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進まない

23話 進まない


 なんと、気前の良い家だ。


 土門つちかど家。

 ご馳走してくれて、その日は泊めてくれた。

 お風呂は古ぼけたヘビヅカヤの比じゃないくらい豪華だった。


 そして次の日は、兄の武人さんが、兵庫県の明石まで乗せていってくれた。



 明石で玉子焼きを食べながら。


「完全に一日分ういたね。土門家様々だ。ほら、アヤ、京都で良いことあったでしょ」


「おまえ、面白いことって言ってたよな」


「良いことは面白いことなのよ醜女。ソレに鬼と戦ったの面白かったでしょ。久々に全力出せたんだから」

「おかげで、筋肉痛になったよ。出来ればしたくなかったのよねわたしは。で、コレからどうするの静ちゃん」


 静ちゃんは、スマホでルートを見ながら。


「四国へ渡ってみようか、それとも岡山方面に」


「決まってるんだろ静は、美味いもんがある方だ」


「わかってるなぁ醜女。でも、問題は資金がない。何処かにいい仕事ないかなぁ」


「妖怪界に顔が広い静ちゃんでも西はダメなのね」

「ああ、西へは旅しなかったのよね。西の連中はクセが強いしね。もう鳥取から網切は帰って来るかもな。とりあえず四国へ行って見ようか。九州へも行けるし愛媛から渡るか、下関から渡るかだ、待てよ下関といえば……」

「そこまで行くのにまず、金だろ。金が無いとフグにはありつけないぞ」


「だね。でも、夜になれば一反姐さんっていう手も。四国なら近いし。ああどっちにしても資金稼ぎか。とりあえずヒッチハイクしてみる?」


 なんだろうなぁ。この日は西へも四国に行くクルマも停まらない。

 夜になる、スーパーで安いおにぎりか賞味期限ギリのパンやお弁当ですます。


 深夜になってもクルマはつかまらない。


「もっと、赤名のジジィのトコで稼ぐんだった」

「いや、お前が大阪で食をおさえれば余裕だったはずだ」

「醜女だって食っただろ!」


「わたしゃ彩と一体だからね人並みだよ!」


 相変わらずだなぁふたりとも。


「あ、クルマだ」


「なんだか変なトラックね。アレ昭和か大正、いやもっと古そうな……あの板橋の夜に走ってた妖怪タクシーみたいな」


 言われてみれば、カタカタとクルマの音だけど、ライトは火みたいだ。提灯の明かりではなく妖火。


 多分コレは人には見えてないクルマだ。

 屋根の無いトラック。荷台には数匹の異形が。


「よう、ヒッチハイクかい姐さん方?」


 トラックは、わたしたちの横で停まった。

 運転してるのは大きなハゲ頭で逆三角形。

 服は着てるが毛だらけなのはわかる。


「あんたひょうすべ?」


「あ、いや。名もない山妖怪だ。山童とか山男とか言われてるが、どれもオイラじゃない。西に行くのか。オイラたちは姫路の刑部姫の忘年会に行くんだ。姐さんたちも行くか?」

「忘年会! 姫路城の刑部姫ね。噂には聞いたコトあるけど……」


「その姫だ。ホントは山神なんだが、ひとり寂しくてな毎年姫路城で、オイラたち物の怪を集めて忘年会するんだ、久々に腹一杯食えるぞ」


「あたしら、よそ者でもいいのかしら」


「妖怪ならなんの問題もない。カネもいらん。行くんなら乗れ!」


「アヤ、姫路に行こう」


               つづく

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