妖怪恋バナ
17話妖怪恋バナ
「わるいなぁもう少しかかりそうだ。なんせ、資料が中々そろわなくてさぁ」
〘そうですかぁマカ先生、やばいですよ。先日有能な持ち込みの娘が現れましてね。一条さんや編集長、副編までもが、その娘をかってましてね。誰かが原稿落としたら、入れようと言ってます。下手をしたらレギュラー陣から落とされますよ〙
「ナニ、そんなに凄いのか。まいったなぁ。うかうかしてられないな。今急いで書いて送るから、落とすなよ!」
とは、言ったものの書き出しすら、出来てない。どうしたものか。
何かいいネタないかな。
「アハハハハ……」
二階の居間から笑い声。
そうだ、二階に魔性の女たちが居るではないか。魔性の女なら、恋バナの一つは二つに持ってるだろう。
聞いてみるか。
居間でコタツに入りながら妖女らに聞いてみた。
「恋バナ……このババに聞くか?」
「イヤ、河バァには聞いてない」
「私かい」
「ああ久慈姫。あんたぐらい美貌の持ち主なら、二、三あるだろ?」
「美貌なもんか、こいつのは幻覚だよ。ばばぁなんだから」
「ああ、知ってるさ。そういうのが幻想物語としていいのさ」
「あらまぁ。言うじゃないかマカ坊」
「姫、あんたまでマカ坊はやめてくれ。河バァだって、静たちがいるときは『マカ先生』だったじゃないか、最近マカ坊、マカ坊って……」
「フォフォフォ……若いのぉ」
老妖怪たちの妖しい笑い。そりゃこの中では年下さ。
「マカ先生、あたいの話じゃダメか?」
一本角の邪邪娘か。
「おまえのようなちびっ子妖怪にも恋バナが、あるのか?」
「あるよ。これでも、あんたより長く生きてる」
「まあそうだな。で、どんな?」
「それは、昔々だ、あたいが川で洗濯をしているとドンブラコドンブラコと大きな……」
「まて、ソレは桃じゃないだろな」
「いいや、大きなマンゴーだ」
「マンゴー! それは、いつの時代だ」
「だから昔々と……」
「十年ひと昔というぞマカ坊……」
「じゃ二十年前だなフォフォフォ」
「そんな、平成かよ。そんな最近、おまえは川で洗濯してたのか? しかもデカいマンゴーが流れて来たって、なんだよソレ?」
「まあ話は最後まで聞け。そのマンゴーはな、川にハマッた、ゆるキャラの『マンゴリンゴくん』だったんだ。あたしが川から助け出すと、マンゴリンゴくんの中から、それはそれは、面妖なイケメン兄さんが」
「面妖なイケメン?」
「ああ、あたいと同じに角が頭に」
「鬼だったのか?」
「男はすぐにタオルを頭にまいて角を隠したが。あたいを見て」
「おまえは人間じゃないな。と」
「あたいはそのイケメン鬼に一目惚れした。が」
「どうした?」
「イケメン鬼は、実は妻子持ちで、家族で裕福に暮らそうとゆるキャラアクターのバイトをしてたんだ。そんな家庭を、あたいが壊せるはずもなく失恋だ……」
「そうか……幻想文学にもなにもならん話だな」
「話はまだ、終わってない。そのイケメン鬼は、ゆるキャラを作った企業のOLと、デキちゃて妻子をおいてかけおちしてしまったんだ」
「はあぁなんだ、その展開は。妻子思いの亭主じゃなかったのか」
「今は、その鬼の妻子とあたいが暮してる」
「おまえがなんで?」
「息子の鬼が、超イケメンなんだ」
「なんつーオチだ」
「マカ坊よ、そんな子供の話じゃネタにならんだろ。私が、いい恋バナを話してしんぜよう……。売れない作家と数百年生きた妖女の物語だ。妖女は、売れない作家に恋をしてな。ある夜に夜這いをしかけた……」
「その話はいい、ヤメろ! 久慈姫」
つづく




