物の怪ヶ原
14話 物の怪ヶ原
浜名湖過ぎたら、あっという間に名古屋。
網切さんはここで、何か取材があると。
待ちあわせ場所の駐車場を後にし、わたしたちは、名古屋の街を歩いた。
「あ、静ちゃん。ヘビヅカヤがあるよ」
「北海道にもあったからね。手広くやってるな蛇骨の一族は。今日はあそこに泊まる?」
「でも、網切さんは用すましたら大阪へ行くって」
「そんなこと言ってたわね。名古屋にあるんだから大阪にもあるよねヘビヅカヤ」
「ヘビヅカって、大きいなぁ。アレは宿?」
ココちゃんはビルの宿をはじめて見たそうだ。
「そうだよ。群馬にはないの?」
「知らない……」
「そうだ、ココちゃんの服買おう。いつまでもわたしのお古じゃ可哀そう」
名古屋と言えば戦国時代の物語の舞台で、多くの人が合戦で死んだ場所も多い。
お城を攻め、守り死んでいった武士たち。
戦に出された平民もいただろう。
妖怪の話は、ほとんど江戸の平和な時期におとぎ話のように語りつがれきたけど。
江戸のまえの時代にも、あった妖怪話はユニークな話より恐ろしげな話が多い。
と、ある妖怪サイトで知った「もののけヶ原」の話は。名古屋市街から離れた場所にあると。
さすがに都市伝説の地名なのでカーナビでは、探せなかった。
だから。
道を走る自転車に乗った高校生に。
都市伝説とかは、高齢者より若い子の方が知ってたりする。
「あのぉ場所を知りたいんですけど?」
「何処?」
「もののけヶ原って、知ってる?」
「なに? 知らない」
と、そっけなく行ってしまった。はじめの娘。
それから何人かの人に訪ねて見たが知ってる人は居なかった。
やっぱり都市伝説よね。
ネット上のは、特に誰かが作ったデマ話が多いのよね。
もののけヶ原話は合戦で死んだ兵士たちを食っていた弱い小さな物の怪たちが人の精で、より強く大きくなってその原っぱに入ると食い殺されるという。単純な話。
多分その場所が、なにか神聖な場所か、なんかで人が寄りつかないように作られたウソ話だと思うけど。
そういう所は、けっこうある。
田畑の多い田舎路を走ってたら。人の姿がまるでない。
これじゃ聞き込みも出来ないわ。
秋のつるべおとし、日が暮れるのは早い。帰って静ちゃんたちと大阪に向かうか。
と、Uターン出来るトコを探して走ってると田んぼの先に草むらが。
あそこらならいける。
バックして入ると。何かに当たった。
エエッ、ミラーには写ってなかった。何かしら?
降りて確かめると太い木の杭が。
そこにに彫り込まれた文字は。
物の怪ヶ原
あ、ナニ!
黒い蔓のような物が足首に。
イヤッ。
藪の中に引きづりこまれる。
「助けて!」
人なんて何処にも居ない。
痛い。枝や葉で手足の露出したトコにキズが。
しばらく藪の中を引きづられて草原に出た。
あたりは薄暗くなりだした。
逢魔が時。
何か居る。
「女が、かかった」
「久しぶりの女だ」
「コレが人間の女? 初めて見たよ」
「そうか……それくらい久しぶりの女か、服をはがせ、身体が見たい」
いやっ
蔓のような物が、数本現れ私の服をはぎ取った。
「痩せた女だなぁ」
「骨だらけだ」
「だったら、食べないで!」
つづく




