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橋姫

19話 橋姫


「ドコに橋姫?」

「ほら、あそこ。タイガースの帽子にハンテン着たオバちゃんや」


 見ると、そんな格好のぽっちゃりしたオバさんが。缶ビール飲んでる。


「アレは、あたしの知ってる橋姫じゃない!」


 聞こえたのか。オバさんはこっちを見てニコリとした。

 パーマヘアの中のぽっちゃり顔の笑みは、カワイイ。そして、わたしたちにおいでおいでをした。


「行こ、呼んでる」


 静ちゃんは、砂掛の舞ちゃんより先に、知り合いではないらしい橋姫のとこに。


「自分ら妖怪だなぁ。妖怪臭がプンプンするでー」


「ああ、あんた橋姫だろ」

「そういうあんたは?」

「あたしは関東から来た二口だ。草双紙静と名乗ってる」


「関東の二口……女か。……もしかして下総の」

「そうよ。あたしを知ってるの」


「知ってるも、なにもよく遊んだ仲だったよね二口のおなご」

「え? あたしと……。遊んだ。あたしの知ってるの橋姫……でも、あたしの知ってる橋姫は……あんた……太った?」


「ああ、大阪は美味いもん多くてね。そんで、最近は虎野球にハマって。こんなんなってもうたわ」


「あの橋姫なのか、あんた。変わったなぁ……妖怪は太らないのかと」

「あんたもな。映画みたで。本物が、まんまで出てたやんかぁ。あのときはケバかったなぁ。ほんま水商売してんの自分?」

「アレは映画の役だ。ケバいケバいって、よく言われるけど、コレがいつものあたしだ。あんたホントに変わったわ」


「え、姐さん。あの映画の二口女だったの」


「マイ、今頃わかったの」


「聞いてなかった……」

「言わなかったっけ」

「聞いてたかもしれんが、あの映画のとは」

「多分、この世界には二口はあたししか、居ないよ」


「そっちの二人も関東のもんか?」

「二面のアヤとキツネのココだ」


「あの姐さん。聞きたいことが、あって来た」


「なに? あんたは、砂かけんとこの」


 顔は知られてるらしい舞ちゃんはコクリと。


「橋姫。この、群馬県のキツネの親父さんが、クモという男に連れられて大阪に行ったきり帰って来ないそうなんだけど、何かしら知らない?」


「キツネがクモになぁ〜。知らんわ」


 舞ちゃんが少し考えた風にして。


「闇の方になぁ。なにかないかなぁ姐さん」


「闇か。山ン本五郎左衛門がからんでると……」

「いや、そういうわけとは……可能性は、ないでもないけど」

「そうかぁ……」

「たんなる推測やけどなぁ」


「あの東京での手討ちで、両方とも大人しゅうなって。兵隊集めてるなんて聞いてもおらへんし……。そのクモとやらは、なんなの?」


「娘の子ギツネには、わからないらし。まあ、名前からして土蜘蛛とか、クモ系妖怪なのか……または語ってるだけなのか」


「ありえへんことじゃないなぁ。でも土蜘蛛なんて、表には何百年も出ておまへんからなぁ〜」


「心当りは、なしか……」


「クモと言えばつくも族ってーのもおったで」


 と、橋姫は、缶ビールを飲みほしてつぶした。


「つくも族って、あたしは知らない。千葉の九十九里とは、関係ないんだろ?」

「西の妖怪集落の連中だ。ようようの妖怪が集まってるんで、ナニという妖怪集落じゃありゃしまへん。人間は百鬼村とか、ゆーて恐れどったわ」 

「そうなんだ……。よくある〇〇村みたいなのかな。でも、橋姫はホントに大阪になじんでるなぁ」

「いいやぁまだまだ。これでも、すぐに大阪モンじゃないだろうとバレる。そうだ、道頓堀の方に行ってみい。あそこにも古い妖怪おるで」


「あんたの友だち?」


「友だちじゃないが、『やろか酒』とかいうのんべな妖怪とか」

「やろか酒か、東京の新橋あたりで見かけたが、仲間かな。でも、酔っぱらいは嫌いだ。まともなのは居ないの?」

「やろか酒は、酒をすすめる方で、あまり呑まない。まともねぇ。よそから来てあたいみたくなったのもけっこういるけど。砂っ娘、『油すまし』は知ってるか?」


「ああ知ってる」


「あやつを、たまに見かける。日本の西には詳しいヤツや。見つけたら、聞いてみ」


 そう遠くないと、わたしたちは歩いて道頓堀に。

 少し日が暮れはじめてきた。

 つるべ落とし、すぐ暗くなる。


「あ、お父ちゃんだ!」


               つづく




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