表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

神人共存

月の幻想は貴方と共に

作者: 秋暁秋季

親子揃ってもー! 写真大好きかっ!

「今日は、月食です」

「あぁ」

いきなりホテルの部屋のドアを開け放ち、入り込んで来るのは嫁だった。鮮やかな黒の髪を垂らし、ズカズカと大股で歩み寄ってくる。そこに問答は必要としていない。

俺は黙って此奴を一瞥すると、また雑誌に目を戻した。大人向けクロスワードパズル。解けた者には五万円と書かれている。まだ解き終わっていない。

「月食です」

「わぁったよ」

「月が赤いのです」

雑誌から渋々顔を上げると、嫁の顔がすぐ側にあった。基本的に此奴の表情は変わらない。表情筋一つ変わらない為、感情を読み取るにはある程度の慣れが必要となる。そして今、此奴は大真面目に俺に願い事をしている。

「一人で見ろ」

「嫌です。貴方と一緒で無くては見ても意味がありません」

そう言うと、両手で俺の頬をそっと包み込んだ。意固地になって顔を逸らそうとすると、負けじと指に力を入れる。その不毛なやり取りは数分に及び行われた。

「移動が嫌なのでしたら、私がお運び致します」

そう言うと、頬に当てていた手が腕に移動する。子供が手を引っ張るように、無理矢理椅子から立ち上がらせようとする。真一文に口を引き結んだまま、立ち上がろうとした。それを見た途端、一瞬両目が輝いた。素早く俺の背中と膝に手を回すと、抱えるようにして歩き出した。所謂、お姫様抱っこの状態である。

「俺と見て何になる」

「感動を共感したいです」

..............全くこの嫁は..............。ホテルのベランダに無理矢理連れ込むと、自分の隣に立たせた。此奴自身もぴったり寄り添うようにして、上を見上げる。相も変わらず石のような顔をしているが、両目は爛々と輝いている。感動しているようだ。

「楽しいか」

「ええ。外に出て月を見ました。大きくて、赤くて、幻想的でした。貴方と見たらきっと素敵な思い出になると思いました」

「そうかよ」

此奴の言った通り、月は大きく、赤く染まっていた。見方によっては不気味に見えるそれは、此奴にとって幻想的な一部なのだ。

「凛と慧にも写真を送りましょう」

そう言って、携帯に今宵の思い出を閉じ込めた。横顔を見ると、僅かに笑っているように思えた。


本日月食(?)でしたね!

私も感動しました。月が大きくて、赤くて、何か起きそうで.......。(※なんも起きませんでした)

そうしたら、慧と凛のご両親が浮かんだので、書きたくなってしまいました.......(;・∀・)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ