんでバラしたのよ」
「すみません……先生。私は妖怪です」
「ああ、河ババァから聞いたよ。気にしないでくれ、もう驚かない。二階には、まだ妖怪が居るんだ。遠慮なく上がって」
「な、大丈夫だったろ。こやつは妖怪なれしとるからな。フォフォフォ」
「あ、先生。コレはお節です。作ってたら遅くなってしまい……山菜お節ですけど口にあいますか」
「コレはまたどうも。ババァ。誰かさんたちとは違うな」
「餅とお新香持ってきたじゃろ」
「どうせ近所の農家でいただいたモンだろ」
「彩が働いていたトコじゃ。おーい久慈姫よ。山女がお節持ってきたぞ」
と、言いながら二階へ。
「えっと、彩菓子さん、どうぞ」
「名前おぼえていただいたんですね。先生。嬉しいです。先生と一緒に年が越せるなんて。一生の思い出になります」
「そんな大袈裟な……」
妖怪の一生って何年なんだ?
しかし、オレなんでこんなに妖怪と縁づいたんだろうな。
コレは、静がウチの店に来たのが、原因か。
いや、あのとき本をあげたオレのスケベ心が原因だな。
まさか、静が妖怪だったなんて。
今頃、どのあたりをうろちょろしてんのかなぁ。やつらのことだから心配はないけど。
早く帰ってこい。
つづく




