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私とさっちゃんシリーズ

口の悪い聖女、さっちゃん

作者: みこと

私は聖女さっちゃん様に仕えるメイドです。

さっちゃん様はとても優秀な聖女様なのです。

私には良く分かりませんが、とても高位の聖女様らしいです。


でも。


とても困ったことがあるんです。

タイトルで分かると思いますが、とぉーっても口が悪いんです。

黙っていたら可愛らしい聖女様なんですが。


聖女は週一回、教会の治療所で聖魔法を使って治療しているのですが、今日は近くで崖崩れがあって、たくさんの人が怪我をしてるらしい。

そこで、急遽治療所で治療することになりました。


「うわぁ、結構たくさん怪我人がいるみたいですね」

「おい、ここを仕切っている騎士団の長は誰だ」

またそんな言い方…

「はい、私です」

「いいか良く聞け、死にそうな奴から治療所に入れろ、元気な奴が来たらぶっ飛ばすからな」

「えっと、身分とか「アホか、そいつを治療してるうちに死んだらテメー責任取れるのか?」ええ、はい分かりました」

「もし、そんな奴が入ってきたら帰って、騎士団がいう事きかんからやってられんってテメーらのせいにするからな」

「わ、分かりました」

「死に物狂いで守れ」

所謂トリアージです。


それから重症者が次々と運ばれてきて、さっちゃん様が、テキパキと直していった。

(やっぱりさっちゃん様は凄いなぁ、口は悪いけど)


「ありがとうございました」

「つぎ」

ダレてきたのか段々とダラダラしだした。

「こらあぁテメーらモタモタしてたら、半殺しにするぞ」

(さっちゃん様はやると言ったら本当にやる。例外はない)

慌ててテキパキし出した。

(さっちゃん様は凄い、ずっと治療してるのに元気いっぱいだ、口は悪いけど)


もう重症者はいなくなった。


「おめーこの怪我は今日じゃねーな、なんでほっといた」

「い、いえ聖女様のお手を煩わすほどの事では…と」

「バカか、ほっといて酷くなってから呼び出される方がめんどーに決まってるだろ、今度からすぐこい」

「分かりました」

(優しいなぁさっちゃん様、口は悪いけど)

「おい、タケシ」

「はい、姉御」

(このタケシという人はさっちゃん様に文句を言って逆にボコボコにされ、舎弟になったチンピラのリーダーです。さっちゃんは、半殺しにするぞって言って、やれるもんならやってみろって言われたら、本当にやる。例外は無い。タケシもそのクチ)

「すぐ手下集めて、町中の病人や怪我人連れてこい、直ぐにだぞ」

「はい、分かりやした」

(ものすごいスピードで出てきます、やっぱりさっちゃん様が恐いのかな、口は悪いけど)


その後タケシ達が連れて来た患者が集まって来た。


「騎士隊長、さっきと同じ様に状態の悪いやつから入れろ」

「了解しました」


そしてまた、開始された。


「アンタまた太ったな、食いすぎ、何とかしろ、こんど同じだったら、毎日豚のエサにするからな」(さっちゃんはやると言ったら本当にやる、例外は無い)

段々と軽傷者になるとそういう会話が目立って来た。


「お前毎晩飲んで、家に帰るの遅いだろ、たまには嫁のケツを触ってやらんと出て行かれるぞ」

余計なお世話な話も出てきて来た。


そんな事をしてたら、なんか外が騒がしい。


「困ります」

「余が誰だか分かっているのか」

「順番を守る様仰せ使っております」

「誰にだ」

「聖女様です」

「聖女なら、このワルイージ伯爵の偉大さが分かるだろう」

「ダメです」

「なにぃ〜切り殺されたいのか」

「どうぞ、死んでも守る様にと言われていますので」

「何だと、聖女如きが偉そうに」

「いけません」

かなり物騒な話になってきた。

流石にワルイージ伯爵も、騎士を問答無用で殺す訳にもいかず、膠着状態になっていた。


そのうち、患者が中に入れない様になってた。


「なんで誰も来なくなってきたんだ」

さっちゃんがイライラし出した。

「外で揉めてる様ですね」

メイドの私がいうとさっちゃんが、ついに外へ出て来た。

「まずい…相手が」

流石メイド、さっちゃんのことを分かっている。


さっちゃんがキレ気味に。

「何してんの」

騎士が慌てて。

「申し訳ありません、この方が「どうしても先に通せ」と」

「ふふん」

(ああああまずい)

メイドの声なき声が…

「それで、どのバカが言ってるんだ?」

さっちゃんがキレ気味に言うと。

「何、余がバカだと」

「そう聞こえんかったのか?」

「なにい」

伯爵もキレ気味だ。

しかし、少し余裕の感じで。

「余はワルイージ伯爵である、聖女を呼べ」

損大に振る舞う伯爵

「私が聖女だけどなんか用?」

「な、お前が」

聖女は小柄で見た目だけは可愛らしく見える。

「ま、いい、お前に余の腹痛を治す栄誉を与えてやろう、喜べ」

(あちゃぁぁ)

「テメーみたいな豚が腹が痛いって、食い過ぎに決まってるだろ馬鹿野郎、治して欲しかったら100年後にやって来い」

「んなななな、貴様ぁ誰に向かって言ってるのか分かっているのか?」

「テメーだよ、わからんほどバカなのか?」

「な、何、余はワルイージ伯爵だぞ」

「ただの豚だろ、どー見ても」

「なな、どうなってもいいのか?」

「じゃ、私に逆らってどうなってもいいのか?」

「何だと」

「やっぱりバカだ、だ、か、ら、私に逆らってどうなってもいいのか、って聞いてんの」

「ほう、どうなるのだ」

「テメーは生きてても、ロクでも無さそうだから、神罰でも落とそうか?」

「がはは、神罰だと、もっとマシな嘘が言えんのか?」

「はぁ嘘か」

「ほうら、何も言えないみたいだな、口だけ聖女が聞いて呆れるわ、顔は良いから妾にしてやる、喜べ」

(ああああああヤバい、これはヤバい)

さっちゃんは、キレた。

「お前。本当にいいんんだな」

「そんな嘘に騙されるほど余は愚かではない」

ワルイージは余裕の笑みで答えた。

「だから神罰が落ちても良いんだな」

「ほほう、まだぬかすか、構わんやってみせよ」

(さっちゃんはやると言ったら本当にやる。例外は無い)





「おい、女神、来い」

「は…」

今の言葉にこの場の全員が固まった。



しばらくして、神々しい光と共に女神が現れた。



「おい女神、私が来いつーたら早く来い」

「ご、ごめんなさい」

女神を叱り飛ばすさっちゃんに皆んなが唖然とする。


「そいつの家に神罰を落とせ、家の人間は結界で隔離して、逃すな」

「えっと」

何かよくわからず、戸惑う女神。


「早くしろ」

「あ、はい」


女神が手を振りかざす。


突如辺りが暗くなって、空から光が稲妻の様に、少し向こう側に轟音と共に落ちた。


ずがががーん


「………………」


この場が静寂に包まれる。


さっちゃんがイライラしながら。

「これでお前の家はぶっ壊れたわけだけど、次はお前の頭に落すか?」

ワルイージがブルブル震えてながら首を左右に振った。

「テメーが偉いと思うなクズやろう」

ワルイージは泡を吹いて気を失った。


皆んながこの光景を信じられないように見ている中で、メイドがすっと前に出て。

「お初にお目に掛かります女神様、私はさっちゃん様のメイドです」

「あら、はじめまして、あなたも私を呼びたい時はすぐ呼んでね、さっちゃんが怒ると怖いから」

「は、はい、ありがとうございます」

結構肝の座っているメイドである。

(本当は「今回は私の出番が少ないからね」という打算である)


さっちゃんが。

「ほらみんな何してんの、こいつ片付けて後やるわよ」

「あ、あの、さっちゃん様?」

メイドが言うと。

「ん、何?」

「あの、女神様は?」

「あ、忘れてた、もう帰って」

「はい、失礼します、さっちゃん」

失礼なのはさっちゃんです。


女神がすーっと空へ帰っていった。


「すごいですねーさっちゃん様は、どっちが女神様が分かりませんよ」

「そうか?」

「そうですよー」

女神に命令したり、叱り飛ばしたりするさっちゃんがおかしいのです。


その後、ワルイージは騎士にどこかへ運ばれていった。


そしてその後の治療を始めたのである。







その後…


女神降臨の話は瞬く間に広まり、聖女さっちゃんの凄さと、女神の加護を授かったメイドの話も人々を驚かせた。


ワルイージ伯爵家は元々の評判も悪い上、ワルイージ伯爵は神罰を受けた愚か者として家ごと没落。一家離散の上その後の消息は不明。


聖女さっちゃんとメイドは何事もなかったように、過ごしたとさ。



おわり

本作品の過去の物語。短編『口の悪いさっちゃんと女神…私も少し』もご覧頂けたら幸いです。

さっちゃんと女神、メイドとの出会い。さっちゃんが聖女となった経緯が明らかになります。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 思った事をズバズバと口にする聖女様の言動は一見すると怖く感じられますが、崖崩れで負傷者が沢山発生した非常事態や権力を笠に着る横暴な人間が横車を押し始めた時には、そうした毅然とした姿勢が実に…
[良い点] さっちゃん様が強い。 口が悪くて態度も悪いけど、やるべきことはやる、みたいなキャラクター、とても魅力的です。 メイドちゃんが胸中でつぶやいているさっちゃん評が、幾度か繰り返されたりして…
[良い点] 聖女さっちゃん、口と態度は悪いですが、 やっていることは正しいと思いますし頼もしいですね。 やはり聖女に逆らうのは厳禁ですね…。
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