海老名サービスエリア
11話 海老名サービスエリア
早朝。まだ暗いうちにヘビヅカヤを出て。
一反姐さんに乗せてもらい海老名サービスエリアまで、ひとっ飛び。
ココで下りのクルマを探す予定だけど、ココは、静ちゃんにはちょっと毒な場所だった。
「アヤ、朝食はナニにする。ここって食の遊園地よね。いろいろ有りすぎて迷うわ」
「えーと。マカにまえにもらった関西へのグルメ旅本見てみよう」
本当は静ちゃんが、マカさんの店から勝手に借りてきたんだけど。
「オススメとか、載ってるかも。あ、ダメだ。使えないこの本。西に行き過ぎてて。ココは載ってないよ」
「へへへ、アヤさん。こういうときこそスマホで」
静ちゃんが変な笑い方して、スマホに話しかけた。
「えーと、海老名サービスエリア下りのオススメグルメはなに?」
静ちゃん、そんな風にきいたら食べ物みんな出てくるよ。
「沢山あって、まよっちゃう〜」
ほら。
「朝食だけ聞けば?」
「そうか……。うわっ同じだ。オススメが多い!」
静ちゃんは、とりあえず目についた美味しそうな物を買いあさることに。
お金使いすぎないようにね静ちゃん。先はまだまだ長い。
駐車場近くで、レジャーシートをひろげて座って朝食を食べた。
「ここで食べてれば誰か乗せてくれるわよ」
と、クビに札を。
『とにかく西へ』
「ねえほら静ちゃん。あの辺にとか、あっちとかにもヒッチハイクらしい人が居るわ。ここってライバル多いね」
「美味しそう……」
わたしたちを見て指をくわえてる子が。
妖気を感じる。この子人間じゃない。
ま、姿を見れば誰でもわかる。
おかっぱ頭の上に大きな獣耳が、それにスカートから大きな黄色いシッポが二本出てる。
ボロボロのセーラー服に丸めたゴザを背中に背負ってる。
この子はキツネだ。
シッポが二本の化けギツネ!! 見たまんまだけど。コスプレとかじゃない。
「ナニ、あんた。欲しいの?」
「うん」
「このパンあげるから名前と種類、教えて?」
静ちゃんは、わたしより早く気づいてた。
「金野狐々(こんのここ)。キツネ」
「キツネ……見てわかるけど、なんでこんなトコに居るのよ。しかも、その格好はナニ?」
「あたしは、群馬から来たの。ジィさまが、セーラー服着てるとクルマに乗せてくれるからって、ゴザは……コレが有ればドコでも寝れるから」
「群馬からヒッチハイクして来たのあんた。その格好で……よく。でも、セーラー服だと乗せてくれるのはあぶない奴だよ。その耳とシッポもセーラー服と同じ理由?」
「シッポと耳は、しまえますけど、やっぱりジィさまが。人間はカワイイコスプレと言ってくれました。美味しいです。このパン……」
「でも、ココちゃん。そのセーラー服は、なんでボロボロなの、人間に襲われたりしたの? 気をつけた方が」
「このセーラー服は、山でジィさまが拾った物で、はじめからボロボロでした」
「山で拾った……。ソックスとか、靴も?」
「靴とソックスは町で拾いました。美味しいコレ……パムハム」
「そうなんだ。ここまで、危ないコトなかったの?」
「親切なオジさんたちに乗せてもらった」
「親切なオジさん……。よくここまで、何事もなく。お金は持ってんの?」
キツネの子は首をふった。
ないのね。あったら朝食買ってるか。
「ココちゃんは、何処へ行くつもりなの?」
「大阪。父ちゃんが居る。十年たっても帰ってこない」
「なに? 出稼ぎ? なんで東京じゃなくて大阪なの」
「大阪にイイトコがあるからとクモのオヤジと一緒に」
「クモのオヤジ? そいつ妖怪?」
「もう一ついい?」
「いいよ、食べて」
「クモオヤジは、妖怪だと思う。人間の姿で、あらわれた。自分は久茂と名乗った。なんだか変なヤツだった。父ちゃんと大阪へ行ったきり帰らない」
「ふーんそうか。親父さん探しに文無しで大阪へね……。アヤ、連れてく? なんだか、この子一人じゃ危なさそう」
「うん、ここまで無事に来れたのは奇跡だよ」
セーラー服着てるけど、小学生みたいだし。
東京の街中に居たら補導されちゃってたわ。
妖怪と、ばれて大変なコトに。
「ココちゃん、わたしたちと大阪行きましょ」
「え、連れてってくれるの。で、どのクルマ?」
「あたしらもヒッチハイクだ。草双紙静よ。あっちは綾樫彩」
「二人は妖怪だよね。臭いが人間と違う」
つづく




